フューザー3-8

 
決勝戦!! 優勝者は誰だ?


 フリージルドは容器に鼻歌を唄い、軽い足取りのステップを踏みながら赤コーナーの控え室へと向かっていった。
「ルルルルル~♪ ついに念願のジュナ・メイヨーと戦えるのねっ!! フフフ、祈ったかいがあったわ」
 成人近いのに十代初めの女子のようにフリージルドは自分にとってのきたいの相手、ジュナとの戦いに胸をふくらまさせていた。
「そーいや、ジュナと融合するの、俺の昔馴染みのラドル……いや今はラグドラグだったな。
 あいつとはガルサイダ軍との戦争中の訓練時代はよくアームレスリングや組み手やらやってたなぁ……」
 二〇〇年前、ガルサイダ軍との戦いで負傷したアルイヴィーナの兵は、某博士の禁断の生体実験により兵士と一体化して敵と戦う生物兵器、融合獣として体を創りかえられ、斬首や契合石消失を受けない限り死なない不老不死の生命体となった。融合獣となったアルイヴィーナ人は惑星アルイヴィーナ内で散り散りになって各々の生き様を歩んでいた。
そしてエグラは幼少期のフリージルドと出会い、融合闘士闘技会(フューザーソルジャーコロッセオ)に参加し、優勝して名高き融資者と融合獣になった。
「フリージルドさ~ん!!」
「フリージルド様ぁ~!!」
 後ろから多くのファンがフリージルドの名を呼んでいたが、大柄な体の大会スタッフたちによって喰い止められていた。

「はい、どこも異上ありませんよ。これなら決勝戦に出られますよ」
「ありがとうございます」
 カーテンで仕切られた医療室でジュナは壮年のドクターに礼を言った。先程の決勝戦で骨がヒビいっていたり、内臓に異常かないかドクターに調べてもらっていた。ジュナは上着を着るとカーテンの仕切りを開いて待っているラグドラグと合流した。
「どこも平気だって」
「なら、決勝戦は思う存分戦えるな」
 ジュナはドクターに頭を下げ、ラグドラグと共に青コーナー側のエントランスホールへと向かっていった。


 会場では準決勝戦の時とは違い、フリージルド目当ての観客が押し寄せていた。先程のバンガルドの岩石砲によって壊された席はスタッフが入れないように封鎖されている。フリージルドファンの親衛隊は鉢巻きと法被を着用していた。
「ジュナさん、決勝戦に行けて良かったですねぇ。わたしたちの分まで頑張ってくれれば」
 エルニオやトリスティスと共に客席に座る羅夢はひざ上にジュビルムを乗せて真ん中あたりの段席に座っていた。
「ああ、一時はどうなるかと思ったよ……」
 羅夢の右隣のエルニオが缶ドリンクを一口飲んで返答する。
「しかし、相手は三回連続チャンピオンでジュナと同じ位の頃に史上最年少優勝している、しなぁ~。いや、後はジュナの実力次第……」
 羅夢の左隣りのトリスティスが神妙な顔をして決勝の行方を気にする。エリヌセウス組の前の席ではティサとヒアルト、彼らの融合獣が座っていた。
 そして……。
「さーあ、皆さま、お待たせしました!! 本大会最終試合で、注目度ハイレベルの見せどころ、決勝戦の始まりです!!」
 マーフィーが飛行円盤に乗って、会場を駆けまわって叫ぶ。そして赤コーナー側のステージに手を伸ばし、シャウトする。
「赤コーナー……、本大会三回連続チャンピオン、フリージルド・クロム選手と融合獣エグラ~!!」
 赤コーナー側のエントランスホールからフリージルドとエグラが出てきて、ファンを熱狂させる。
「ワアアアアッ」
 男も女も子供も親衛隊も非親衛隊もフリージルドを見て拍手と喝さいを上げる。
「フリージルド!! フリージルド!!」
 フリージルドは満面の笑みをファンや観客、親衛隊たちに向ける。
「うおおお~!!」
「こっち向いてー!!」
「その笑顔(スマイル)、おれにくれえええ!!」
 男たちはフリージルドを見る度、我よ我よと叫ぶ。
「チャンピオンは人気者ですね。美人で三回優勝でそれも金持ち……」
 羅夢がフリージルドのファンを見て目を細める。
「そんだけ強い、ってことだよ。一ヶ月間特訓した僕ら
だってチャンプにかなわなかったんだから……」
 隣のエルニオが言った。
「もし、もしだけど、チャンピオン更新が書き換えられたら……ジュナが新しいチャンピオンに……?」
 トリスティスが羅夢とエルニオにジュナの勝利の想像を語る。
「そんな決まった訳じゃ……」
 ソーダーズが言ってきた時、ジュナの紹介がきた。
「青コーナー、ジュナ・メイヨー選手と融合獣ラグドラグ!!」
 青コーナー側のエントランスホールからジュナがラグドラグと共に想像する。ジュナは自分が準決勝に進んだのが嘘みたいだと、堅い笑みを観客たちに向けていた。
「準決勝でアクシデントがあったものの、初出場で見事、決勝戦まで進んだジュナ選手。勝利の女神はどちらに微笑む?」
 マーフィーの実況で会場は試合見たさで期待をしているが、ジュナは心の中で滝汗をかいていた。
 フリージルド組もジュナ組もステージに上がり、フリージルドとジュナ、エグラとラグドラグは見つめ合う。
「私……あなたと戦えるの楽しみにしていたわ。私より能力は下でも可能性の伸びがあるのには関心していてね」
 フリージルドはジュナを見て、余裕の笑みを向けてくる。
(嫌味……じゃないよね。ストレートで言っているのかもしれないけど)
 ジュナはそう思いつつも、フリージルドのおかげか緊張や不安がほぐれて、顔と右手を差し出して、天然の笑みをフリージルドに向けた。
「わたしも……あなたと戦えるなんて嬉しいです。お互い頑張りましょう」
 そう言うと、フリージルドも頷いてジュナと握手をした。
「ジュナ選手とチャンピオン・フリージルドの正々堂々の誓いの握手を交わしました! そろそろ試合を始めます!」
 ジュナとフリージルドの握手のさ中、ラグドラグとエグラも握手を交わしていた。
「俺たちも、」
「いっちょやるか!」
 そしてゴングが鳴った。
「それでは本大会最終試合、決勝戦、熱闘開始(ファイティング・オン)!!」
 マーフィーの試合開始の叫びと共に会場が熱気に包まれ、盛り上がった。
「融合発動(フュージング)!!」
 ジュナとラグドラグ、フリージルドとエグラは融合し、前二者は白い閃光、後二者は明橙の炎に包まれ、融合獣と一体化した姿を現した。
 ジュナは白竜の頭部と翼と尾と鋭い爪がついた手足に覆われた姿を見せ、胸の契合石が明紫に輝く。
 フリージルドは鷲(アエーゲル)の頭部と翼と尾羽と四肢が蹴爪と化した姿を見せ、右胸の氷青(アイスブルー)の契合石がきらりと輝く。
(美しい……。白き竜の融合獣と融合した姿は……。画面越しではなく、この肉眼で見られるなんて……)
 フリージルドはジュナの融合闘士姿を見て、そのビジュアルに魅了される。
(フリージルドさんは炎の技を使って、スピード戦が得意……。そういえば武器は何を使うんだろう?)
 ジュナはまだ自分が習得していないフリージルドの武器情報に戸惑う。
(ジュナ。そういうのは相手が出してからにしろ。今は、どう対処するかが大事だ)
 ラグドラグが話しかけてきたので、ジュナは考えを切り替えて試合に専念する。
(そうだったね。それでは……)
「いざ、ゆかん!!」
 ジュナは軽く跳躍しながらステップを踏み、フリージルドに向かっていく。ジュナは星の力を右手に帯び、右手が白く輝き、ジュナは淡く輝く手刀をフリージルドに向けた。フリージルドは首筋にジュナの手刀を受けるも、左脚に明橙の炎をまとわせ、ジュナにひざ蹴りを浴びせる。
「二人とも、やりますねぇ」
 観客席の羅夢がジュナとフリージルドの戦いを見て感心する。
「いいや。これはまだほん一歩だ。本気はこれからさ」
 エルニオがジュナの様子を見て言う。ステージ上のジュナとフリージルドはお互いどっちも退かず、拳や蹴りを入れまくっている。
「なかなかやるわね!」
「決勝まで来られたから、負ける訳にはいかないんです!」
 ジュナははっきりとフリージルドに言うと、フリージルドは口角を上げて、わが身を炎で包む。その時ジュナの拳がフリージルドの炎に入って、ジュナはその熱さにもだえた。白い鋭角な全指と掌が赤く火ぶくれする。
「ジュナ……!」
「ラグドラグ、わたしもだけどあなたが……!」
 ジュナは火ぶくれした右手の痛みをこらえてラグドラグに訊ねる。しかし、火ぶくれした手は融合獣の急速再生能力で赤みを帯びていた右手は地面の雨水の染みが日光で干上がって消えるようにジュ~という音を立てながら赤みと火ぶくれが引いていった。自分の右手の回復が治るのを待っていたジュナはフリージルドの存在を思い出し、辺りを見回した。フリージルドは太陽と空を背にして跳躍し、両翼に炎をまとわせていた。
「炎熱飛翼(バーストウィンギー)!!」
 フリージルドは炎の翼を羽ばたかせ、二つの炎をジュナに向けてきた。
(しまった!)
 ジュナは自信に向かってくる炎を見て油断した、と勘づいた。容赦なくフリージルドの明橙の炎がジュナを呑み込んだ。
「ジュッ、ジュナさん!」
「ジュナーっ!!」
 観客席のエリヌセウス組はこの様子を見て思わず叫び、他の観客も衝撃を受け目を見開いた。
「チャンピオン・フリージルドの技、炎熱飛翼(バーストウィンギー)がジュナ選手を呑み込んだ~っ!! ジュナ選手はどうなったぁ?!」
 マーフィーの実況と同時にフリージルドの炎が勢いを上げて消え、フリージルドはステージに着地する。会場は熱風と土ぼこりでまみれ、一陣の強い涼風がそれらを吹き払った時――ジュナはステージの中にいたのだ。
「ジュナ選手、無事でした! しかし、よくあの大技を受けていたにもかかわらず、ステージにおります!!」
 マーフィーが実況し、観客たちは思わず「おおーっ」と呻る。
「ど、どうして無事だったの?!」
 フリージルドは自分の技を浴びても平気だったジュナを見て目を丸くする。ふと、足元に小さな氷の塊を見つけて、氷は熱さで溶けて水となった。
「一体……何が……」
 フリージルドがジュナに訊ねた時、ジュナはためらいなく説明した。
「フリージルドさんの攻撃が飛んできた時、わたしは必死に防御技を想像して、ラグドラグに新しい技を出してもらったんです。
 それがこの、彗星防壁(コメットバリアー)なんです」
 そう言ってジュナは、フリージルドの前に水棲型のバリアを張らせ、納得させた。
「ふぅーん、なるほど……。これでますます……」
 フリージルドは間をおいてからジュナに言った。熱気で彗星防壁(コメットバリアー)が弾け飛ぶ。
「私の戦闘意欲が湧きあがってきたわぁ!!」
 フリージルドが叫ぶと彼女の体から明橙の炎が炎上し、正に闘志に火を付けた状態になった。
「ウワアアアッ!!」
 フリージルドの本気全開を見て、フリージルドのファンや親衛隊、その他多くの観客が盛り上がった。フリージルドは翼から無数の火のつぶてをジュナに向けてきた。
「火粒連撃弾(バーニングバレット)!!」
 碧空を背景(バック)にし、小さな炎のつぶての雨がジュナに降ってくる。
「あれは……僕が受けた技だ! ジュナ、たのむ! 受けないでくれ!!」
 エルニオがフリージルドの火粒連撃弾(バーニングバレット)を見て叫ぶ。しかしジュナは両掌から竜晶星落速(クリスタル・スターダスト)を発動させ、星型結晶弾をフリージルドの火の粉にぶつけて回避させた。火の粉と結晶弾は衝突すると空中で小さく弾け散った。
「なかなかやるじゃない。なら、これはどう?」
 フリージルドは右胸の契合石に手を当て、右胸から武器らしき柄が出てきて、それを引き出した。細長い剣、レイピア剣である。柄は明橙で手を覆う形になっており、刃は磨きたての純白で日光できらりと光る。
「チャンピオン、フリージルド、武器を出してきました!! 過去大会の記録によりますと、フリージルド選手が剣を全試合で使ったのは九年前の初出場の時だけ! チャンピオンになってからは決勝戦以外使ってくることはありませんでした!!」
 マーフィーがフリージルドの武器使用について観客に解説。
「決勝戦しか武器を使うのに理由があるんかな?」
 トリスティスが解説を聞いて考える。その間にジュナも胸元の契合石から白金の刀身に紺の柄の長剣を出し、フリージルドとの真剣勝負に姿勢を整える。
 ジュナもフリージルドも剣を持って立ち向かい、剣がぶつかり合って高い金属音を立てる。フリージルドは片手でも剣を操り、突き攻撃をジュナに仕掛けてくる。ジュナの横でヒュッ、と空の切る音が耳に入る。
 だがジュナも負けていられない。剣でフリージルドの攻撃を凌いだり、フリージルドがレイピアをつきたてる隙を狙って峰打ちをしてきたりと、自分なりの反撃を企てる。
「もうそろそろ終わりにするわ!!」
 そう言ってフリージルドはレイピア剣を縦にし、明橙の炎をまとわせる。
「ジュナ、大技らしきものが来るぞ! 気をつけろ!」
「わかっている」
 ラグドラグに言われてジュナも剣に星の力を集めて、刃を超新星の如く輝かせた。フリージルドはレイピア剣にまとわせた炎をジュナに向けて扇状に振るった。
「猛火炎原燃(スーパーフレアフィールド)!!」
 フリージルドの炎の海攻撃がジュナに迫ってくる。
「こっ、こんな炎を受けたら一たまりもありませんよぉ~」
「うぉあ~、うぉあ~」
 羅夢とジュビルムが試合場の様子を見てパニクり、エルニオやトリスティスも他の観客たちもフリージルドの猛火炎原燃を見て驚いて目を見開く。ステージが明橙に染まっていた。するとジュナが超新星のように輝く刃の剣を刃先で八方に斬り、猛火炎原燃を二つに斬り裂いて炎上させた。
「超新星激光(ステラブレイザー)!!」
 炎は消え去り、後には熱気と細かくなった火の粉が残り、ステージには煤で黒く汚れたがフリージルドとジュナが見事立っていたのだ。
「これは誰もがびっくり!! 大技同士がぶつかり合っても二人とも、ステージの上! もう最後まで見逃せなくなったぁ!!」
 マーフィーが実況し、地震や観客全員に両者の戦いを見守ってほしいというように叫ぶ。
 その時、フリージルドの耳にはめた通信機から声が飛んできた。
『なっ、何だね、君はうわああああ……』
「もっ、モンクさん!? 一体、何があったの?」
 フリージルドがVIP席のモンク氏に異変があったと知ると、更に大会スタッフからの通信も飛んできた。
『ちゃっ、チャンプ、今バンガルドさんが機械の化け物を率いてきて……』
「な、何ですって!?」
 ジュナも通信機で会話するフリージルドを見て手を止めた。
 一体何があったのか!?


「ウワーッ!!」
「キャーッ!!」
 闘技場内部の建物の中、スタッフや医師や外の客席を外して中で涼んでいた観客たちは脚が何対もある蟲型機械の集団に襲われ、逃げまどっていたり、捕らわれたりしていた。蟲だけでなく羽虫や甲殻類型の機械集団が何十体もいたのだ。
「モンクさん!!」
 マーフィーは飛行円盤に乗ってVIP席のモンク氏の元へ向かった。
「ああっ!!」
 マーフィーは体の長い蟲型機械に体を巻きつけられて身動きがとれないモンク氏を目にしたのだ。
「か、会場の皆さん、落ち着いてください。これはきっと、テレビ局か何かの……」
 マーフィーはそうなんじゃないかと判断して観客たちに伝えるも、選手たちの試合を映像として収めてきたテレビクルーたちは首を振る。
 その時、客席中に悲鳴がいくつも湧きあがってきた。
「うわーっ」
「な、何だぁー!?」
 客席の出入り口から無数の機械が出てきて、客席の一般人や見物人となっている勇五十を襲ってきた。羽虫、多足虫、甲殻類……。どれも白い装甲である。
「って、これは……インスタノイドじゃないか!!」
 エルニオが闘技場を襲った機械を見て叫ぶ。
「インスタノイドってことは……まさか、ダンケルカイザラントですか!?」
 羅夢がエルニオに訊き返す。
「でも、赤黒バイザーの三幹部と融合獣は姿、見てないよ!?」
 トリスティスはインスタノイドがいるなら幹部もいるんじゃないか、という風に言う。
「ダンケル……? お前たち何を言っているんだよ?」
 ヒアルトがエリヌセウス組に訊ねる。他の融合闘士はダンケルカイザラントのことを知らない。
「ダンケルカイザラントってのは、この機械を使って融合獣を捕まえたり、悪人を自分たちの仲間にしようというおっかない連中なんです!」
 エルニオはヒアルトたちに言った。
「あたしたちの国、エリヌセウスは何度もこいつらに襲われてんのよ!」
と、トリスティス。
「とにかく今は、こいつらを追い払うのが先です!」
 羅夢が敵を見て慌てる捕食生物のようにうろたえる。
「こうなれば融合してこいつらを少しずつ潰すしかないわ。行くわよ、エルニオ!!」
「おう!!」
 エルニオはツァリーナと融合し、翠の旋風に包まれ、翠の羽毛と金の翼と長い尾羽、四肢が蹴爪になっている融合闘士となり、喉元の契合石から鳥の頭が銃口になっている二丁拳銃を出し、翠の光弾をインスタノイドに向けて撃ち放つ。エルニオの銃光弾を受けたインスタノイドはバラバラになったり、ボンッと火花を散らして停止する。
「うわーん、ママーっ!」
 多足虫型のインスタノイドに捕まった浅黒肌の暖方人種(バルカロイド)の幼い男の子が泣きわめく。その時、インスタノイドの頭部と体が切断され、インスタノイドにくわえられていた男の子が頭から離れ、宙に放り出された。しかし鋭角な尾と背びれ、両腕と鼻先に鋭い剣がついた水色の融合闘士トリスティスが男の子をキャッチして着地。頭部を切断されたインスタノイドはコードも骨組も見事に切れた胴体部分が爆発してバラバラになる。
「ありがとうございます。ありがとうございます……」
 息子が助かった母親はトリスティスに礼を言う。
「早く逃げてください」
 トリスティスが助けた母子にそう言って、他のインスタノイドと戦う。
 羅夢も桃色の装甲に覆われ長い耳と尾を持つ融合闘士となり、インスタノイドを蔦縛封(アイビーシール)でぐるぐる巻きにして次々に緑の糸玉に変えていく。しかし糸玉に変えても次々にインスタノイドは出てくる。
「も~っ、これじゃあキリがありません!」
 羅夢がわめいていると、三方から羽虫型インスタノイドが羅夢に向かってきた。
 もうダメだ、と思った時、金色の甘い匂いのする粘液が飛んできて、インスタノイドを液の中に閉じ込め、インスタノイドはべたべたの中でもがき液は固まって相手の動きを封じた。
「えっ……?」
 羅夢が振り向くと、ヴァズビープと融合したティサが両掌の蜜吐口から蜜を出してきてインスタノイドを止めたのだ。
「大丈夫だった!?」
 大きな薄茶の複眼と腹部に契合石を持つベビーブルーの装甲と透明茶の翅を持つ融合闘士のティサが羅夢に言う。
「あの……大丈夫ですけど、どうして……」
「困った時はお互いさまよ」
 ティサがにっこり笑う。
「あ、ありがとうございます!!」
 羅夢はティサに礼を言った。
 トリスティスも両腕と一体化した剣でインスタノイドを叩き斬るが、次第に力が減っていく。後ろから甲殻類型インスタノイドが跳びかかってきた時、ギラザーズと融合して堅い金茶の装甲と両手にハサミ型籠手に萌黄色の契合石があるヒアルトがひじ打ちをしてインスタノイドを壊した、その音でトリスティスは振り返り、ヒアルトに助けられたと察した。
「見てくれた?」
「いや、見逃した」
「なら、今度は見てろよ。そしたら俺に惚れるぜ!!」
 ヒアルトはカッコつけた台詞を吐きながらインスタノイドと戦う。
 エリヌセウス組と彼らと戦った選手たちがインスタノイドと戦っている様子を見て、融合獣連れの観客たちは逃げるのをやめて、多勢の者たちに言った。
「みんな……俺たちは予選落ちしたけど、融合闘士だ!! 彼らだけに任せてはいけない。俺たちも戦うぞ!!」
 ある融合適応者の男が叫んで、他の融合適応者たちも「おおーっ」と賛成して、融合獣と融合してインスタノイドと戦った。

 ジュナとフリージルドはVIP席に駆けつけて、インスタノイドに捕まったモンク氏を助けた。インスタノイドはジュナの剣でバラバラに斬られた。
 VIP席の窓は分厚くてフリージルドは一人で壊そうとしたが、ジュナが手助けしてくれて外から入ってモンク氏を助けた。VIP席内には粉々に砕け散った窓の破片が散らばっていた。
「モンクさん、しっかり!」
 フリージルドがモンクを起こして呼びかける。
「ラグドラグ、これってダンケルカイザラントのだよね……」
 ジュナがラグドラグに問いだす。
「おう、この機械兵たちは……。しかし、フューザーソルジャーコロッセオとどういうつながりが……」
 ジュナとラグドラグの会話を聞いて、フリージルドが訊ねる。
「何その、ダンケルカイザラント……って」
「だ、ダンケルカイザラントってのは、融合獣や犯罪者、身寄りのない子供を集めている国家なんです。他にも幹部とか遺伝子操作で造られた怪獣とかいて……」
「聞いたことないね。あなたの住んでいる国と戦争でもしているの?」
 フリージルドはジュナに訊ねる。
「戦争とかしていないけど、被害が出ていて……」
 ジュナがまごついていると、VIP席の出入り口のドアが蹴破られて、中にガチリーザーと融合したバンガルドが入ってきた。
「あ、あんたは……!」
「どうして!?」
 フリージルドとジュナがほぼ同時にバンガルドに訊く。
「あなたダンケルカイザラントの者じゃ……」
 ジュナが驚き目を見開いてバンガルドに言う。しかし、バンガルドは淡々と二人の融合闘士に言った。
「俺はこのトロフィーをいただきに来ただけだ。トロフィーの中には融合闘士強化の火電が入っているからな」
 バンガルドはつり棚の優勝トロフィーを見て手を伸ばす。トロフィーには紅白のリボンと融合闘士格闘大会の月と太陽と星の紋章が入っている。二等は銀色、三等は赤銅と順に小さくなっていく。トロフィーは四角すいと翼を組み合わせた形である。
「何ですって? 融合闘士強化の秘伝!? その中に入っているトロフィーを狙ってこの機械怪物を送りこんだっていうの!?」
 フリージルドはバンガルドに訊く。
「何でダンケルカイザラントに入って……いや、いつからいて……」
 ジュナがバンガルドに訊くと、バンガルドは突然笑い出す。
「いつからダンケルカイザラント? 笑わせるな。俺は奴らとは取引しただけだ。
 数十年前、一体の融合獣が強大な力を見つけて、暴れ巨獣を倒したという記録を俺は二年前に書庫で見つけて、調べに調べて融合闘士格闘大会にあると辿りついた。
 もしかしたら敗退してまた三年待たなくてじゃいけないと考え、ダンケルカイザラントの連中とたまたま出会って、『民を差し出せば、お前に保険を出してやる』と持ちかけてきた。
 俺は一も二もなく、民をダンケルカイザラントに売って、インスタノイドの大群を手に入れたのさ」
 バンガルドはダンケルカイザラントとの取引経由をフリージルドとジュナに語る。
「民を売った……!? まさかあなた一国の王族で、たった一人自分の欲のために国民を……!?」
 フリージルドはバンガルドがどんな身分の者か気づいた。
「思い出したぜ、ジル。一ヵ月半前、南の方にあるセラミー小帝国という小国の、辺境地民以外の者が全て一晩でいなくなった、という事件が起きていた。辺境地に派遣されていた第三王子だけは助かっており、その後行方不明――。つまりお前は!」
 エグラがバンガルドに向かって叫ぶ。
「その通りだ。俺がセラミー小帝国の第三王子だよ」
 バンガルドが口元を釣り上げて笑う。バンガルドの話を聞いて、ジュナはダンケルカイザラントに捕まったバンガルドの親兄弟親族国民の気持ちを考えて震えていた。
「そんな自分勝手なことをやって、ダンケルカイザラントと取引をしてまで、何も悪くない人たちを苦しめるなんて……」
 フリージルドも怒りを感じて、二人は同時に叫んだ。
「絶対に許さない!!」