おしゃれをしたホットケーキ

 

 ある町に小さなケーキやさんがありました。
 ケーキやの女の人は、しごとのあいまに、ホットケーキをやいていました。このホットケーキは自分のおやつです。
 ケーキやさんはれいぞうこを見て、ケーキを作るざいりょうがないことに気がつき、買出しにでかけました。
 ケーキやさんが出かけている間に、ホットケーキは、ちゅうぼうにあるケーキを見て、ためいきをつきました。
「あーあ、わたしもうりもののケーキさんたちにみたいにおしゃれがしたいなぁ。わたしは、バターとハチミツをかぶせただけだもの。」
 まっ白なドレスに赤いぼうしのショートケーキ、茶色いふくにおなかにバナナのアクセサリーのチョコレートケーキ、ふっくらした体にこなざとうがふりかかったシュークリーム、ピンクのはだをしたイチゴシフォン、緑色のきものにチョコのかんざし
をした抹茶ケーキ、そしていろいろなアクセサリーのバースデーケーキ……。
 ホットケーキはきかざったケーキたちを見つめてうらやましく思っていました。
 そのとき、ショートケーキたちがホットケーキのところにやって来ました。
「あら、あなたは売りもの?」
 ショートケーキがたずねました。
「ちがうわ。わたしはご主人さまのおやつのホットケーキよ。」
 それからホットケーキは、みんなを見ました。
「わたしはバターとハチミツしかかけてもらえないの。おしゃれなみんながうらやましいわ。」
 みんなは、ホットケーキを見て思いました。ホットケーキは丸くて平べったくってバターとハチミツしかかかっていないのを。
「あっ、そうだわ。」
 チョコレートケーキが言いました。
「ホットケーキさんをきかざってあげましょうよ。そうすれば、少しはきれいになるわよ。」
「さんせい。」
「そうしよう。」
 他のケーキたちもさんせいしました。
 ケーキたちはのこった生クリームの入ったボールやチョコソースやアンゼリカ、レーズンなどのかざり、まな板からイチゴや
モモなどのくだもの、それからチョコスティックなどのおかしをあつめてきました。
 まず、ショートケーキがホットケーキのすき間に生クリームをたっぷりつけます。
 次にチョコレートケーキがその上にチョコソースをかけて、フルーツタルトがバナナとイチゴをのせて上と下をはさみました。
 またショートケーキがホットケーキの体に生クリームをぬりました。
 パウンドケーキがホットケーキの体に、アンゼリカ、ドレンチェリー、レーズン、ミモザをかざりつけました。
 ショートケーキがホットケーキのあたまの上にしぼり出し器で生クリームをつけて、フルーツタルトがしぼった生クリームの上
にイチゴをのせて、シフォンケーキがチョコスティックでさして、抹茶ケーキが茶こしで金ぱくをホットケーキにかけて、さい
ごに大きな体のバースデイケーキがピンクの板チョコのかんむりをホットケーキのあたまの上にかぶせました。
 みんなはかわいくドレスアップをしたホットケーキをまっすぐに立てたぎんのおぼんの前につれていきました。
 かがみにうつった自分を見て、ホットケーキは目を丸くしました。
 まっ白なドレスをきて、緑や赤のアクセサリーをつけていて、イチゴのぼうしにチョコスティックかんざし、金ぱくがあたまに
かかっていて、ピンクのかんむりをかぶっていたからです。
「これがわたし?」
 ホットケーキはすがたがかわった自分を見つめました。こんなにきれいになるとは思ってもいなかったのです。
「みんな、ありがとう。」
 ホットケーキはみんなにおれいを言いました。
「いいのよ、おれいなんて。」
 ショートケーキが言いました。
「気に入ってくれてうれしいわ。」
と、チョコレートケーキ。
「今までよりかわいいわ。」
と、フルーツタルト。
「いいことしたあとはきもちがいいわ。」
 パウンドケーキが言いました。
「でも、こんなにざいりょうをつかって、大丈夫かしら?」
 シュークリームが不安げに言いました。
「ご主人さまが新しいざいりょうを買出しに行ったから平気でしょ。」
 シフォンケーキがむねをはって言いました。
 そのとき、ケーキやさんがかえってきました。
「みんな、もといたばしょにもどって! 
ご主人さまがかえってきたよ!」
 みんなはちゅうぼうの台の上にもどりました。ホットケーキもお皿の上にもどりました。
 ケーキやさんはちゅうぼうのちょうり台の上にあるお皿の上のホットケーキに気づきました。ボウルや茶こしなどの道具がいつもとちがうばしょにあるのは気づきませんでしたが。
「へんねえ、たしかにホットケーキをやいたはずなのに、べつのケーキにかわっているわ。どうしてかしら。」
 ケーキがさっきのよりと変わって、ふしぎがりました。
「でもいいわ。ちょうどおやつにしようとしていたもの。」
 ケーキやさんはおしゃれをしたホットケーキを食べました。
 食べてみると、自分が今まで作ったどのケーキよりもおいしいのです。
「そうだわ、このケーキを作ってうってみよう。」
 次の日、ケーキやさんはおしゃれをしたホットケーキを「ドレスアップケーキ」と
名付けて、朝早くおきて作り出しました。
三十こやいて作り、お店に出すと、お客さんたちはこのケーキをめずらしがって買いました。
 買って食べたお客さんたちは、みんなおいしいと言ってくれるのです。
 おしゃれをしたホットケーキで、ケーキやさんは町いちばんのケーキやさんになりました。