一次創作小説メイン、SF大好きな人には必見!

フューザー4-8

 

 地下鉱路での激闘

 

「わたしたちの先祖が元鉱夫だっていうのはおばあちゃんと再会するまで忘れていたけど……。この地下鉱路が子爵になったきっかけだったんてねぇ……」
 カツーンカツーンと薄くらい鉱路への階段を降りていく中、ジュナとブルーヴの靴音が鳴り響く。空気も淀んでおり、ブルーヴの手の電熱ランタンだけで光をともし、また薄橙の明るみの中で空気中のほこりが舞うのがわかった。
 ジュナとラグドラグと共にエルネスティーネ家の地震を起している原因を探しに行ってくると告げた時、祖父母も伯父も伯母もアロジーノやハプサも流石に反対した。しかし、ジュナの母セイジャが「この子たちに任せてやって下さい」と止めたのだった。セイジャも本当はジュナに行ってもらうのは賛同できなかったが、融合適応者がラグドラグと融合すれば常人より強くなるジュナにしかできないと思っていかせたのだ。ブルーヴも地下鉱路に何回か行ったことがあるので、案内役に出たのだった。
 地下鉱路に着くと、鉱石を採取しやくするために木板と漆喰の壁があり、それが迷路を思わせるような感じだった。
「なぁ、本当に大丈夫なのか?」
 ラグドラグがブルーヴに尋ねると、ブルーヴは振り向いてラグドラグとジュナに言った。
「うん、僕は悪者たちとは戦えないけど地下鉱路の案内にはなる。しっかりついてきてよ」

 

 地下航路の奥でエルネスティーネ邸の入り口から西に三〇〇ゼタン(六〇〇メートル)行った先に、子爵邸のメイドのヘレン=ダンは仲間の融合獣と共にそこにいたのだ。地下鉱路の三〇〇ゼタン先の場所は広く、軽く十余人なら入れる空洞で、地面は少し凹凸があり、岩壁は砂利や石ころが埋まってでこぼこで、天井には灯りとりの古びた鉄のランタンがいくつもぶら下がっていたが、ヘレンの持っていた道具の中にはどんなに暗い場所でも昼のように明るく照らせる照明具があったので、彼女の居場所は明るい空間になっていた。
「さぁ、もう一ふんばりすれば目的の物(ブツ)が見つかるわよ。ダウジング装置の反応だと、この洞くつの半径数数ジタンに埋まっている筈よ」
 ヘレンは懐から掌大で頂点に長いプロペラ状のアンテナがついたダウジング装置を取り出し、画面のレーダーに映る赤い点滅を目にして、空洞をうろついた。その時、プロペラがクルクル回って、ヘレンが探し求めている物があると、嬉々と感じて融合獣に言った。ヘレンの融合獣は八ジルク(八〇センチ)の全長に生成色の体に背には薄緑色の棘、目と両手首の契合石は薄緑色で口が突き出ているハリモグラ(エキドラドリス)の融合獣、ニドラボルグである。
「長いこと、潜入したくても掃除やら洗濯やら買い出しやらで中々チャンスが到来してこなかったのよねぇ。でも、今日でこの邸ともおさらば。さぁ、とっとと終わらせるわよ」
「そうだに。とっとと終わらせるに」
 ニドラボルグはけだるそうに幼い女子の声を出しながら返事する。
「何を言っているのよ、あんたは! 私がメイドをやっている時はグースカ眠っていたり、だらけていたじゃない!」
 ヘレンはキッ、とニドラボルグを睨みつけて説教する。自分はせっせと働いていたのに対し、ニドラボルグは寝そべっていたことに怒っていた。
「ん? 何か聞こえたぞ?」
 ブルーヴが電子ランタンで灯りを照らしてラグドラグとジュナを案内するために侵入者の入った地下鉱路を歩いていると、ジュナが耳を傾ける。
「ああ……。聞こえたぜ。二人分の女の声がな」
 ラグドラグも返事もする。
「一番奥の鉱脈跡だ。あそこには何もない筈なんだけどなぁ」
 ブルーヴが呟くと、ジュナとラグドラグが急かした。
「お願い! 早くそこに案内して!」

「あーあ、何でガルヴェリア様やダイロス様はこんなぐうたらな融合獣を私に授けたんだか……。まぁ、いい。さっさと終わらせて、こんな狭い場所とはおさらばよ……」
 ヘレンはニドラボルグと融合しようとした時、真っ白く照らしている空間にオレンジ色の光が差し込んできたのを目にしたのだった。
「見つけたぜ、ダンケルカイザラント!!」
 ラグドラグがヘレンとニドラボルグを見つけて叫び、鉱路内に声が響き渡った。
「げっ、お前たちは我がダンケルカイザラントには向かう融合闘士(フューザーソルジャー)たちか!?」
 ヘレンが現場に現れたジュナ、ラグドラグ、ブルーヴを見て仰天する。
「んぁ、あれが例の奴ら?」
 ニドラボルグがけだるそうな眼をジュナたちに向ける。
「あ、すいません。僕は融合闘士ではないんで……」
 ブルーヴが律儀そうにヘレンとニドラボルグに言うと、ジュナ、ラグドラグ、ヘレンがドライに突っ込む。
「いや、誰もあんたにな言ってない」
「じゃなくって……、まさかあなたがここの子爵の姪だとは思ってもいなかったわ。エリヌセウス皇国のジュナ=メイヨーとラグドラグ!」
 ヘレンはジュナとラグドラグを睨みつける。
「そうよ、私はダンケルカイザラントの謀報員ヘリネラ=ダビストン。ヘレン=ダンはここに潜入する時の偽名よ。そして私と融合するニドラボルグ」
「あい、どーもに」
 ニドラボルグが再びけだるそうに返事をする。ヘリネラと返事をし、ヘリネラとニドラボルグは声をそろえて叫ぶ。
「融合発動(フュージング)!!」
 両者は融合闘士になるフレーズを発すると、ヘリネラとニドラボルグは一瞬薄緑色の光が発せられたと思うと、光と同じ金属膜に包まれて、それが弾けて薄い金属片の舞う中から融合闘士としての姿を見せた。
 頭部から腰にかけてまで薄緑色の棘に覆われて両手首に契合石、ひじ下にも棘が数本生えそろい、生成色の獣のような暑い装甲に覆われた姿である。
「いくよ、ラグドラグ」
「おう、これ以上こいつらの好き勝手にさせてたまるかだもんな」
 ジュナとラグドラグは声をそろえて叫んだ。
「融合発動(フュージング)!!」
 ジュナとラグドラグは白い光に包まれたかと思うと、ジュナはラグドラグと融合した姿を見せる。白い竜頭竜翼竜尾竜爪を持ち、胸の中心に明紫の契合石をかざす姿に変化した。
「すごい……」
 ブルーヴはジュナの融合闘士姿を見てその珍しさと美しさに恍惚する。
「ブルーヴ、危ないから下がっていて」
 ジュナがブルーヴに言うと、ブルーヴはこくりとうなずいてジュナたちの邪魔にならぬように木板の仕切りの後ろに隠れて、ジュナとヘリネラの勝負を見学することになったのだった。

 

 エルネスティーネ邸の旧地下鉱路でジュナとヘリネラの戦いが始まった。ジュナは右手を胸に当てて、そこから長剣を出して抜いて身構える。
 ヘリネラも両肘から生える棘をジュナに向けて突撃してきた。ジュナも負けじと突撃して、剣でヘリネラの棘を受け止めた。ガキィィィンと金属音が鉱路内に高く響いて、両者の身体だけでなく見物人のブルーヴの体や地面や木板の仕切りにも震わせた。
 剣でヘリネラの棘を受け止めたジュナは鋭い爪のついた足でヘリネラの向こうずねを蹴ろうとしたが、ヘリネラが足の一方を力強く踏むとヘリネラのかかととつま先から数本の棘が出てきてジュナの脚を刺そうとしてきた。
 ジュナはその危機を察すると後方に避けて空の斬る音が鳴って、ジュナの右大腿部を浅いとはいえ傷つけたのだった。融合獣は斬首されたり契合石を失わない限りの再生能力があるため、斬りつけられた傷はあっという間にふさがった。
「背中と腕ばかり見ていたから、まさか足も出せるなんて思ってもいなかった……。あの棘で脚を貫かれていたらゾッとする……」
 ジュナがヘリネラの棘を見てもし突き刺されたらの想像をしてドン引きした。
「ああ、全くだよ。俺だけなら傷ついてともかく、ジュナの脚が刺されたらどうしようもないぜ」
 ラグドラグがジュナに語りかけていると、ヘリネラは両手首の契合石を光らせて交差させると彼女の身の丈ほどもある銀色の楔状の矛先が付いた生成色の槍を出してきたのだ。
「フン、体は棘だらけで武器なしだと思っていたら大間違いよ。とっとと片づけて、十二日分の休暇をいただくわ!!」
 そう言うとヘリネラは槍を持つとジュナに矛先を突きつけてくる。ヒュンッという音と共にヘリネラの棘と槍がジュナを襲う。
(鋼属性だから攻撃と防御だけがやたらと高くて、素早さとテクニックはそんなに高くないと思っていたら、攻撃もスピードの切れも同じだ……。珍しいバランス型なんだ。甘く見ていた……)
 ジュナはヘリネラの槍と棘に気をつけて避けたり剣で防いだりと必死だった。防御技を出したくても出せない状態であり、幹部並みの強さだと感じた。
(ああ、ジュナが結構手こずっているなんて。でも僕は融合闘士でもない普通の人間だ……。かえって僕が出たら足手まといに……)
 木板の仕切りの裏からジュナとヘリネラの戦いを見つめているブルーヴはどうしたらジュナが助かるものか、と考えていた。
「ああっ!!」
 ヘリネラの槍と左足の棘がジュナの左肩と右すねを傷つけ、ジュナの傷ついた部分から赤い鮮血が垂れて地に滴る。融合獣と一体化しているとはいえ、こんなに傷つけば回復がかかってしまう。
「あわわ……」
 ブルーヴは敵方の攻撃を受けて膝まつくジュナを見てうろたえた。
「ふふふ、私も上からの命令で必死なのよ。融合獣がつけられたけど、私一人が頑張っていたし。知ってた? ニドラボルグは確かに攻撃と防御はある。けれど、私の機敏さと技力を足せば、ちょうど能力が補われるんでね。2+2=4ってことよ」
「……!」
 ヘリネラの話を聞いてジュナは「そうか」と思った。本人と相手の優れている力を足せば2+2=4になると。
「それじゃあね、ダンケルカイザラントに反する融合闘士のお嬢ちゃん!」
 ヘリネラは槍を真っ直ぐに持ち、ジュナの胴体を貫こうとしたその時だった。
 ドゴォッ、とけたたましい音が鳴り、ヘリネラとジュナの間に岩石がいくつも落下してきた。
「ひゃあ」
 ヘリネラは間抜けな声を出し、後方に転がった。土煙が舞い、岩の落下してきた部分から月の青白い光が差し込みんできて、地下鉱路に入ってきた。
「い……一体何が……!?」
 ジュナもヘリネラもブルーヴも驚いて、岩壁の空いた部分に目をやった。そこはぽっかりあと小岩や砂が零れ落ち、そのほとんど丸に近い孔から一人の人物が現れたのだった。
「だっ……誰?」
 ジュナとブルーヴはその人物を見て違う反応をとって驚く。その人物とは、たてがみと翼は渋緑、体は象牙色で頭から生えた鋭い一本角は金色で、両翼に紺色の契合石、頭部は騎馬の上半分で、下半分は人間の口、胸や四肢に渋緑の装甲で覆われた融合闘士である。
「な、何者だ!?」
(えっ、誰……!?)
「あ、あなたは……」
 ヘリネラ、ブルーヴ、ジュナは三者三様の反応を示し、一角有翼の融合闘士は視線をヘリネラへ向ける。その睨みつけてくる視線にヘリネラは退くも、矛先を一角有翼の融合闘士に向ける。
「お、お前もダンケルカイザラントに逆らう者か!? それとも全くの無縁なのか!? 突然乱入してくるなんて……!」
 ヘリネラは融合闘士に憎まれ口を叩くも、融合闘士はヘリネラに背を向けてケガをしたジュナを見て、つかつかと歩み寄りジュナを抱きかかえたのだった。
「わっ、ちょっ、何を……?」
 ジュナは融合闘士に声をかけるが、融合闘士はブルーヴのいる場所にジュナを連れていっって下ろした。
「あのっ、あなたはどうしてわたしを……!?」
 ジュナが尋ねた時だった。脚と肩を傷つけられて動くのも必死なジュナの頭に融合闘士の手が軽く平手で2回叩かれた。
(え……!?)
 ジュナは頭の感覚で思い出した。この動作は確か幼い頃にも同じようなことがいくつもあったような。そしてこの動作をしてくれた人間はジュナの身内の一人だった。
 融合闘士はきびすを返すと、ヘリネラの元へ歩み寄った。
「ちょっとあんたね、いきなり現れて私を無視するとぁ、いい度胸ねぇ。もしかしてあんたが、あの小娘の替わりに戦おうってんの?」
 ヘリネラがイラッとしたように融合闘士に尋ねると、融合闘士は頷いた。
「いいわ。あんたを始末してから、あの小娘も片づけてやる」


 
 ヘリネラは槍を持ち直すと、一角有翼の融合闘士に矛先を向けてきた。一角有翼の融合闘士は翼を内側に折り曲げ、両手を掲げると手先が契合石に触れ、左の翼から盾、右の手には額の角と同じ型の騎槍(ランス)が出てきた。盾は渋緑の五角形に金色の放射状の光が浮かび上がっていた。
騎槍は金色の刀身に渋緑の柄である。
「フンッ」
 ヘリネラが槍を融合闘士に向けて突こうとしてきた。融合闘士は盾でヘリネラの槍の先を防ぎ、金属音が鉱路内に響き渡る。ヘリネラがジュナにやった時と同じように足を強く踏んで爪先から棘を出してきて相手の脚に突き立てようとしてきた。だが融合闘士の方が一歩早く、騎槍でヘリネラの足の甲を刺そうとしてきた。ヘリネラは怯んで足を引っこめて、背中の棘を融合闘士に向けてきたのだった。
「はわわっ、流石に背面が棘だらけじゃ無理だよっ!!」
 ブルーヴが様子を見て声をあげ、ジュナが自分のように目をそむけた。だが融合闘士はヘリネラの脛を蹴って、ヘリネラは大きく仰向けに倒れた。ズダン、という音と共にヘリネラの棘が地面に深く刺さってくい込んでしまった。
「やあ……」
 ヘリネラはじたばたと手足をもがき、融合闘士はフッと笑うと、騎槍を垂直状に持ち直した。
「やばしっ!!」
 ヘリネラと融合しているニドラボルグが今の危機を察知し、ヘリネラの手足は内側に折り曲げられ、頭も引っ込んでヘリネラは棘だらけのボールのように飛び出たのだった。
「なっ!!」
 ブルーヴとジュナがヘリネラの突然の起こした行動を見て目をひんむいた。棘玉となったヘリネラは高速でゴロゴロと転がり、周りから土煙と摩擦熱気が出てきて、鉱路内を一周すると、手足と頭を出して胸を張る。
「驚いた? こんなこともできるのよ、私たちは」
 ヘリネラが融合闘士に威張りながら言うと、ニドラボルグにきつい口調で言った。
「てかさあんた、ものぐさなくせに身の危険を感じるのは早いんだから!」
「どんな時にどうやって動けばいいのか真近でないとわからんに」
「ああ、確かにあんたはそうでないといけないかもね。だけど後は私の好きなようにさせてもらうわ!」
 ヘリネラはそう言うと、背中の棘を鋭く立てて、体を縦にして高速回転させる。すると体を回転させているヘリネラから四方八方に棘が次々に飛んできたのだ。
「転連乱棘飛(スピニドラ)!!」
 飛ばされた棘は岩壁や天井、木板の仕切りや地面に次々と飛んできて硬い場所には突き刺さり、木板は大きく粉砕され熱気を立てていた。
「ひえええ……!」
 ブルーヴがヘリネラの攻撃を見てドン引きし、ジュナはヘリネラが回転しながら棘を飛ばしてくるというのに、あの融合闘士は騎槍を振り回して棘をへし折っていた。へし折られた棘は次々に地面に落ちていった。
「くっ、こいつは思っていたより強い……。だけど、このヘリネラ様の切り札は誰からも逃れることは出来ない!!」
 ヘリネラは体を丸めて棘のボールとなって転がってきた。
「爆転速棘(ボーリングニドラ)!!」
 見ただけで危険度高しの棘の大玉が融合闘士に向かってくる。だが融合闘士は一切動じず、上へ跳んで棘玉に変化したヘリネラが転がった後の地面は大きな曲線や直線の溝、ぶつかった岩壁には大きく孔が空き、やはり煙を立てていた。岩壁の砂や小石がぼろぼろと崩れる。
「あんなん受けたら相当まずいよ……」
 ブルーヴがヘリネラの行動パターンを見て次第に恐怖を感じていき、傷が回復したジュナが立ち上がってブルーヴに言った。
「わたしや他の融合闘士だって、何度も危ない目に遭ってきたよ」
「え!?」
 ジュナの発言にブルーヴは首をかしげる。
「だけど、危ない目に何度も遭ってきたけど、色んなことを覚えたり学んだりして今日まできたってのは、融合闘士として成長した証なんだよね」

 融合闘士は転がって突進してくるヘリネラの攻撃を何度もよけて、鉱路は岩壁や天井がいくつも穴ぼこだらけになり、夜空が次第に薄くなっているのがわかり、ヘリネラは態勢を直すと
再び槍を出してきて、融合闘士に矛先を向ける。融合闘士も騎槍を持ち直すが、ガクンと膝まづいて小さく呻った。
「うっ!?」
 融合闘士が動かなくなった左脚を見てみると、何度ふくらはぎに赤い傷が走り、赤い染みを作っていた。そして傷口からしびれるような痛みが走る。
「何度も攻撃されちゃ困ると思ってね、一瞬の隙に棘に麻痺薬を塗っておいたのよ。ニドラボルグの棘は神経ないんでね、私は平気なのよ」
 ヘリネラが融合闘士に言うと、つかつかと近づき矛先を融合闘士に向けて止めを刺そうとした時だった。
「竜晶星落速(クリスタルスターダスト)!!」
 ヘリネラの横から星型の結晶弾が無数に飛んできて、ヘリネラはその攻撃をまともに喰らって横転した。ジュナが融合闘士の前に立つ。
「お前……。こいつとは関係ない筈なのに、何故?」
 ヘリネラがジュナに問うとジュナはきっぱりと言う。
「わたしはこの人に何度も助けられた。今度こそこの人に借りを返したいの:
 ジュナが言うと、融合闘士は手を出して天井を指をさす。
(え? ああ、そういうことね……)
 ジュナが納得すると、ヘリネラは体を丸めて今までの倍はある棘を伸ばし、転がってきた。
「爆転速棘・改(スパイニドラ)!!」
 ヘリネラがごろごろと転がってきた時、ジュナは剣を持ちかまえて、剣に様々な力が込められてジュナは大きく剣を振るった。
「流星群拡散輝(メテオルガナイブライド)!!」
 剣から無数の白き流星が無数に放たれ、天井の孔だらけの岩を砕き、それが無数の落石となり、ヘリネラの真上に落ちてきたのだった。
「きゃああああ!!」
 ヘリネラは断末魔をあげ、丸まったまま岩なだれの生き埋めになってしまった。
 崩した天井はぽっかりと大きな孔が空いて、一つの巨大な展望室のようになった。空は薄い藍色で、星がぽつぽつと浮かび、冷たい風がヒュウヒュウ入ってきた。
「や……やった……」
 ジュナはエルニオたちだけでなく、自分も新しい技を得たことに驚いた。
「ん?」
 ジュナは鉱路内のえぐれた地面の一部に一つの板を見つけた。それは石板で、乳紅色の見たこともない文字が刻まれており、絵文字のようだった。


 その後、アクサレス公国の警察の機動船がやって来て、ヘリネラとニドラボルグは土壌損壊罪及びダンケルカイザラントの重要参考人の取り調べのために連行された。
 ジュナを何度も融合闘士はすでに去っており、エルサワ子爵領の小島の一番高い木からその後を見つめていた。
「いいのか、融合獣の強化の秘伝の石記は……」
 融合闘士と融合している融合獣が適応者に言った。
「ああ、でも彼女たちなら託せられる。信じよう、これからを」
 海の冷たい風が吹いて木の枝が揺すられ、木の葉がこすれ合う音が鳴る。空はすっかり碧空になり、海は青緑の輝きを放っていた。

 そしてジュナはエルサワ諸島の空港へ行き、帰りの旅客機動船の客室の一角でラグドラグと共に眠っていた。ジュナの母、セイジャは娘とその融合獣が何度もトラブルに巻き込まれているのを見聞きして頭を抱え込んでいたが、その度に娘がたくましくなっていくのには感服していた。エルサワ諸島からエリヌセウス国のエルネシア空港まで三時間半かけて到着し、ガイマン区の機動船空港に到着し、更に高速客運車(キャビングカーガー)でラガン区の自宅に着いたのは夕入りだった。
 その後は母もジュナも亡き父の供養期間のため食事を作る力もなく、空港で買った弁当を温めて食べたのだった。
 夕食を済ませて入浴し、明日の学校の準備も終えて、ジュナはエルネスティーネの鉱路跡に見つかった石板を見つめ直す。石板は二.五ジルク四方の大きさで細かい絵文字が刻まれていた。
「ジュナ、もしかしてこれってダンケルカイザラントの奴らが探していたという融合獣の強化の秘伝なのか?」
 ラグドラグがベッドに入ったまま石板を眺めるジュナに尋ねる。
「多分……。でもこの文字って今まで見たことがないし、読み方もわからない。もしかして、他の星の文明がアルイヴィーナに流れてママの故郷に渡ったのかも」
 ジュナは枕元に置いた石板を見つめつつ言った。
「ラグドラグ、あの何度もわたしを助けてくれた融合闘士、また去っちゃった。もし次に会ったら、今度こそ借りを返したこととお礼をして、一体誰なのかを訊いてみるよ」
「ああ、そうだな。もう寝よう」
「うん、おやすみ」
 そう言ってジュナは部屋を消灯し、ラグドラグは床に寝てタオルケットをかけて寝入った。ジュナは例の融合闘士はあの人なんだ、と考え思いつつ瞼を閉じた。

 

サイト内検索

お問い合わせ先

asagi-novelpark