一次創作小説メイン、SF大好きな人には必見!

フューザー5-7

 
 融合闘士(フューザーソルジャー)、新たなる変化へ

 

「ええい、融合獣強化の秘伝が手に入らなかっただと!? どれだけの失敗がたて続けに起きているのだ!!」
 どこかの地底にあるダンケルカイザラントの本拠地の台形型の司令室はメタリック素材で囲まれて壁も床も天井も広く、一番高い段の上でダンケルカイザラントの首領が苛立つ。首領の段は白いスクリーンと黒い人影しか映らず、真中の段の三幹部は首領の声でびくついていた。
「も、申し訳ありません。ですが、エルサワ諸島に派遣しておいたヘリネラと融合獣ニドラボルグによれば、融合獣強化の秘伝はエリヌセウス皇国在住のジュナ=メイヨーという娘が所持しております。
 しかもエルサワ諸島の領主である子爵一族とジュナは親戚でございます。エルサワ諸島はヘリネラの件で警備が厳重になってしましましたが、弱みにはなると思います」
 濃い目のオレンジ色の長髪に白い肌に長身、赤銅色の胸元や大腿が露出した衣装の女幹部、ガルヴェリアが応える。
「弱みか……。だがそやつらに限らず融合闘士格闘大会(フューザーソルジャーコロッセオ)に参加した融合闘士(フューザーソルジャー)が我がダンケルカイザラントの融合闘士(フューザーソルジャー)にたてついているのだぞ? それだけ反乱の数がおおいということだ」
 首領がこわばった低い声を発しながら返す。
「確かにダンケルカイザラントの融合闘士(フューザーソルジャー)は減ってきています。そもそも我々がジュナ=メイヨー一派と出会ってしまったのもあるんですけどね」
 長い銀髪に黒い上下の服の青年幹部ユリアスが自分の組織の現状を伝える。
「旧アルイヴィーナ人であるフェズナーの化石の数だけ新たな融合獣の人格と知性の基礎となる人間も必要……。それに適っているのは孤児や浮浪者、世間から隔離された老人や障害者……。融合闘士(フューザーソルジャー)もそれなりに補充が必要……」
 短い暗紅色の髪に浅黒い肌、古代紫の上下の服をまとった巨漢幹部マレゲールが呟く。
「問題は数ではない。融合闘士(フューザーソルジャー)の能力も必要だ。だからこそ強化の秘伝が欲しいのだ。今度こそ秘伝の石板を手に入れるのだ!」
 首領が幹部に命令した。

 

 エリヌセウス皇国ではどの木々も草も茶色や黄色や赤に染まり、寒気も流れてきて人々は外套をはおるようになった。雨のぱらつく日もあるが、幸いこの日は学校休みの木曜日で雨が多い十一月の上旬にしては珍しい晴天だった。雲こそは多いが太陽が白い雲のとばりから顔を覗かせており、碧色の幕を出していた。
「休みの日にこの顔触れがそろうのって、久しぶりだよねー」
 エリヌセウス皇国エルネシア地方ラガン区の住宅街と商店街の間の道でジュナ=メイヨーは呟いた。
 カラフルな壁や屋根のある住宅街を背景にして、瀝青で舗装された道を歩いている。他にも、エルニオ・羅夢・トリスティス、そして彼らの融合獣も道を歩いていた。魚型融合獣であるソーダーズは空中を泳いでいたが。住宅街の真向かいの商店街は主に白い壁の建物が多く、肉屋や魚屋、八百屋には店頭に商品を陳列させており、仕立て屋のガラスケースには新商品の見本となるスーツが飾られ、薬局では白衣をまとった薬剤師が薬や包帯を棚に並べられていた。
 休日のため商店街に買いに来た人も多く、呼び込みの声が響き、焼き立てのモグッフ(パン)や瑞々しい野菜の匂いなどが漂う。
「あーっ、何か学校以外の場所で四組そろって遊びに行くってのも久しいよねぇ」
 町中を歩きながら黒一点のエルニオがみんなに言う。
「そうですね。ジュナさんの家で石板を解読して以来ですもんね」
 二色の和衣を重ね着した羅夢が言う。羅夢の腕にはジュビルムが抱かれている。
「トリスさん、今日はお店は?」
 ジュナがトリスティスに尋ねてくると、トリスティスはしばし沈黙してから答える。
「今日は父さんの仕込みの日で、臨時休業。学校休みの日でのびのび出来るの、本当に久しいよ」
 白と寒色系のコーディネートが似合うトリスティスが背伸びをして嬉々とする。
「だよなぁ。この前の休みなんかジュナは大変な目に遭うし」
 エルニオが呟く。エルニオの後ろにはツァリーナが親鳥についてくる雛鳥のようにちょこちょとろ歩いてきている。
「……、どこへ行くんだ? 久しぶりに四組で暇をもてあますとはいえ」
 ラグドラグが一行に尋ねてくる。
「あー、そういえばそうでしたね。どこに行こうか考えていませんでした……」
 羅夢が手を口に当てる。
「所持金だってそんなにないし、買い物はなぁ……」
 トリスティスが肩に提げていたトートバックに目をやり、エルニオが続けて言う。
「遊園地も遠いしなー……」
 エルネシア地方の一番近い遊園地でも筒間鉄道で一ヴィゲクロ(一時間)はかかる。
「動物園……もけっこう遠いしな……」
 ジュナが言っていると、そこに二人の少女が通りかかる。
「あれー、ジュナじゃない。こんなところで何をしているの?」
 その声を聞いて、ジュナは振り向く。一人はオレンジ色のボブカットに青緑の目と中間肌の少女、もう一人は紺青の長い髪に白い肌、褐色の眼の長身の少女だった。
「ダイナ、ラヴィエ……」
 ジュナと同じ四年普通科のエリヌセウス上級学院の学校生、オレンジ髪のダイナ=タビソと紺青髪のラヴィエ=ネックである。
「あ、こんにちは。先輩方……」
 羅夢がダイナとラヴィエに頭を下げてあいさつする。
「こんにちは。ジュナが学校以外の場所でグループの人たちと一緒にいるなんて」
 ラヴィエがジュナに聞いてくる。ダイナとラヴィエはジュナが自分以外の子、それも融合獣を率いているメンバーのことは「グループ」と呼んでいた。
「皆さん、どちらへお出かけへ?」
 ダイナが一行に話しかけてきたので、トリスティスが返答する。
「久しぶりに四組で遊ぶことになったんだけど、まだ決まっていなくって……」
「そーなんですかー。じゃあ、あたしたちと一緒にここに行きませんか?」
 そう言ってラヴィエは自分の革のポシェットから一枚の印紙を取り出して見せてくる。トリスティスが受け取って見てみると、それはザネン区の四番地で行われる区主催のイベント、『室内巨大迷路』であった。
 室内巨大迷路は十月と十一月の木・日・海曜日に行われるイベントで、ザネン区の文化センターの地下一階を丸ごと使っているのだ。しかも入場料は初級学校生は半クラン、上級学校生は一クラン、一八歳以上は一クラン二十ラッツァという安値で、融合獣や犬(フュンフ)などの動物は無料という嬉しさだった。
「行ってみる?」
 ダイナが尋ねてきたので、みんなは顔を見合わせる。
「なんか面白そう」
「他に行く処もありませんし、ね」
「僕らも行くよ」
 こうして彼らはダイナとラヴィエの誘いもあって、ザネン区の室内巨大迷路に参加することになった。
 ザネン区は南方にあり、しかも歩いて行ける距離なので、四組と二人はザネン区文化センターへと向かっていった。家々や店が並ぶ区域や公園も通り抜けていく中、ダイナはジュナに耳打ちをしてきた。
「ねぇ、ジュナちゃん」
「なあに?」
「エルニオくん、ってもてるの?」
「えっ」
 それを聞いてジュナは動転する。でもすぐに気を取り直して、言い返した。
「そんなこと言われても、ねぇ。クラス違うし、登下校と昼休みにしか会わないし……」
 ジュナがぶつぶつ言っていると、まさか……と思った。

 

 ザネン区四番地の文化センターは臙脂色の巨大な長方形の建物で、日によっては生け花や絵画などのカルチャー教室や町内児童会の催しが行われる。
 ジュナたちが行く室内巨大迷路は地下一階の巨大ホールを使用しており、階段から近い出入り口がスタートで警報機と消火ホースが壁に備え付けられている出入り口がゴールであった。スタート側の出入り口は若い文化センター役員の女性が親子連れや初級学校生や上級学校生の参加者から入場料を受け取ってもう一人の文化センター役員の女性が外開きの扉を開いて参加者を案内させていた。
「巨大迷路に参加する時は上級四年生以下は必ず二人以上で入場して下さい」
 これは迷子や仲間とのはぐれが出ないようにするためである。
「どーする?」
 ラグドラグが呟くと、みんなは考え込む。なにせ人間六人、融合獣四体という分けづらさである。その時ジュナが言った。
「わたしとラグドラグ、トリスさんとソーダーズはこのままでいいけど、ラヴィエがダイナは羅夢の付き添いをしてくれる? もう先に行っちゃうよ」
 そう言ってジュナはラグドラグを率いてさっさと巨大迷路の中に入ってしまった。
「あっ、急ぎ過ぎでしょっ」
「待って下せーえ」
 トリスティスとソーダーズは先走ったジュナとラグドラグを追いかける。二組が先に迷路へ入っていったのを見て、エルニオと羅夢とダイナとラヴィエはしばし見つめ合う。
「悪いけど……。ラヴィエ、羅夢のお供をしてくれないか? 君の方がしっかりしていそうだし……」
 エルニオがラヴィエに言うと、ラヴィエはやれやれと言うように賛成する。
「わかったわ。一緒に行きましょ、羅夢ちゃん」
「はーい」
 ラヴィエと羅夢とジュビルムは迷路の入口へと入っていく。ラヴィエたちが迷路の中へ先に行ってくれたのを見て、ダイナはほくそ笑んだ。
(やった、エルニオくんと一緒だ。ジュナちゃん、私のために先に行ってくれたんだ)
「行くよ、ダイナ、ツァリーナ。僕のあとをしっかりついていってよ」
「はーい」
 ダイナはエルニオと一緒にいられると嬉しくてたまらなかった。

 巨大迷路は車輪付きの仕切りに段ボールや模造紙が貼られて迷路の壁の模様や絵が描かれており、これがザネン区の学校生の協力もあって作られたものであると、迷路の参加者は和んだ。晴天の空の壁には大小の色とりどりの鳥が羽ばたき、海の中は青い下地に折り紙で出来た魚や貝や海の生き物が貼り付けられており、草原には肉食獣も草食獣もハ虫類も駆けまわっているという感じに。
「あれ、さっきはここも通ったぞ?」
「ミッチー、どこー?」
と、他の参加者の声も聞こえてくる。
 エルニオ&ツァリーナと共に巨大迷路に飛び込んだダイナはエルニオとツァリーナのあとをついていきながら、迷路の中を歩いていた。
(エルニオくんって、本当に格好いいなあ……。機動船工学の権威のカテリーナ=バディス博士のお孫さんで、彼も理工学をとっていて、融合闘士(フューザーソルジャー)……)
 ダイナはぽーっとしながらエルニオのあとをついていった時、ぼんやりしていたのか前のめりに倒れた。
「あっ……!」
「うおっと」
 エルニオがダイナの下にはって衝撃を防いだ。エルニオの体にダイナの体重がかかるがそんなに負担はかからなかった。
「あ~あ~、何やっているのダイナ」
 ツァリーナがダイナの様子を見て呟く。
「ご、ごめんなさい、エルニオくん……! ちょっと油断していて……」
 ダイナは丸顔で体型もふっくらしているが体重はそんなにはない。急いでエルニオから離れてエルニオは起き上がる。
「僕は平気……。ダイナこそ大丈夫?」
 エルニオが聞いてきたのでダイナは顔を赤らめて顔をうつむかせる。
「わ、私も平気……」
 エルニオはダイナに手を差し伸べる。
「また転ぶと危険だから、手をつなごう」
 ダイナはどぎまぎするも、エルニオの気づかいを見て二人は手をつないだ。
(相棒としては見守っておきますか……)
 ツァリーナはエルニオとダイナのムードを壊さないようについていく。
 ダイナは幸せの絶頂だった。他の迷路参加者の声なんて聞こえない。あるのは<今>だけだ。
「ねぇ、エルニオくん。何か話しながら歩こうよ」
「ああ、そうだな……」
 ダイナとエルニオがそう言った時だった。突然空中に虹色の粉が舞ってきて、エルニオとダイナ、そしてツァリーナの視界を遮らせた。粉が口や目に入ると、周りが赤や青や黄色のサイケデリックな空間になってきて、次第に治まっていくとダイナとエルニオとツァリーナはいつの間にか紫に白い霞が漂うだたっ広い空間の中にいたのだ。
「え、エルニオくん、どうしちゃったの私たち!? 迷路の中にいた筈なのに……」
 ダイナがうろたえていると、エルニオとツァリーナはこれはダンケルカイザラントの仕業に違いないと踏んで、ダイナをなだめた。
「ダイナ、落ち着いてくれ。僕らは僕たち以外の融合闘士(フューザーソルジャー)の仕業でこうなってしまったんだ」
「エルニオくんやジュナちゃんたち以外の融合闘士(フューザーソルジャー)? 一体誰が……」
 ダイナが疑問思っていると、どこからか女の笑い声が聞こえてきた。
「ほほほほ……。ご名答よ。融合適応者の坊や」
「誰だっ!! 姿を見せろ!」
 エルニオはダイナの前に立って守りの体勢に入ると、すー……と真上から蟲翅族の融合獣と融合した女の融合闘士(フューザーソルジャー)が現れたのだ。
 頭部には瑠璃色の複眼と緩やかな曲線状の触角とむき出しの口と赤紫の目、二の腕と両腿は剥き出しの白い肌、両腕と両脚と胴体は黒く白いボア状のパーツが付いており、背には四枚の花弁を思わせる黒い翅には青緑の筋が入っている。その融合闘士(フューザーソルジャー)の体の中心には瑠璃色の契合石が光る。
「あんたはダンケルカイザラントの融合闘士(フューザーソルジャー)か!」
 エルニオが青筋蝶(モラファブルーナ)の融合闘士に尋ねてくる。
「確かに私はダンケルカイザラントの者よ。名はイリューネ。そして私と融合しているのは融合獣スピゲルト」
 イリューネは甲高い声を出してエルニオに紹介する。ダイナはイリューネの妖艶ながらもその恐ろしさに怯えていた。
「一般人を装って、あの迷路の中に入っていたのか……」
 エルニオがイリューネに聞いてくる。
「まぁね。ユリアス様のご命令により、あなたたちを倒さないといけないのよ。だけど、融合適応者でもない子もついてきちゃったようねぇ。私の創りだす夢幻空間(ファンタジュリオン)は反ダンケルカイザラントの融合闘士(フューザーソルジャー)だけ連れ込もうと思ったのに」
 イリューネが残念そうに呟く。ダンケルカイザラントの者がもしかしたら無関係のダイナを酷い目に遭わせるかもしれない。そう踏んだエルニオはダイナに言った。
「僕が君を守ってみせる」
 エルニオの言葉を聞いてダイナは恐怖が揺らいでエルニオを信じようとした。

 

「融合発動(フュージング)!!」
 エルニオとツァリーナが叫んで両者は翠の旋風に包まれて、風が弾けると翠の羽毛に覆われて頭部に嘴、四肢が蹴爪、背中に両翼、腰に金の尾羽を持つエルニオが現れる。
(初めて間近で見た……! エルニオくんの融合闘士(フューザーソルジャー)姿を!)
 ダイナはエルニオの融合闘士形態を見て目を丸くするも、エルニオはダイナに下がるように言った。
「下がってて、ダイナ。行くぞっ!!」
 エルニオはイリューネに立ち向かい、イリューネは契合石に手を当てて、蝶(ピレクレオ)の口吻に良く似た黒い鞭を出してきて、鞭を振るって球体の淡い色の丸い塊のリンプン弾を出してくる。エルニオも負けじとノド近くの薄青い契合石に手を当てて、鳥の頭部が付いた二丁拳銃を出してきて緑色の風のエネルギー弾を乱射する。
 エネルギー弾がイリューネの出したリンプン弾に当たって麦粉を地面に落としたように弾けて虹色の粉の霧となる。
「うっぷ」
 エルニオはリンプンが眼や口に入ってむせだし、更に目がかすんで四肢に痺れが走り、声が出なくなる。
「エルニオくん、どうしちゃったの……?」
 ダイナがエルニオの様子が停止したのを目にしていると、イリューネが鞭でエルニオを叩きつけてきて、エルニオは地面にあたる空間の部分に落下して仰向けになる。
「エルニオくん!!」
 ダイナがエルニオを見て叫ぶが、エルニオは体は動けず喋ることもできず、視線だけでダイナに言う。
(相手のリンプン弾で体が痺れただけだ……。僕に近づいたら、君までうつってしまう……)
 エルニオが睨みつけてきたのでダイナは思わず後ずさりする。その時、イリューネが降下してきて鞭でエルニオの手足や胴体を痛めつけてきた。
「や、やめてよ!」
 ダイナがイリューネに訴えるが、イリューネは無抵抗のエルニオを痛めつけている。
(僕の体が動ければ……。いくらツァリーナが痛めつけられた僕の体を再生してくれても、甲何度も痛めつけられていたらもたない……)
 しかし、エルニオは思った。自分は傷ついたって構わないから、ダイナを何としてても守らなければ……と考えていた。
「これで終わり、よ」
 イリューネが鞭を直線状にして細見の剣状に変えた。そしてエルニオの胸の契合石につき立ててこようとしてきたその時だった。
(ダイナを守りとおして、僕は負けたりなんかしない!)
 エルニオの契合石が眩しいくらいに閃光を放ち、その眩しさでイリューネは目を閉ざしてエルニオから離れた。
「うわぁ!?」
 そして更にエルニオの体からエメラルドを思わせる緑色の光に包まれ、光が弾けるとエルニオは以前とは違った姿に変貌していた。
「これは……、一体……!?」
 エルニオは自分の姿を見て驚く。緑色の羽毛に覆われているが体には白と金のディティールがあり、緑色の翼が四枚をある融合闘士(フューザーソルジャー)の姿に変化していたのだ。
 ダイナもエルニオの変化を見て何が何だかわからないかのようにぼんやりしていた。
「エルニオ、今までとは違うのは見かけだけじゃない。体の中心から力がみなぎってくるわ……」
 エルニオと一体化しているツァリーナもエルニオに問いかける。
「僕にも何が何だか……。もしかして、融合適合者の心の何かに反応して、今までとは違う姿に変わったのか……?」
 エルニオは何となく変化のきっかけを半分理解していると、イリューネが鞭を変形させた剣を持って襲ってくる。
「どうせ見かけ倒しでしょ! 覚悟をし!」
 イリューネは剣をつき立てるように持ちかまえて、エルニオに刃を向けてきた。しかしエルニオは危険を察知すると、最近得たばかりの技、気流梱包撃(エアゲージパッキング)を出してきて、エルニオが出してきた翠の気流はイリューネを繭状に包みこんできて、上斜めを行くように弾き飛ばしたのだった。
「あああああ~~!」
 イリューネは悲痛な叫びをあげて吹き飛ばされる。
(これが強化した時の威力か……!)
 エルニオは自分の変化と同時に技の威力も増していることに感心する。と、その時イリューネが天井にあたる空間の部分にぶつかったことで夢幻空間(ファンタジュリオン)がガラスが砕けるように消えて、エルニオ・ダイナ・イリューネはいつの間にかザネン区の文化センターのエントランス前にいたのだった。
(あの融合闘士(フューザーソルジャー)が倒されたことで、僕たちは現実の世界に戻れたんだな……)
 エルニオの体に翠の旋風が舞い、風が消えるとエルニオとツァリーナの姿に戻る。
「エルニオー、ツァリーナ、ダイナー!」
 自分たちを呼ぶ声が聞こえてきたので、建物の敷地からジュナ一行やラヴィエが走って現れる。
「みんな……!」
 ダイナは一同を見て呟く。
「いやー、ダイナとエルニオくんがいなくなっちゃったからみんなで探しに行ってたのよ」
 ラヴィエがダイナに声をかける。
「こいつだな、エルニオたちを罠に陥れたダンケルカイザラントってのは」
 ラグドラグが失神しているイリューネと適応者と融合したままのスピゲルトを目にする。
「そーいえばジュナ、エルニオくんがさっきすごいことになっていて……」
 ダイナがジュナに言うと、じゅなたちはさっきまでダイナとエルニオの身に起きた出来事を一から十まで話した。
「そんなことが……。融合獣強化の秘伝って、こういうことだったの……」
 ジュナは呆気にとられるばかりだった。しかしエルニオの強化を自分の目で確かめることが出来なくて残念だった。
「そうだ、エルニオさんに聞けば……」
 羅夢がエルニオに視線を向けると、当のエルニオは文化センターの入口の門柱によっかかっており、まぶたを閉ざしていた。
「え、エルニオさん……!?」
 羅夢が近づくとエルニオは寝息を立てて眠っていたのである。
「一時的とはいえ、強化の大小で疲れちゃったのよ」
 エルニオの傍らでツァリーナがジュナたちに言った。
「融合適応者の心によって融合闘士(フューザーソルジャー)が強化をとげる……。わたしたちにもその可能性があるのだろうか?」
 ジュナは呟いた。
「ダイナ、大丈夫だった?」
 ラヴィエが尋ねてくると、ダイナは「うん」と首を上下に動かした。
「エルニオくんのおかげで助かったから」
 ダイナは眠っているエルニオに笑いかけた。
 エルニオが何らかの心の兆しで強化をとげたように、ジュナ・羅夢・トリスティスも強化をとげるのだろうか!?

 

 

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