フューザー6-2

  幹部との向かい合い


竜風昇拳・双(ダブル・テンぺスターブロークン)!!」

 エルニオが両拳に風の力をまとい両手を振るって竜巻を起こし、イリューネとスピゲルトは天井近くまで吹き飛ばされてイリューネは壁に叩きつけられてそのまま落下し、スピゲルトは黒い(ピレクレオ)型の姿に戻って仰向けに倒れ、イリューネは黒い短髪に白い肌、黒い上下の服の女性に戻る。

「ふう、手強かった......」

 イリューネとの戦いを終えたエルニオが翼を使って二階の入口に向かう。

再戦(リベンジ)をしかけてきて以前より強くなっていると思っていたら、案外早く倒せたわね」

 エルニオと一体化しているツァリーナがエルニオに言ってきた。

「うーん、超変化の覚醒の影響も入っているのか、超変化しなくても勝ったんだからなー」

 エルニオが以前イリューネと戦っていた時、エルニオは超変化して以前とは異なる姿になってイリューネを撃退した。超変化なしでもダンケルカイザラントの融合闘士(フューザーソルジャー)に勝てたのはエルニオ自身の成長なのか古代人の情報が入っている契合石のおかげなのかはわからない。

「とにかく今はジュナたちと合流しよう。みんなはもう先に行っているかもしれない」

「そうね」

 エルニオはツァリーナと融合したまま出入り口に入り、廊下を進んでいった。直進していくと、左右に分かれている道を見つけどちらに行けばいいか立ち止まっていると、殺気を感じてそこには銀色の長い髪に長身、黒い上下の長袖長裾に黒い靴、黄色がかった肌、両眼の上に赤黒いバイザーの若い男と黒い毛に赤い目と左首に赤い契合石の牙獣族の融合獣が立っていたのだ。融合獣は長い房尾に尖った耳、一ジルクは超えている体長、牙と爪は鋭い(ワウォル)の融合獣である。

「あんたは......ユリアス!」

 エルニオが男の名前を呼ぶ。

「まさかこのダンケルカイザラントの本拠地に来るとはなぁ、エルニオ=バディス」

 ユリアスはエルニオを見て淡々と言う。

「一体どうやってここに来た? 我が部下の融合闘士から吐かせたのか? それとも誰かの手引きか? いや、裏切り者は始末するから違うか?」

 エルニオはユリアスに睨みつける。

「何言ってんだよ、僕の友人をたぶらかして悪の道に入れ込んで、反省したら友人を殺した。あんただけは......赦さない」

 エルニオは久しぶりに会った友人が悪に走りダンケルカイザラントの融合獣と融合して戦い友人は反省したところ、ユリアスに殺された。反ダンケルカイザラントのエルニオと復縁しようとしたために。

「ドルナドスは始末されて当然だ。ダンケルカイザラントの融合獣を所持したまま、お前たちの方につこうとしたのだからな」

「......ドルナドスさんの仇、ここで討たせてもらう!」

 エルニオはジュナたちとの合流よりもユリアスを倒す方に専念する。

「いいだろう、ヴォルテガ」

「承知した」

 ヴォルテガはユリアスの前に出る。

融合発動(フュージング)!!」

 ユリアスとヴォルテガが融合する言葉を放ち、両者は闇の柱に包まれ、闇が弾け散ると、ヴォルテガと融合したユリアスが姿を現す。

 尖った耳と牙のある頭部、左首には紅蓮の契合石が煌き、四肢の先に鋭い爪、腰に大きな房尾、闇属性の融合闘士に相応しい黒い色合いである。

「行くぞ!」

「ええ」

 エルニオがツァリーナに言った。

 自分のパートナー融合獣と融合したままダンケルカイザラントの首領のいる司令室へと向かうジュナ・羅夢・トリスティスは一角有翼の融合闘士に連れられて延々と続く廊下をかけていた。

 駆けている途中で羅夢がかすかながらも怪しい音を耳にして立ち止まる。

「どうしたの、羅夢ちゃん。急に立ち止まったりして」

 ジュナが尋ねてくると羅夢は二本の耳を研ぎ澄まして呟く。

「聞こえてきます......。人間でも機械でもない音が......」

 羅夢が返事をすると、一角有翼の融合闘士は人でも機械でもない音と聞いてハッとなる。

「まさか......ブレンダニマか!?」

 するとズリッズリッと何かを引きずるような音が後方から聞こえてきてジュナたちは思わず振り向いた。

「はわわわ......」

 トリスティスが後ろからやってきた「モノ」を見て思わず引く。それは巨大な植物だった。無数の根は脚の役割をし、幹は胴体でやたらと長い尾は木の葉がいくつも吹いており、茎が首で四本もある手は葉のようで爪の役割をする刺が細かく生えており、頭部は子房と花は赤くて大きな三日月が連なっているように見えた。そして、子房となる頭部は茶色い鋭い目と避けた鋭い牙のある口。

「ブレンダニマ......」

 ジュナが植物怪獣を見て呟く。

「君たちのような敵や侵入者が来たら襲うように遺伝子プログラムされているんだろう。こいつの相手はちと厄介だな......」

 一角有翼の融合闘士が戦う準備をしようとすると、羅夢が三人の前に立つ。

「ここはわたしが引き受けます。行ってください」

「え、でも......」

 ジュナが羅夢に言うと、羅夢は笑って返事をする。

「わたしは陰陽術を使えるのでブレンダニマの一体くらいは大丈夫ですよ。ジュナさんにはボスの所まで行ってもらいたいんです」

 羅夢がここは任せてと言うと、トリスティスも羅夢と残ろうとしたが......。

「あんた一人じゃ危ないから私も......」

「いいえ、トリスティスさんはお二人のサポートをして下さい。ここから先は何が出てくるかわかりませんからね」

「羅夢ちゃん......」

 ジュナが羅夢の様子を見ていると、こらえきれないものが込み上がってきた。

「ごめんね! また落ち合おうね!」

「ちゃんとついてきてよ!」

 ジュナとトリスティスはブレンダニマの相手をする羅夢とジュビルムに委ねて自分たちは前進した。

「キチチチチ」

 ブレンダニマが不気味な声を唸らせる。

 羅夢は腹部の契合石に手を当てて武器の蔓状の鞭を出してくる。

「かかってきなさい!」

 エルニオに門前の融合闘士、羅夢にブレンダニマの相手を委ねたジュナとトリスティス、一角有翼の融合闘士はひたすら前へかける。すると前方から音がいくつも響いてきたのを耳にして、また立ち止まった。

 前方から翅虫と甲殻類と地を這う蟲を模した白い機械の群れがぞろぞろと出てきたのだ。

「インスタロイド......」

 ジュナが機械兵の群れを見て呟いた。見ただけでも一〇〇体近くはいる。

「どうしても首領と僕らを会わせたくないようなんだね......」

 すると一角有翼の融合闘士は一歩前へ進んで両腕を交差させてから掌をインスタロイドに向ける。すると融合闘士の手から白金の光線が撃ち放たれる。

明光一閃(フラッジビュウム)!!」

 融合闘士の放った光線でインスタロイドは半分ほど吹き飛んで倒されたものは装甲が割れ、手足がバラバラになり配線等の中身が出てスクラップになって廊下に散る。

「すご......」

 ジュナとトリスティス、彼女たちと融合しているラグドラグとソーダーズも一角有翼の融合闘士の実力を見て目を丸くした。

 インスタロイドは半分ほど倒したが残ったものがジュナたちに襲いかかる。その時、甲殻類型インスタロイドの体が貫かれて停止する。

「トリスティスさん、どうもすみません」

 ジュナに襲いかかってきたインスタロイドはトリスティスの腕の刃に貫かれたのだった。

「ここは私に任せて。二人はボスの所に行ってちょうだい」

 トリスティスがそう言ってきたので、ジュナはためらう。

「トリスティスさんまで置いていくなんて......」

「インスタロイドって雑兵なんでしょ? 雑兵ぐらい私がちゃっちゃとやるから気にしないでよ」

 トリスティスがエルニオや羅夢と同様に任せてくれと言ってきたので、ジュナはまた仲間を置いていく気持ちもあったが、インスタロイドの群れをトリスティスに委ねた。

「トリスティスさん、ありがとう!」

「さぁ、いいから行こう」

 一角有翼の融合闘士と共にジュナは前進する。

 淡い色の屋根や壁、円筒や四角などの住宅街が並ぶラガン区の住宅街。その中に白い壁に四角と台形を合わせたような形住宅があった。ジュナ=メイヨーの家である。

 ジュナの母、セイジャ=メイヨーは夫の死後にエリヌセウス皇国にある都市開発法人に異動が決まり娘のジュナを連れて長年住んでいたヘルネアデス共和国を出て、エリヌセウス国のエルネシア地方ラガン区に移り住んだ。

 セイジャは長めの千歳緑の髪をバレッタで留めて青いピンストライプのブラウスと薄い灰色のジャケットと紺色のタイトスカートの装いで娘の部屋に行く。

「ジュナ、お母さんこれからお仕事に行くからお留守番していてね」

 セイジャは娘の部屋のドアをノックするが反応がない。ジュナの同級生であるダイナ=タビソがダンケルカイザラントの融合闘士とジュナたち反者の戦いに巻き込まれてその噂が学校中に広まり、エリヌセウス上級学院の多方の生徒から糾弾されたジュナたちは学校に行けず家で過ごしていた。もちろんジュナたちに非はないのだが、他の学校生たちは融合闘士同士の争いに巻き込まないでくれと追い出したのだった。

「ジュナ......?」

 セイジャが娘の名前を呼ぶが返事がない。セイジャは思い切って部屋の中に入る。ジュナの部屋はクローゼット、本棚、学習机、コンピューター机とその端末、椅子、小型テレビ、カラフルな動物のぬいぐるみ、そしてベッド。ジュナの部屋には天井にも窓が付いており、そこから太陽の光が入ってきて部屋を照らしていた。

「ジュナ、いくら学校に行けないからって、寝坊もほどほどにしておきなさいよね」

 母がベッドの上の掛け布団をはぐとジュナの姿はなかった。そしてジュナと融合してからはメイヨー家の一員となったラグドラグの姿もないことに気づいた。

「ど、どういうこと......」

 母は驚いて一階にある玄関へ行き、靴箱を見てジュナが持っている靴が一足足りないのを確認した。

「もしかして家出......?」

 学校に行けなくなったからってヤケになって家出したのか、と母は思っていたがジュナの部屋に再び入ってクローゼットや机の中を確かめる。

 しかし服はひと組を除いてたくさんあり旅行に行く時の大型バッグやリュックサックも残っており、机の中は財布も預金通帳もあり、あってもいい筈の書置きもなかった。

「ジュナ、どこに......」

 母が呟いていると電話の着信音が聞こえてきて母は急いで一階にある家内電話の受話器を取る。

「はい、メイヨーです」

『もしもし、ジュナちゃんのお母さんですか? 私、エルニオ=バディスの祖母のカテリーナです。お宅の家にエルニオが来ておりませんか?』

「えっ、エルニオくんもですか!?」

 ジュナの母は娘の友人も家にいないことを聴くと思わずエルニオの祖母に尋ねてきた。

『エルニオくんも、って......メイヨーさんの娘さんもいないということなの!?』

「はい、お仕事に行く前に娘に声をかけたら娘もラグドラグもいなくって......」

『私も同じなのよ。エルニオだけでなくツァリーナも姿を消して......。先程、羅夢ちゃんとトリスティスちゃんのご両親からも連絡があって、「娘と融合獣が姿を消した」って......』

 エルニオの祖母から話を聞いたジュナの母は娘と融合獣はいつ家を出てどこに行ったのか暗幕が急に落ちてきたような気持ちに襲われた。

 一方でダンケルカイザラントの本拠地で植物系ブレンダニマとの戦いを羅夢が担うことになり、植物系ブレンダニマは指先から棘を飛ばしてきたり、根っこの脚を羅夢に向けて振り回してきたり、口から人間の頭ほどもある種型砲丸を吐き出したりと攻撃をしてくる。

 羅夢も跳んだりはねたりと避けたりするほか、蔓の鞭で種型砲丸を弾いたり数多蔓壁(ヴァンティンスウォール)で防御したり、花びら型の爆弾を敵に向けて爆ぜさせる梅花爆弁(ブルーメンボンバティエ)を放ったりと苦戦を強いられていた。しかし羅夢は気づいた。合成植物のブレンダニマなのに何故か自分と同じ反応――融合獣との融合期間が長い融合適応者は体内の契合石によって適応者かそうでないかの区別がつく。羅夢はブレンダニマの頭部に融合適応者が入っていることに気づいたのだ。

「そこだっ!!」

 羅夢は大きく跳躍して蔓の鞭でブレンダニマの頭部を強く叩きつけた後に梅花爆弁(ブルーメンボンバティエ)を放った。するとブレンダニマの頭がもたげて緑色の体液を流しながら頭は熟れすぎた果実のように落ちた。そして胴体の方を見ると、頭のあった部分に赤胴色の融合闘士がいたのだ。触覚と複眼と節のある昆虫のような四肢の女の融合闘士で、複眼と背中の契合石が深緑色の(ティンアピン)の融合獣と融合しており、むき出しの口は白い肌でかなりの長身である。

「あなたは......ダンケルカイザラントの幹部の......」

 羅夢は女融合闘士を見て声を震わせながらも言う。女はブレンダニマの胎内から出ると羅夢の前に降り立つ。

「あら、私のことを覚えてくれているとはね。宗樹院羅夢」

「ガルヴェリア......」

 女融合闘士はダンケルカイザラントの幹部だったのだ。

「まさかブレンダニマを操るなんて、しかも中から......」

 羅夢はガルヴェリアの登場を見て引くも踏みとどまる。

「ふふふ、(ティンアピン)の中には植物や自分よりも大きい虫を内側から操る種類もいてね。それの要領よ。洗車や戦闘機の操縦みたいなものよ」

 ガルヴェリアはブレンダニマの操っている方法を羅夢に説明してから話を変える。

「それにしても、あんたもあんたの仲間も、メンバーを置いていって勝手なことをするものね。赦せないと思わないの?」

 ガルヴェリアが羅夢を蔑むように言ってきたので羅夢は一瞬沈黙するも首を横に振った。

「そ......そんなことありません! エルニオさんは後から追いつくって言っていたし、わたしがここに残ったのはあなたを足止めするため。決して置いていったり置いてかれた訳ではありません!」

「ふふふ、その綺麗事がどこまで通じるか見てみたいものね」

 ガルヴェリアは口元を釣り上げて羅夢と対決する。

「はっ!!」

 トリスティスはインスタロイドの群れを相手に一人、いやソーダーズと融合した形態での一人でインスタロイドの群れを倒していった。ある時は両腕の剣で突き、あるいは貫き、ある時は真っ二つに叩っ斬り、一度に複数が襲いかかってきた時には水の技を発動させて倒していった。ガシャァン、とインスタロイドが床に落下して手足がバラバラになり、骨格などの中身がむき出しになっているのがわかる。

「うう~、しんどかったぁ」

 一人で五〇体ほどのインスタロイドを相手にしたトリスティスは肩を上下させて、むき出しの口から荒い息を吐く。と、トリスティスと一体化しているソーダーズが呟く。

「いや、まだいやす......」

 まだインスタロイドが残っていたのかとトリスティスが顔を上げると廊下の向こう側から一人の大柄な融合闘士が現れる。

 二〇ジルク近い背丈に古代紫の素体に頭部と腕と腰と胸に白地装甲、両肩に丸い貝を二つに割った装甲がついており古代紫の無数の触手、額に灰色の契合石が輝いている。口元は一文字にしている巨漢であった。

「あんたはダンケルカイザラントの幹部の......」

 トリスティスが巨漢の融合闘士を見て呟く。と巨漢の適応者と彼と一体化している融合獣が喋る。

「マレゲールだ」

「融合獣のオーガジェだ」

 融合獣のオーガジェは大きな巻貝型生物チュルノガル(オウムガイ)を元にしている。

「首領ダイロス様の命令によってお前を始末しに来た」

「覚悟しろよな」

 マレゲールは寡黙に喋り、オーガジェはいい加減そうに喋る。

「姐さん、やれますかね?」

 トリスティスと一体化しているソーダーズがトリスティスに尋ねてくる。

「ここまで来たんだもの。絶対勝ってみせるよ!」

 多数のインスタロイド相手に二体で一人やってきたトリスティスであったが、逃げたりせずに立ち向かおうとしていた。

 三人の仲間が別々の場所で戦い一角有翼の融合闘士と共にダンケルカイザラントの首領の元へ向かうジュナと一角の融合闘士はゾルダロイドやインスタロイドを相手にして蹴散らしてきた。インスタロイドは無機物だからためらいなく倒せるが、ゾルダロイドはダンケルカイザラントに忠誠を誓っているとはいえ元は普通の人間のため、なるべく傷つけたり殺めたりしないように倒していった。

 ジュナが驚いたのは一角有翼の融合闘士がやたらと強いということであった。光属性の技を使い、インスタロイドを半分倒した光線技の他、両手から光の盾を出したり、光を帯びた翼による突風を起こしたりと一度に一〇体のインスタロイドとゾルダロイドを倒したからだった。

「まだ行けるか?」

 一角の融合闘士がジュナに声をかける。

「あ、はい。まぁ......」

「そうか、あと少しだ。急ぐぞ」

 一角の融合闘士が駆け出そうとすると、ジュナは体をふらつかせた。

「あっ......」

「大丈夫か!?」

 ジュナは融合闘士に体を支えられて転ばずに済むが、ふと思い出した。

(あれ? 小さい頃にも同じことがあったような......)

 父がまだ生きていてアクサレス公国に住んでいた頃、ジュナには兄がいたことを今春に思い出した。アクサレスが戦争をしかけられて逃げゆく中、兄が父や母や自分とはぐれてしまい、父母は探しまくったが諦めたことや八年の間にジュナは兄を忘れていて、八年ぶりにアクサレスを訪れた時に兄と(おぼ)しき手がかりを見つけた。

(そういえば、この人の翼の色とアクサレスで見つけた羽の色、同じだ......)

「もしかして、あなたは......」

 ジュナが一角有翼の融合闘士に尋ねようとしたところ、彼は遮るように続けて言う。

「行くぞ」

「あっ、待って」

 二人は再び走り出し、一つの大きな扉の前に立つ。その扉は左右に開く黒鉄色でゆうに二五ラヴァンある高さだ。

「ここにダンケルカイザラントの首領がいるの?」

 すると一角の融合闘士はジュナの質問に答えるよりも先程インスタロイドを倒した時の技を放った。

明光一閃(フラッジビュウム)!!」

 一角の融合闘士は両腕を交差させて掌から白金の光線を放ち、扉の中心に大きな孔が空き、一角の融合闘士、続けてジュナが扉の向こうに足を入れる。

 扉の向こうは巨大な台形型の部屋に三段の高低の床、上段には白いスクリーン越しにシルエットが映し出されている黒い影があった。

「あの人がダンケルカイザラントの首領......」

 ジュナはスクリーン越しでシルエットだけとはいえ、初めて目にするダンケルカイザラントの首領を見て呟く。

『来たか、我がダンケルカイザラントに楯突く者たちよ。他の者を置き去りにしてまでここに来るとは、なんという皮肉だ』

 重くて低い首領の声がジュナと融合闘士に向かって言う。

「仲間を置き去り......」

 首領の言葉を聞いてジュナは動揺する。

「ジュナ、気にするな。ただの挑発だ」

 ジュナと一体化しているラグドラグがジュナに言う。

「何を言っているんだ。この子の仲間たちは何度もダンケルカイザラントの融合闘士やブレンダニマ、インスタロイドを相手にしてきた。そうあっさりと倒されたりしないよ」

 一角の融合闘士が代弁するかのように首領に向かって言った。

『ククク......。そうか、仲間を信じるのか。人の願いなんて、あっという間に打ち砕かれる。なぁ、レシル?』

 レシル、と聞いてジュナはハッとなった。

「え......。それって......まさか、あなたは......」

 ジュナはレシルと呼ばれた融合闘士に視線を向ける。八年前に生き別れて長いこと忘れていた自分の兄の名前――......。

「お兄ちゃん......」

 ジュナは一角の融合闘士に向かって呟く。

「あなたがわたしの兄だったのね......」

 思い出してから会いたいと願っていた自分の兄が融合闘士で、近くにいたという気持ちが込み上がってきた。そしてレシルはジュナに言った。

「僕だってジュナや母さんに会いたかったよ。でも戦争の時、敵に捕まってダンケルカイザラントに入れられて逆らったために記憶を失って、最近になって思い出したんだ。でも父さんは事故で逝っていて、母と妹もヘルネアデスを出ていっていた。

 でも、その前にダンケルカイザラントに一矢報いわせようと、融合獣とペガシオルと戦ってきた」

「よろしく」

 レシルとは別の声が聞こえ、それが融合獣のペガシオルだとわかった。レシルはジュナに声をかける。

「ジュナ、この戦いを終えたら兄妹で、いや仲間と共に帰ろう。首領を倒すまでの辛抱だ」

 兄のレシルの台詞を聞いてジュナは頷いた。兄だけでなく、他の場所で戦っているみんなも同じ気持ちなのだと。