フューザー6-4


 羅夢対ガルヴェリア


梅花爆弁(ブルーメンボンバティエ)!!」

 融合獣ジュビルムと融合して羅夢は薄紅色の花びら型の爆弾を蟲翅族の融合獣・レノアリスと融合しているダンケルカイザラントの女幹部ガルヴェリアに向けて放つ。

大地防盾(グランドゥームガーディング)!!」

 ガルヴェリアは両手から大地エネルギーを出す波動を出し、ガルヴェリアの前に土くれの盾が出てきて花びら爆弾を防ぐ。花びら爆弾は土くれの盾に当たると小さく連なって弾けた。羅夢は梅花爆弁(ブルーメンボンバティエ)が敵に当たらなかったとさとると腹部の契合石からツル状のムチを出してガルヴェリアに向けて飛ばしてくる。

 ツルのムチはガルヴェリアの左腕に巻き付き、羅夢は地を思いっきり蹴って跳躍し、ガルヴェリアを壁に強く投げつける。

「たぁっ!!」

 ガルヴェリアは羅夢によって壁に叩きつけられて、壁は人型に凹んだ。

(思っていたより強くなっているな、この小娘は。年端もいかない齢だというのに......)

 ガルヴェリアは壁から出てきたところ、羅夢はまたツルのムチを伸ばしてきた時、ガルヴェリアは事早く手で受け止める。

「同じ手はもう喰わないよ」

 ガルヴェリアは両手でツルのムチを引っ張り、羅夢は前に引きずり出されそうになるが踏ん張った。

「ぐぬぬぬ......」

 ズリッと羅夢の足の裏が前にずれる。

「あら離さないの? じゃ、私が離すわ」

 そう言ってガルヴェリアは両手で受け止めていたツルのムチを離して、羅夢は離された勢いで盛大に尻餅をついて倒れた。

「あわっ!!」

 羅夢は転んだのを見計らってガルヴェリアは両手に大地エネルギーを出して羅夢の方へ地面に手を当てて、転んだ羅夢の周囲に土くれが出てきて、土くれは羅夢の頭と手足首だけをだして閉じ込める。

大地壊牢閉(グランドゥームプリズナー)

 ガルヴェリアが出してきた土くれの塊によって羅夢は身動きがとれなくなる。

「くっ......!」

「羅夢、ここから出られるですか?」

「んっと......。変な体勢で固められちゃってるから出られないよ」

 ジュビルムに言われて羅夢は逃げだそうとしたが土くれの固まりが早く、手首と足首をパタパタさせて生き埋め状態のためもがくしかなかった。

「無様な格好ね」

「クフフ」

 ガルヴェリアとレノアリスが身動きできない羅夢を見てあざける。

「融合できるだけでなく陰陽術も使えるあなたがこんな風になったら、どうにもならないわよね?」

 ガルヴェリアは羅夢に向かって言う。

「それにしても、私と出会った時は従姉妹の子が危ない目に遭って、孤児院の子たちも私らが連れて行こうとしたらあなたたちの邪魔が入って、私の部下から何度も戦う羽目になっているってのに、どうして自分の運命を呪わないの?」

 ガルヴェリアのセリフを聞いて羅夢は沈黙する。この間だってそうだ。学校は違えど、友達がダンケルカイザラントの戦士に連れて行かれそうになったので羅夢は友達を助けるために戦って勝った。しかし山火事を起きたために、学校のみんなから非難を浴びせられた。

「......わたしが憎んでいるのは、融合闘士を糾弾する人たちじゃなく、ダンケルカイザラントの人たちでもありません。自身の浅はかさです」

 羅夢は自分なりの返事を出してガルヴェリアに伝えた。それを聞いてガルヴェリアは急にキレだして羅夢のほおを思いっきり叩いた。

「......何よそれ。ガキのくせに綺麗事ほざいているんじゃないわよ!!」

 ガルヴェリアは複眼の下の双眸を羅夢に睨みつけて、羅夢の右頬は赤く腫れていた。

「糾弾してきた人間やダンケルカイザラントの者は憎くなくて、自分の浅はかさが憎いってどういうことよ!

 十歳そこそこになれば幸福や満足、優越感だけでなく負の感情も知ることになるのよ! 憎しみ、妬み、怨み、相手を押しのけてでも勝ちたい気持ち......。嫌でもねぇ、知らぬ間に染み付いているのよ! 生まれた時から清廉潔白や無垢だといられる訳じゃないんだから!」

 ガルヴェリアは羅夢に向かって人間の心の仕組みを怒鳴るようにはやしたてた。ガルヴェリアの様子を見て羅夢は砂嵐の中にいるように感じた。体だけでなく心も動けないように......。

「......今のあんたを見ていると、子供の頃を思い出すわ。体も心も制限されていて、不幸から出たくても出られない自分を......」

「どういうことなの......?」

 羅夢の問いにガルヴェリアは語りだした。

 ガルヴェリアはエリヌセウス皇国の西北隣にある国、ベルシーヌ国の田舎町の一角に生まれた。

 母は私生児として生まれ祖母と暮らしていたが母が十五歳の頃に祖母が病死し、母はアルバイトをしながら上級学校に通うも二回落第して二十歳で卒業して酒場で働くことになった。

 母が酒場で働いて二年後に父が客として母と出会い、意気投合して結婚するも、ガルヴェリアが生まれると、母は育児だけで手一杯と言って家事はしなかった。洗濯物はたまり流し台も汚れた食器だらけで部屋は埃だらけだった。頭にきた父は離婚して父方祖父母にガルヴェリアを見てもらって稼ぎ頭になろうとしたが、父の実家は事業失敗の借金があったために離婚の時はやむを得ずガルヴェリアを母に渡した。

 ガルヴェリアが三歳の時に母はシングルマザーとなるが、母は夜は酒場で働き昼間は寝ている生活で、保育園通いのガルヴェリアは保育園から帰ってきたら母は夜出かけて朝に帰ってくるという暮らしぶりで、食事は買い置きのモグッフ(パン)やインスタントや冷凍の炒め飯などの食材ばかりで母は保育園の先生に注意されて、昼に働いて夜と翌朝は子供といるようにと言われたが、酒場での給料が高いためにやめることはなかった。

 ガルヴェリアが九歳の時に母が酒場で出会った男が母と結婚したいと申し込んできた。その男はやもめのシングルファザーでガルヴェリアよりも幼い子供をふたりも抱えており、子供たちの母親になってくれと頼んできた。

 男やもめの客は工事現場勤めで給料は酒場勤めの母より安かったが、母はその申し出を受入れた。出会って五ヶ月後にガルヴェリアの母と男やもめの客は結婚して、ガルヴェリアには妹と弟ができて、母も再婚を機に酒場勤めを辞めて市場のパート店員として働くことになった。

 だが、九歳までのガルヴェリアは母はきちんとした食事を作らず、ガルヴェリアはいっつもモグッフやインスタントなどの炭水化物ばかり食べていたため、一三.五ジルク(一三五センチ)の背丈に対し体重は平均を越えて八ドマン(四〇キロ)の肥満体となっていた。

 義父の連れ子の妹と弟はガルヴェリアを見て卑しく感じた。

「ぶっくりしたのがお姉ちゃんなんて」「太ったお姉ちゃんは嫌~」と妹と弟はガルヴェリアを見て軽蔑した。

 妹と弟になった子たちからバカにされた、と母に訴えると、母は後悔や反省するどころか開き直ってこう言ってきたのだ。

「あんたが醜いから見下されるのよ」

 更に母の再婚を理由に転校もさせられていたため、転校先では肥満体を理由に男女からいじめられていた。ガルヴェリアは痩せるために運動部、それも走ることの多い陸上部に入ってダイエットも兼ねた鍛錬を始めた。十二歳の時には十四.六ジルクの背丈に七ドマンの体重の細身になり、随分と痩せたのだった。

 だがガルヴェリアが理想の体型になって男女からもチヤホヤされだした頃に不幸が起きた。義父が職場をリストラされて母や子に暴力を振るうようになった。母は義父の暴力に耐えかねてガルヴェリアを置いて逃げ出してしまったのである。義父の暴力はエスカレートし、特に継子のガルヴェリアに辛く当たったのだった。ガルヴェリアは妹と弟には何とかマシな思いをさせようと努力して自分は少量の食事と水だけで我慢して妹弟には満足な食事をさせた。しかし学校の教師や同級生からはガルヴェリアが病人のように痩せてきていると知ると、町の教育委員会が来て、ガルヴェリアと妹弟を養護施設に保護しようとしたが、継父は「迷惑だ」と言って追い返してしまった。

 働きもせずタバコと酒に浸る継父はある夜、タバコの火を消し忘れてそのまま寝入ってしまい、居間のテーブルの灰皿に新聞紙が燃え移って大惨事になっていたのだ。まず気づいたのはガルヴェリアで継父と妹弟を起こそうとしたが、火の広がりは大きくなり、継父と妹弟は火で崩れた天井の破片の下敷きになってしまい、ガルヴェリアも意識を失った。

 気がつくとガルヴェリアは青がかった金属の天井と壁と床の部屋にいて、円状の手術台の上に寝ていたのだ。部屋の中のモニター画面には白いスクリーンにシルエットだけの人物が映り、ガルヴェリアに言った。

『私はダンケルカイザラント総帥、ダイロス。君は自宅の火災で瀕死の重傷を負っていた処、私が君を引き取り、火傷で負傷した君の体を超越した科学医療で再生させた』

 ガルヴェリアの体は急速再生皮膚組織や強化骨格などで再生されていた。

 火事で継父も妹弟を喪い、母からも逃げられたガルヴェリアだったが、自分を助けてくれたダイロスに障害忠誠を誓うこととなった――。

「あんたにはわからないでしょうね。まっとうな親や教育や環境に恵まれていて、私の十二歳までの不幸なんざ微塵ほどにも」

 ガルヴェリアは土くれで頭と手足だけでている羅夢に言った。

「食事を作らないから私は炭水化物しか食べていたから太っていじめられていたし、新しい父親はリストラぐらいでくじけるような弱い人間だったし、母は私を置いて逃げていくし、今度は妹弟のために自分は我慢してフラフラしていたんだから。

 母はいい加減過ぎて継父はロクデナシ。もう親が憎くて憎くて仕方がなかった。継父と妹弟が死んでも私の憎しみは消えない......」

 ガルヴェリアの十二歳までの生い立ちを聞いて羅夢はしばしの間沈黙した。善悪の分別を学ぶ時期に親に恵まれていない彼女が歪んでしまうのも無理はないと。

「私と同じ親のいない子供でも、まっとうな大人や教育に恵まれていればロクデナシにはならないものね。

 いつかあんたたちが訪問していた孤児院の子供をダンケルカイザラントの人材にして連れて行こうとしたら、あんたたちが邪魔してきたんだもの。孤児たちにダンケルカイザラントとしての役目と職を与えて何が悪い!?」

「......わたしは確かに働き者の父や母や祖父、聞き分けのいい弟もいて、家も織物屋と恵まれているし、糾弾されるまでは学校にも通っていたし、わたしの友達も容姿はともかく気立ての良い子で、その子も母子家庭だけど穏やかに暮らせるだけでいいと言っていました。

 でも、これだけはわかるんです。あなたは子供の頃から苦労していて、すっかり荒んだかわいそうな人だってことは」

 羅夢は自分なりの意見をガルヴェリアに伝えた。それを聞いてガルヴェリアは不快な表情をし、羅夢の体を閉じ込めている土くれに手を伸ばし、羅夢の胸ぐらをつかんで引きずり出した。途端に羅夢の体を固めていた土くれがザラザラと崩れ出す。

「そういうのは私には無駄だって言ってたでしょ!!」

 ガルヴェリアはものすごい力で羅夢を壁に叩きつけた。

「ぐあっ!!」

 叩きつけられた羅夢は床に落下する。

「母が逃げて継父も妹弟も死んで、ダンケルカイザラントに属することになったとはいえ、天涯孤独になった私はせいせいしたわ。

 家族とか友達とか〈情〉に絡むものはかえって私が不幸になるんだって。

 今の私にあるのはダイロス様への忠義だけ。

 今まで邪魔をしてきたあんたはここでくたばってもらおうか」

 そう言ってガルヴェリアは両手の全ての指を羅夢に向けてきた。羅夢は目を見張り、更にかすかな甘い匂いをかいだ。ガルヴェリアの指先から白い酸が泡のように出ており、羅夢とジュビルムを倒すための蟲酸だとわかった。

「融合獣もくたばったら契合石だけいただくわ。ダンケルカイザラント融合獣の資源としてね」

 ガルヴェリアが一歩一歩羅夢に近づいてくる。

(もうこの人にどんなに優しくて温かい言葉や気持ちを伝えてもわかってくれないんだ。ダンケルカイザラントの人たちって最初から悪かった訳じゃないことは今ようやく知れたのに......)

 羅夢はそう思って起き上がろうとしたが、ガルヴェリアの歪んだ理由を知ったためかそれとも強く叩きつけられたためか両脚が動けなかった。

「それじゃあね」

 ガルヴェリアが酸の浮く手を羅夢に向けたその時だった。

(ここで終わらせたくない......)

 羅夢の体が曙のように淡いピンク色の光を発し、ガルヴェリアはその眩しさに思わず羅夢から飛び避けるように離れた。

「ぬあっ!!」

 オーロラピンクの光がおさまると超変化を遂げた羅夢が現れたのだ。

 桃色の体に白い部分が入り、金色の縁も入った耳長尾長の融合闘士姿である。

「これが超変化を遂げたという融合闘士の姿......! この目で見るのは初めてだわ。どうせなら、超変化の融合闘士をダイロス様の元へ献上しよう!」

 ガルヴェリアは超変化態の羅夢を目にし、威圧を感じながらも羅夢と戦ってダイロスに捧げることにした。

 ガルヴェリアは両手に大地エネルギーを込めて壁に手を当てて羅夢の頭上に土砂をいくつも出してくる。

土壌埋撃・斜崩(グランドゥーム・フラッド)!!」

 しかし超変化を遂げた羅夢はガルヴェリアが出してきた土砂を一つ二つと素早く避けていき、反復幅跳びのように動く。土砂を六つ避けたところで羅夢の真上に七つ目の土砂が落下してきた。

「羅夢、まずいです!!」

 羅夢と一体化しているジュビルムが羅夢に言ってくる。しかし羅夢は掌から白い三日月型の花びらを出してくる。

水蓮花弁・凍(ブルーメンボンバティエ・フリューゲ)!!」

 三日月状の白い花びらの舞がガルヴェリアの出してきた土砂を瞬時を凍らせて、カチコチに凍った土砂がパリーンと砕けて散った。

「......超変化をしたら他の属性技も使えるとはね」

 ガルヴェリアが羅夢の放った技を見て仰天する。

「次は地面からにしようか」

「それもそうね、レノアリス」

 レノアリスがガルヴェリアと相談する。

大地壊牢閉・双(グランドゥーム・ツインプリズナー)!!」

 ガルヴェリアが大地エネルギーを両手に込めて地面に当てると、羅夢の立っている場所の前後に土くれの壁が出てきて、羅夢はその中に閉じ込められる。

「天井まで塞がれていて、出られない!!」

 羅夢は目の当たりの状態を見て立ち止まる。更にガルヴェリアは両手を交差させて土くれの壁を動かす。羅夢を閉じ込めている二つの壁が彼女に迫ってくる。

 ズシャアン、と二つの壁がぶつかり合って茶色い土煙が周囲に漂う。

「くくくっ、これで超変化態でも倒れるはずだ」

 ガルヴェリアが土くれの壁に挟まれた羅夢を見て高笑いする。しかし羅夢は無事だった。数多蔓壁(ヴァンティンス・ウォール)の強化版で自分自身を防いでいたのだ。それは羅夢自身が一本の樹になって土くれの壁による衝撃を防いだのだった。

「なっ、何っ......!?」

「自分自身を樹に変えるとは......」

 ガルヴェリアとレノアリスも驚き、桃色の花を無数につけた樹に変化した羅夢は枝を両腕、根を両脚、幹を胴体、頂きを頭部に戻してガルヴェリアに見せる。

大樹転化(バームフォーゼス)

 超変化で今までになかった技を出してくる羅夢を見て、ガルヴェリアはカタカタと震えて羅夢に向けて技を出してきた。

「ぐ、土壌埋撃・斜崩(グランドゥーム・フラッド)!!」

 ガルヴェリアは羅夢に狙って土砂崩れを出してくるが、外しまくっていた。羅夢が素早い動きで避けているからではない。ガルヴェリアが気を取り乱していたからだ。

「ガルヴェリア、気を確かにしろ!ダンケルカイザラントの幹部がこんな年端もいかない小娘に怯えるなんて......!」

 レノアリスがガルヴェリアに呼びかけるが、ガルヴェリアは無茶苦茶に技を出していた。

 そして羅夢が先ほどとは異なる花びらの舞を手から出してきた。

紫陽花爆弁・雨嵐(ブルーメンボンバティエ・シュトゥルム)!!」

 薄紫色の小花を集めたような花びらが出てきて、渦の雨がガルヴェリアに向けられる。集中豪雨が水の連弾を放ってきたのだ。

「うぬああああ......!!」

 羅夢が出してきた花の集中豪雨を受けて、ガルヴェリアは勢いよく押し出されて壁に叩きつけられた。

 豪雨がおさまり辺りは水浸しになるも、羅夢はハァハァ息をしながらも幹部の一人を押しのけたことを確認する。

「!!」

 羅夢の攻撃を受けてずぶ濡れになったガルヴェリアは羅夢を見ると取り乱した。

「いやぁ、来ないで!!」

 ガルヴェリアは叫んだ。ガルヴェリアと融合しているレノアリスが彼女に言う。

「落ち着かないか、あの子は何もしていない」

 レノアリスの言葉でガルヴェリアはハッとなって顔を見上げると羅夢はジュビルムと融合したまま立っていた。

「何故、何もしない?」

 ガルヴェリアが尋ねると羅夢は笑いながら言った。

「例えエリヌセウスの国に波乱を起こしたり、怪獣を操って騒ぎを出しまくっていたあなたでも、生きている人間を傷つけるのはもう......」

「罪を償えっての? 無理よ。私は十二歳の頃からダンケルカイザラントにいてダイロス様に背いて罪を償うなんて出来ないのよ。

 わかるでしょ、娑婆で生きてきたあなたなら......」

 ガルヴェリアは刺すような視線を羅夢に向ける。そして土くれで体を包むと、融合を解除してレノアリスと分離して赤胴色のレオタードにオレンジ色の長髪の姿になった。

「何で融合を?」

「ダンケルカイザラントはダンケルカイザラントで生きて動いて従って死ぬしかないのよ。

 私は罪の償いからなんで知らないし、新しい人生をつかもうという気持ちもない。......だけど融合獣は見逃してやってほしい」

 ガルヴェリアはそう言うと、懐から小さな黄色い液体入りの小瓶を出して蓋を開けて口に入れて飲み干した。

「ぐっ!!」

「ガルヴェリアさん!?」

 羅夢はガルヴェリアが飲んだ液体が毒だとわかった。いつも花香液を作っていたから毒の匂いもわかっていた。ガルヴェリアは毒を飲むと口から血を吐き出し、痙攣を起こす。羅夢はそれを見て何とかしようとしたが、あまりにも突然すぎたためにパニックになる。

「私はもうここで終わりにする......。ダイロス様の忠臣のままで......。あとそれと......、私が普通に生きていたなら、お前とは違う関係になっていたかもな......」

 そう言ってガルヴェリアは事切れた。

「羅夢......」

 ジュビルムが話しかけると羅夢は悲しみをこらえる。

「......行かなきゃ。ジュナさんたちと合流しなくちゃ......」

 羅夢は息絶えたガルヴェリアと気を失っているレノアリスを見てからきびすを返して、ジュナたちに追いつくために通路を進んだ。

 しかし、二〇〇ゼタン進んだ先の通路で羅夢の体に負担がのしかかってきて、ジュビルムとの融合も解けて、床に倒れる。

「羅夢......!」

 ジュビルムが羅夢の体を支える。

「もう、無理......! 悔しいけど、ジュナさんたちに委ねるしか......」

 羅夢はまぶたを閉ざし、通路の壁によっかかる。ジュビルムが出来ることは、羅夢のそばにいることと、先にダイロスの元へ行った者たちの無事を祈ることだった。