フューザー6-6


 グレータ=キマイラスとの戦い


 ダンケルカイザラントの首領、ダイロスが人間の体を捨てて、最凶最悪の怪物、グレータ=キマイラスとなって現れたのを目にするジュナと兄レシル、そして彼らの融合獣たちは呆然となる。

「思い出せよ、ジュナ。随分前にも適応者のいない融合獣の契合石を狙ってきた奴もそうだっただろ? 

あいつだって自分の子孫と偽って自身のクローン人間を適応者にして、本人は融合獣になって二〇〇年前の融合獣の創造主が、よ......」

 ラグドラグに促されてジュナは思い出した・

「テナイという人と、その融合獣......!」

 テナイという名の男は先祖が犯した罪の始末を名目に、融合獣の命ともいえる契合石を奪っていたことも思い出す。

「テナイか? ああ、貴様に倒されたあやつか......。テナイは私の仲間だ」

「!!」

 ジュナとラグドラグはそれを聞いて仰天する。融合獣の契合石を奪っていたテナイはダンケルカイザラントの一員だったのを。グレータ=キマイラスは言い続ける。

「テナイは自分の命を融合獣に変え、自身のクローンを子孫として偽ってダンケルカイザラントに仕えてきた。

 私とテナイは融合獣の創始者で、融合獣の性格と理性にして戦争で負傷したアルイヴィーナ人を使って融合獣を生み出してきた。

 テナイは人体実験として負傷者を利用してきた罪で政府に逮捕される前に嘘の自死を遂げて二〇〇年間、世間の目を欺いてきた。

 そして私、ダイロスは失脚に成功し、後のエリヌセウスとなる地で妻を娶った。

 しかし妻は不治の病におかされ、私は妻を融合獣にして余生を共にしようと思ったが、自然生命の人間と人工生命の融合獣では命に差があるため、別の方法で妻を治そうとしたが、結局妻は死んだ。

 妻を喪い、政府に捕まるのも問題だと思った私は妻と暮らした地に地下都市があるのを見つけ、それが今のアルイヴィーナ人が現れる前の人種の住処と知ると、そこに暮らすことにした。そして発見した。

 契合石の素となる共鳴石(リンカイト)は古代アルイヴィーナ人の骨の化石で、しかも他の生物と融合することで別の姿になれるという記録を。共鳴石はただの不思議な石ではなかったことも」

 グレータ=キマイラスの話を聞いてジュナとレシルは呆気に取られてしまうも、ある一つの説が浮かんで聞いてきた。

「じゃあ、このダンケルカイザラントの本拠地って、フェズナーの都市を改造したの!?」

 ジュナが言うと、グレータ=キマイラスは答える。

「その通りだ。私はこのフェズナーの地下都市に国を造り、ダンケルカイザラントを設立した。私はテナイと再会し、何十年もかけて拡大させていった。

 そして人材として孤児や浮浪者、身寄りのない身体障害者を集めていき、より優れている者を融合闘士にし、弱者にはダンケルカイザラントに従うプログラミングを施した融合獣に変えていった」

 その話を聞いてジュナとレシルはますます信じられないと思った。

「そして所属兵士として機械兵インスタノイド、侵略用の人工生物としてブレンダニマを生み出していた。

 だが、お前たちによって完成していったブレンダニマは倒されていき、ダンケルカイザラントのアルイヴィーナ征服は遅延されていった。いわば、お前たちは駆除の異分子。

 最強で最高の生命体となった私が倒してくれようぞ!」

 ダイロスことグレータ=キマイラスはジュナとレシルに戦いを挑む。

「行くぞ、ジュナ」

 レシルがジュナに言う。

「うん......!」

 二人の融合闘士は契合石に手を当てて、ジュナは剣を出し、レシルは騎槍(ランス)を取り出して右手に持つ。

(この戦いが終われば、わたしとラグドラグはママの元へ帰れる。そしてお兄ちゃんも連れて帰ってママに見せるんだ! ママ、パパはもういないけど、お兄ちゃんは生きてたんだよ、って)

 そう思いながらジュナはグレータ=キマイラスに剣先を向ける。レシルは背中の翼を羽ばたかせて、騎槍(ランス)の先から白金色の光を出して、それが細い帯状となってグレータ=キマイラスに向けて飛ばした。レシルが飛ばした光の帯はグレータ=キマイラスの鳥の嘴に絡みつく。

「フン、光属性か。光は確かほかの属しえと比べて威力は高い。だが......」

 キマイラスの獣の顔が言うと魚の顔がレシルの方へ口を大きく開けて口の中から仄青いものを出してきた。一瞬キラッと光ったかと思うと、それは無数の氷柱だった。

「ハッ!?」

 レシルはキマイラスの魚の口から氷柱が飛ばされてくるのを察すると、急いで横に避けた。氷柱はレシルが出した光の帯をかき消して、氷柱は壁に当たって砕ける。

「今のは氷属性の技......。光の融合獣は氷に弱いのを知って出してきたんだ!」

 ジュナがそれを見て呟く。

「氷だけではないぞ」

 キマイラスが脚を強く踏むと、床からいくつものの岩の杭が出てきて、ジュナは串刺しになるのを恐れて高く跳躍する。

「今度は大地属性......。融合獣って一体につき一つの属性しか持てないのに......」

 ジュナは背中の翼を羽ばたかせて、グレータ=キマイラスの攻撃を目にして呟く。

「他にも出せるぞ」

 そう言ってグレータ=キマイラスは鳥の嘴から一条の炎を出してくる。キマイラスの鳥の口から出された炎は鮮血のような赤をしており、ジュナは瞬時にして彗星防壁(コメットバリアー)を出して防御した。炎攻撃からは免れたが彗星防壁(コメットバリアー)が砕けて消えた。

「お熱いのは嫌いだったか」

 そう言ってグレータ=キマイラスは魚の尾ひれに水気をためて、キマイラスが尾を振ると、三日月状の水の斬撃が放たれた。

「危ないっ!」

 水の斬撃はジュナとレシルの方へ放たれ、二人は左右に避けて、水の斬撃は壁に当たって弾けたかと思うと、壁に垂直の亀裂が入った。

「......っ!」

 ジュナはグレータ=キマイラスの水の攻撃を見てゾッとする。

「熱いもの嫌、冷たいのも嫌、だったらこれでも喰らうがいい」

 そう言ってグレータ=キマイラスは後ろの脚の蹴爪をジュナとレシルに向けて左後ろ脚を振り下ろす。すると突風が出てきて二人は後方の壁に強打する。

「ぐっ!!」

 壁に叩きつけられたジュナ兄妹は地面に落下する。

「うう......。まるで、一度に十二人の融合闘士と戦っているみたいで強い......」

 ジュナが起き上がって言う。

「十二人の融合闘士の方がまだ易しいぜ。ダイロスは全属性の融合獣の能力だけでなく、ブレンダニマやインスタノイドの力も持っているんだから」

 ジュナと融合しているラグドラグが言った。

「それにしても来てもいいはずのジュナの仲間たちが来ないことはどういうことか?」

 レシルと融合しているペガシオルがその様子に気づいた。

「まさか、ユリアスたちと相討ちになって......」

 レシルが言うと、ジュナはぐわん、とショックを受けた。

「そんな......嘘でしょ......」

 ジュナはへなへなと崩れ落ちて、両手を地面に着けた。

「仲間を犠牲にするから。こうなったのだぞ。愛だの友情だの下らぬ感情を持つと、食い違いが起こるというのに......」

 キマイラスがジュナを追い詰めるように言う。

「ちょっと待て。ダイロスだって今の姿になる前は奥さんがいたし、ユリアスたち部下はお前を慕っていただろ? お前だって奥さんに対する愛情もあったし、部下への信頼もあるんじゃないのか? それとも人間の体を捨てたから、人間の感情も捨てたとうのか?」

 レシルがキマイラスことダイロスの台詞の矛盾を定めるように言った。レシルに言われてキマイラスは一瞬沈黙した後、獣の口から言葉を発した。

「妻のことは確かに愛していた。妻が死した時は自分も死のうと考えたが、考え直した。妻との思い出の品を整理している時に融合獣の研究資料がまだ残っていたのを機に、私は自分が何者かとして知り、またその役目を務めることを人生とし、資料の中の仮説としてあった『リンカイトは超越人種の化石』の説を知るために、土を掘った。そして本当にあったのだ。アルイヴィーナの旧文明だな。

 そして私は決めた。アルイヴィーナを不老と長命の世界にして、私がアルイヴィーナの支配者になると。そのためには不老不死の融合獣が必要で、その手駒として私は自分の部下となる融合獣を創造したのだ」

 キマイラスは自分の野望を語り、レシルは呆気にとられる。

(この男、狂っている......)

 彼の何がどう変わってしまったのかは難しいと思ったが、尋常ではないと思った。

(エルニオ、トリスさん、羅夢、ツァリーナ、ソーダーズ、ジュビルム......。みんな、本当に相討ちになったの? 全員で自分の家に帰ろう、って決めたのに......)

 ジュナは座り込んで仲間たちが来ないのは、幹部と相討ちになってしまったからではないかと大きく信じて座り込んでしまった。

「......なぁ、ジュナ。ふと思ったんだがよ、もし適応者が来なかったら、ツァリーナたちはここに来るんじゃないのか? よく考えろよ。みんながここに来ないのは。適応者は生きているけど、ケガや疲れで動けない状態であったら、融合獣は付き添っているはずだ。

 融合獣と適応者は契合石でつながっているんだぜ? 適応者の中の契合石は融合獣は離れるんじゃないのか?」

 それを聞いてジュナは気づいた。ラグドラグの言っていることが正しければ、人間の適応者と融合獣は離れる、いわば二つに分かれた契合石は違う極の磁石のようなもので、今の適応者が生きている限り融合獣はそばにいることになるのだ。

「それじゃあみんなは......」

「生きているけど、動けなくなったんだ。だからいつまで経っても......」

 それを聞いてジュナはやる気が出てきた。

「うん、わたし、みんなのことを信じるよ」

 グレータ=キマイラスはレシルに攻撃を向けていた。キマイラスは前脚に黄金色の光をまとわせ、それがパチパチ鳴っていると、レシルとペガシオルはそれが電気だと気づくと、騎槍(ランス)から六角形の白金の光の盾を出す。

白金光防盾(プラチネイル・シルト)

 グレータ=キマイラスは前脚を突き出して二本の電流がレシルに向けられて放たれる。レシルは光の盾で電撃を防いだが、キマイラスの方が強く押されてしまい、光の盾が砕けてレシルは電撃を喰らってしまう。

「うおあああ!!」

 数百万ボルトの電撃がレシルとペガシオルを容赦なく攻める。キマイラスの電撃を受けたレシルは地面に倒れてしまう。

「お兄ちゃん! ペガシオルさん!」

 ジュナは電撃を喰らって感電しているレシルに駆け寄る。

「か、体が痺れて......」

 レシルは起き上がろうとすると、強力な電撃を受けたためか上半身を起こすだけで精一杯だった。

「ここからはわたしとラグドラグがやるから」

 そう言ってジュナは背中の翼を羽ばたかせてグレータ=キマイラスの前に現れる。

「仲間を切り捨てたお前が私に立ち向かうとは......、おかしな話だ」

 キマイラスはニヤリと笑ってジュナを嘲る。

「わたしはみんなが生きているということを信じている! この戦いを終わらせて、お兄ちゃんも連れて帰って、家に戻ると決めたんだ!!」

 それを聞いてキマイラスは背中の毒蛾の翅を大きくひと振りで動かし、そこから出た鱗粉が形を変えて、無数の先の尖った木や竹の枝に変わり、ジュナを四方八方から串刺しにしようと放つ。

「ははははは! 戯言もここまでだ!!」

 ジュナのからだに無数の枝が向けられていく。

(わたしは負けない。みんなは生きている。そして、ここを出る!!)

 地面に伏していたレシルがジュナの危機を見て叫んだ。

「ジュナ~ッ!!」

 その時だった。ジュナの体が白銀に光って、一瞬眩しくなったかと思うと、ジュナは超変化を遂げていたのだ。

超変化を遂げたジュナは白竜の頭部・翼・尾・脚・爪の部分に金色のディティルが走り、頭部の角が四本になり四肢の爪先は金色になり、白銀と黄金、どちらも最高の金属を持ったような姿になっていた。

 レシルとペガシオルは眩しさのあまり腕で目を押さえるも、光が止むと超変化を遂げたジュナを目にし、ジュナは向けられた木や竹の枝は激光によって弾かれて地面に散らばっていた。

「ジュナ......、超変化態になったか......。僕がダンケルカイザラントにいる間に偶然目にした石のテキストの記述が本当で、しかも超変化の可能性をジュナと仲間たちに委ねたのは正解だった......」

 レシルは呟いた。レシルはダンケルカイザラントにいる間にテナイが見つけた石版、ジュナが持っているものと同じ記憶石(メモリタイト)の欠片に刻まれていた言葉を思い出していた。

『フェズナー、自身の体を他生物と一体になり、その力を自身のものとす。

 他生物と融合したフェズナー、その力に覚醒した者、超変化者といわれ、通常以上の力を得る。超変化者、王としての資格を与えられる』

 それがダイロスたちが手に入れた古代アルイヴィーナ人のフェズナーの情報であった。

「また、なれた......」 超変化したジュナは自身の姿を見て呟く。

「ああ、昨夜に続いて二度もか......。俺も感じる」

 ジュナと融合しているラグドラグも今までの力の感じ方を伝えた。

「ううう、目が、目が見えん......」

 グレータ=キマイラスは超変化した時の光で目が見えなくなっていた。なにせ複数の生物の能力と頭部を持っているため、目の数だけ眩しく感じていた。

 ジュナは両手を包み込むようにして白い星型の結晶弾、竜晶星落速(クリスタルスターダスト)を放ち、弾丸のような結晶弾はグレータ=キマイラスの顔と胴体に浴びせられる。

「ぐおおお......」

 ジュナの攻撃を受けたキマイラスはまだ目が見えないため、気配と勘で頼って反撃した。キマイラスは爬虫類の頭部から二又に分かれた舌先を伸ばしてきて更に金属のように硬化させてジュナを貫こうとした。

「危ない!」

 レシルが叫び、ジュナは気配を感じて前よりも強力な彗星防壁を出してキマイラスの攻撃を防いだ。キマイラスの舌の槍はジュナの出したバリアに跳ね返され、硬化がと解けて元の舌に戻る。ジュナは続いて左手から流星のような金色の竜のエネルギー波を出してきた。

昇竜天星閃(ティンクル・スターパクル)!!」

 ジュナが放った竜型のエネルギー波は上昇して天井近くまで昇り、そこで五方に散ってキマイラスに降り注いだ。

「ぬおおおおっ!!」

 その時の攻撃でキマイラスの魚の顔の左目が潰れて濃い紅の血が滴った。

「おのれぇ......、だったらコレを喰らうがいい!」

 キマイラスは四肢に青白い光をまとい、一回転して、青白い光の波動を放ってきた。

ジュナは驚きも慌てもせず、胸の契合石に手を当てて白銀の刀身に紺と白の柄のひと振りの剣を出して、星の力を込めて刃が金色の光を放つ。

創生竜斬刃(ティアマート・インパルス)!!」

 ジュナは剣を横一文字に回転させて、キマイラスが出した波動を真っ二つにして斬り、キマイラスの青白い光は粉々になって散った。

「ならばこれでどうだ!?」

 キマイラスの獣と鳥と魚と爬虫類の口から超音波が発せられ、壁や床や天井が殴ったように凹んだ。

「うわあっ」

 ジュナも流石にこの攻撃で耳を塞ぎ、更に音波と声の二重の攻撃がジュナに当たって壁に叩きつけられる。

「ぐっ!!」

 ジュナの様子を目にして、キマイラスはほくそ笑む。

「今のうちに倒しておかなければ」

 キマイラスは尾と翅を上にして、翅と尾の間にどす黒い闇のエネルギー弾を浮かび上がらせる。

「ここで終わりだ!!」

 ジュナに闇の攻撃を放ったキマイラス。ジュナは追い詰められたかと思うと、ジュナの前に電撃から回復したレシルが現れ、騎槍を直角にして、翼の契合石に力を込めて、角型と白金の光の波動が発した。

一角双翼烈光(トライアン・ルミエーロ)!!」

 レシルの出した攻撃でキマイラスが出した闇のエネルギー弾は霧散して吹き飛んだ。

「お兄ちゃん!」

「平気か?」

 ジュナとラグドラグがレシルとペガシオルに尋ねる。

「ああ、ようやく動けるようになったよ」

「大丈夫ですよ。さぁ、一組より二組です」

 ジュナとレシルは空中を飛ぶ。

「こしゃくな......」

 グレータ=キマイラスは起き上がり、ジュナとレシルに攻撃を仕掛けてくる。四つの頭が唸り、キマイラスの周囲に赤や青や緑などの十二色の玉が浮かび上がり、それらが爆ぜて二人は後方へ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

「うわぁっ!!」

「うはははは。無属性にして最強最大の技、十二全攻玉(ツェルブエクスプロード)だ。私こそが無敵、最強にして最高の存在だ。後はお前たちの息の根を止めるだけだ」

 キマイラスが意気揚々になっているとジュナとレシルがふらつきながらも起き上がる。

「まだ立てるのか、しぶとい奴め」

 キマイラスは鼻で笑うが、兄妹は向かって叫んだ。

「わたしたちはね......、負けられないのよ。ダイロス、あなたを倒すまでは!」

「そうだ......。今ここでお前たちの野望を止めるんだ!」

 二人の様子を見て、キマイラスは嘲笑った。

「ははははは! 痴れ者め!!」

 グレータ=キマイラスは十二色の玉を出して再び十二全攻玉(ツェルブエクスプロード)を放とうとしてきた。しかし、その隙を利用されて、レシルは騎槍から光の帯を出してきて、キマイラスの前脚を縛った。

「こしゃくな!」

 キマイラスは前脚を回して、レシルを振り回した。レシルは振り子よりも激しく回されるが。ジュナが飛び出していった。ジュナは剣の先をキマイラスに向けて、剣から無数の金色の流星を放ち、流星がキマイラスの顔に当たった。

流星群拡散輝(メテオルガナイブライト)!!」

 超変化を遂げたジュナの攻撃は今まで以上よりも高く、キマイラスは両眼が潰れぬようにと瞼を全て閉ざした。その時、片目だけ潰れていなかった魚の目がジュナに視線を向け、ジュナが剣先をどこに向けているかに気づいたのだ。

 キマイラスはレシルを振り回している前脚の爪先でジュナを斬り裂こうとしたが、ジュナの剣はキマイラスの胸の契合石に当たり、ジュナはひと思いにキマイラスの契合石を貫き、黒地に虹色の契合石は砕けたのだ。

「ぐっ......うおおおおお!!」

 獣の雄叫びとも人間の唸り声ともわからない声が司令室内に響き渡った。

 キマイラスは大きく横倒れし、大きな衝撃音をと共に揺れた。キマイラスが倒れたことでレシルは光の帯を解除して、空中で回転してから着地をする。

「契合石は融合獣の命......。ダイロスは自分を溶かして改造合成融合獣になって能力は強かったが、契合石が唯一の弱点になってしまった。ジュナはそこを狙ったんだ」

 レシルは呟いた。

「やった......。倒せ......」

 ジュナは最後にして、最大最強の敵、ダイロスことグレータ=キマイラスの最期を見て呟き、真っ逆さまに落下した。

「ジュナッ!!」

 レシルが落下するジュナを受け止め、受け止めた衝撃でレシルも落ちかけるも、ジュナは助かった。

「ジュナ?」

 レシルはジュナの様子を見て意識がないことに気づく。

「まさか......」

 レシルは不安になって一旦地面に降りる。むき出しの人間の肌になっている首筋に手をやると、ジュナの脈はあった。

「生きていた......」

 レシルが安堵していると、ジュナの体が一瞬光ったかと思うと、融合獣ラグドラグとジュナに分かれる。

「ジュナは超変化の代償で体力を大方浪費したんだ。休ませてやれよ」

 ラグドラグがレシルに言った。

「そ、そうだったな。ジュナ、ゆっくりお休みな。みんなを連れて帰るのはその後だ」

 レシルがジュナの頭を撫でた。

 ジュナは夢を見ていた。兄と一緒に家を出て学校に行き、通学途中でエルニオと羅夢とトリスティスと出会い、ダイナとラヴィエと授業を受け、夜は母と兄とラグドラグとペガシオルと作りたての夕飯を食べる――。

 これが永遠といわず、長く続いて欲しいと願った。