一次創作小説メイン、SF大好きな人には必見!

フューザー7ー4



 四年前の因縁

 

 朝食の時間でジュナとラグドラグ、他の大皇候補とその融合獣と共にホールでトーストしたモグッフをかじって、次に狙われるのは誰かとふけっていた。

(最初にファロさん、次にケティとマエラさんとヴィティニーくん、次の次がラーズさん。ラーズさんは適応者で深流族の融合獣がそばにいた。ラーズさんは窓から入ってきた矢による毒、ケティたちは食事のポット、ファロさんは室内にいたら昏睡状態に......。

 念の為手荷物検査をさせられたけど、誰も毒薬を持っていなかったし......)

 ジュナは昨夜ホールに行く途中、ロイシュマスから手荷物の検査を受け、毒物や怪しい道具を持っていないか調べを受けた。

(そういえば、真っ先に疑われたの、ってボーガさんだよなぁ......)

 ジュナは簡易テーブルの真向かいに座るボーガに顔を向ける。ボーガの隣にはジャーバン、テーブルの脇には彼らの融合獣が適応者からモグッフの切れ端や果物を分け与えてもらっていた。

 ボーガの融合獣は堅鱗族のヴァイペノといって、長さが五〇ジルクもある大蛇型の融合獣で体は炭灰色(チャコールグレイ)で所々に炎色の鱗があり、眼は鋭く薄黄色で人間でいうとこのうなじのあたりに薄黄色の契合石が浮かんでいた。

(ヴァイペノが大蛇型でしかも毒を使ってくるなんて、警察としては安易かな~)

 ホールには出入り口に二人、今食事中のテーブル近くに三人の警備員と警官がいるため、ガードが固すぎる状態であった。

 食事が終わると、大皇候補会議に出席しようと四組で廊下を歩いて移動した。他の大皇候補が入院したため、会議室はより広く感じた。やはり会議室でも出入り口の外と中に一人ずつ、会議室内でも三人の見張りが立っていた。しかも室内の見張りの一人はロイシュマスだ。

 昨日おとといとエリヌセウス国内の問題について討論していると、ノック音が鳴り中に警察官が一人入ってくる。

「警部、失礼します」

「ん? 何事だ?」

 警察官が一人会議室に入ってきたことに気になったジュナだが、会議は続けた。

「病院に運ばれた大皇候補五人に盛られた毒薬の種類がわかりました」

「そうか。で、何ていう毒でどこで入手されたものだ?」

「はい。ファロ=エッダの場合は睡眠薬に使われるピフィウムで鼻腔と口唇の周りに付着していただけでなく、首から上にも付いておりました。

 食事の茶で食あたりを起こした三人はアキーダニウム......毒キノコなどの危険物を吐き出すための薬ですが、大量に摂取すると食あたりと同じ症状を起こします。

 ラーズ=クェーパーの肩に刺さった串の毒はジロウム......麻酔剤の一種です」

 警察官は報告書のタブレットを読み上げながらロイシュマスに伝える。

「あとですね、現在残っている大皇候補の中にある経歴を持つ者がおりまして、それがその......」

 警察官は小声でロイシュマスに伝えると、ロイシュマスはそれを聞いて、口元を釣り上げる。

「そうか、やはり彼奴が......」

 警察官からの情報を聞いたロイシュマスはつかつかと一人の大皇候補の席に歩み寄る。

「な、何だよ......」

 ロイシュマスが自分の方へ来た大皇候補が尋ねてくる。

「一緒に来てもらおうか、ボーガ=マゲーサ」

 ロイシュマスがガムリッサ地方出身のボーガ=マゲーサに声をかけてきたのだ。

「え!? あなたの仕業なの?」

「でも一度疑われたときは見逃してもらえたんじゃ......」

 ハルノとジャーバンがロイシュマスとボーガのやり取りを見て思い出す。

「ちょっと待ってください! ボーガさんを一度までならず、二度も疑うなんて......」

 ジュナが席から立ち上がってロイシュマスを止めた。

「そ、そうですよ! 最初の時は証拠がなかったんですよ!?」

キュイン宰相たち大臣がロイシュマスに言った。しかしロイシュマスは続ける。

「はい。確かに最初の時は毒蛇型融合獣を率いているから、という理由で疑いました。ですが、本人の口から出さなくても証拠はありました。ボーガ=マゲーサは現学歴はガムリッサ商業大学経済学部の在籍で一見薬学や理学とは関係のない科目を習っているようですが、一年前の秋にある資格の検定を受けてしかも一発合格で取得したということにたどり着きました」

「その資格って?」

 ハルノがロイシュマスに聞いてくる。

「世界毒剤検定です」

「ど、どくざいけんてい!?」

 会議室にいる一同が声を揃えて出す。

「世界毒剤検定は主に生物学者や薬剤師や特定の医師志望の人には有利な資格。一般人でも取れることは出来ますが、かなりの努力が必要とされます。

 去年受験したエリヌセウス国民一五〇人の中で七五人が合格し、三人が一般人で、エリヌセウス世界資格センターによれば、それがボーガ=マゲーサだったというワケです」

 ロイシュマスが情報を語ると、ボーガとヴァイペノは頑な表情のまま何も言わない。

「でも、どうやってファロさんを昏睡状態にする毒をまいたり、ティーポットの中に適応者でない人に食あたりの毒を飲ませたんだ!?」

 ジャーバンがそれを知りたくて尋ねようとしたところ、ロイシュマスと同行していた警官たちがボーガとヴァイペノに近づく。

「それは署でゆっくりと......」

 その時、ボーガは立ち上がって近くにいた女性大臣を拘束し、ヴァイペノが大臣を縛る。

「ヒイイッ」

 女性大臣は大蛇型融合獣に巻き付かれた恐怖で悲鳴を上げた。

「これ以上近づくな。近づいたらこの女に死毒を与える」

「し、死毒!?」

 それを聞いて場にいた者たちは引いた。

「や、辞めるんだ! こんなことをしてまで大皇になろうとするなんて......」

 キュイン宰相がボーガを止めようとしたが、ボーガは冷めた目つきで睨みつけてくる。

「何を言っているんだ。俺は大皇になりたいがために他の大皇候補に毒をまいたんじゃない。そこにいる女への復讐だ」

 ボーガは視線をジュナに移し、ジュナはそれを聞いて青ざめる。

「ふ、復讐だと!?」

「あなたはダンケルカイザラントの生き残りで、ダイロスの忠誠者......!?」

 ラグドラグが疑問に思い、ジュナは怯える。

「ダンケルカイザラントじゃない......。俺は四年前にお前に倒されたセトリス=ディランの従兄弟だ」

「え......!?」

 ジュナとラグドラグはそれを聞いて思い出す。それはジュナたちがダンケルカイザラントの存在を知る数ヶ月前、エルネシア地方内で炎熱を使う宝石連続強盗の事件があった。

 ジュナの通う学校でも話題になり、ジュナとラグドラグは次のターゲットとおぼしきビルでセトリス=ディランとその融合獣、ザマドールと対面した。

 しかしセトリスは融合獣のザマドールを道具扱いしたために不具合が出てしまい、ジュナとラグドラグに敗北し、適応者の犯罪者、融合暴徒(フューザーリオター)として逮捕された。

「セトリスはろくでもない人間でも、俺にとっては大事な従兄弟で、両親を一度に事故で亡くした俺の面倒を見てくれたんだ! 俺はセトリスが捕まる一年前に里子に出されて、平凡に暮らしていたが、セトリスを倒した奴を見つけるために、毒材を研究学習してきたんだ!

 二年前の夏に里親が肺病で亡くなって、里親と融合してたヴァイペノの適応者となってお前に復讐するためにお前と対面するのを待っていたんだ!」

 ボーガはこれまでの経歴を淡々と話した後も、更に続ける。

「俺がセトリスを逮捕に追い詰めた奴を見つけて復讐をしようとしたのは里親が亡くなってから三ヶ月後のことだった。俺は素性を隠して匿名を使い、セトリスのいる刑務所に行って面会してきた。セトリスは話してくれたよ。お前らのことを。

 俺は大学受験や薬剤検定の勉強をしながら、サイバネットでお前らのことを調べた。そしたら融合闘士格闘大会(フューザーソルジャーコロッセオ)のチャンピオンになっていた画像があったのを。

 いつかはエルネシアに行こうと考えていたが、こんな形で会えるとはな......」

 クククッ、とボーガは喉を震わせた。

「俺が他の大皇候補を消していったのは、ジュナ。お前以外の奴らが消えていくという恐怖を体験させるためさ......」

 ボーガの発言を聞いて、ジャーバンとハルノ、彼らの融合獣は自分たちもいずれはボーガとヴァイペノに毒気をさらされていたかもしれないと戦慄を感じた。ジュナとラグドラグも身震いしつつも、立ち尽くしていた。

「ジュナ、ここで決めようじゃないか」

 ボーガがジュナに話を持ちかけてきた。

「俺と戦って、お前が勝ったら俺は潔くお縄にかけられよう。だが、俺が勝ったら......」

 ジュナはそれを聞いて、足を一歩前に出す。

「わかったわ。あなたとの戦い、引き受けるわ......」

「ジュ、ジュナ!」

 ラグドラグが止めようとしたが、ジュナは真剣な顔をして言った。

「わたしと融合していても、ラグドラグの再生能力がどこまでもつか、......だよね。でも引く訳にはいかないから......」

 ラグドラグとジュナ、ボーガとヴァイペノは会館の中庭に出て、キュイン宰相や他の大臣、ジャーバンやハルノ、メイドや執事、ロイシュマスたち警察が見守る中、二組は向かい合わせに立つ。ヴァイペノによって人質にされていた女性大臣は失神していたが、命に別状はなかった。

 中庭は噴水や東屋や花壇のある表の庭園と違い、芝生と石のベンチがあるだけの殺風景なものだった。

融合発動(フュージング)!!」

 二組の融合獣と適応者は一体化するための符号(コード)を口にし、ジュナとラグドラグは白い光の柱、ボーガとヴァイペノは毒液を思わせるような紫がかった黒の濃霧に包まれて、白い光と暗紫の霧が弾けると、融合したジュナとボーガが姿を現す。

 ジュナは白い竜頭竜翼竜爪竜尾を持つ姿に変わり、胸には明紫の契合石が光り、むき出しの口と竜頭から出ている明褐色の髪はジュナの名残である。

(久しぶりに融合したな......。格闘大会以来だ)

 ジュナはラグドラグと融合している感覚を久しぶりに取り戻す。

 ボーガは炭灰色(チャコールグレイ)での鱗に覆われ、蛇頭に蛇尾、四肢はあるが指先に鋭い爪がついており、火の粉のように炎色の鱗も混じっていた。うなじには薄黄色の契合石が浮かんでいた。

「さぁてと、行こうか」

 冷たくも落ち着きのある声を発したボーガを見て、ジュナはぐっと気を引き締めた。

(この人は一体どんな攻撃をしかけてくるのかしら......)

 ジュナは取り敢えず構えて、ボーガが攻撃するのを見てから、自分が出ようと考えた。

「俺に先攻させる気か? 思っていたより小ずるいんだな!」

 ジュナが攻撃をしてこないのを目にして、ボーガが小走りしてきてジュナに向かってきた。ボーガが走ってきたのを目にしたジュナは大きく跳躍して空中で一回転してから着地する。

「ふん。飛べるからって、よけやがって。技を使ってこいよ」

 ジュナが避けたのを見てボーガが毒づくと、ジュナは言い返してきた。

「中庭に出るまでは随分と静かだったのに、きっついこと言うのね。変わるもんなの、口調とか態度って」

 それを聞いてボーガはかちんとなるものの、ボーガと融合しているヴァイペノが止めた。

「よせ、挑発返しだ。それよりも、これを使ったらどうだ」

 ジュナはボーガの様子を見てみると今度は何をしてくるか待っていると、ボーガが一歩引いたのを見て、両手を包み込むように重ねて、星のエネルギーを結晶にして放とうとしてきた。

竜晶星落速(クリスタルスターダスト)!!」

 ジュナの手が包む形から放つように手を広げると、白い結晶弾がボーガに向けて飛ばされた。するとボーガは指先から紫の毒霧を出して結晶弾を溶かして砂利ほどに変えてしまった。

酸毒霧(アシドミスト)

 ボーガの放った毒霧は結晶弾だけでなく、彼の周囲の芝の草も一瞬にして枯らしてしまった。緑の草は茶色、黄色と変色してしおれる。

「毒......。気をつけなきゃ......」

 ケティたちもボーガの知識とヴァイペノの毒成分で作られた毒でやられたのかと知ると、ジュナは引く。

「これから嫌でも毒に侵されるぞ」

 そう言ってボーガは両手の指先をジュナに向けて飛ばしてきた。

「きゃっ!!」

 白い爪の弾丸がジュナに向けて放たれて、ジュナは急いで彗星状の防壁、彗星防壁(コメットバリアー)を出す。防壁に当たった爪の弾丸は次々に埋まり、彗星防壁(コメットバリアー)に少しずつ亀裂が入り、九発目で砕けて最後の一発がジュナの左二の腕に当たった。

「あうっ!!」

 ジュナの左二の腕に血が吹き、更に紫色に染まった。

毒爪弾(ネイリーバレット)だ」

 ボーガがジュナに近づく。

「一発で仕留めようと考えたが、それじゃあつまらねぇ。俺の毒でじわじわと攻めてやんよ」

 ボーガは薄笑いを浮かべてジュナの首の根っこを掴む。ジュナの左二の腕はラグドラグの再生能力で塞がるのだが、毒気が消えず傷も消えなかった。

(傷が塞がらねぇ......。こいつの作った毒が特殊だからか?)

 ジュナの体だけでなく、自分の体も毒気にさらされていると感じたラグドラグは気づくものの、毒のせいか気の迷いのせいかあまり考えられなかった。ボーガに首根っこを掴まれたジュナはボーガが振り下ろしてきた蛇尾によって叩きつけられる。

蛇尾打倒(テュポンテーリング)!!」

 ボーガの蛇尾に叩きつけられたジュナは会館の壁にぶつかり、壁が凹んでジュナはそのまま倒れる。

「ジュナちゃん......!」

「くっそ......」

 ハルノとジャーバンがボーガにやられるジュナを見て助けたいと思ったが、ジュナとボーガに言われたことを思い出す。

「これはわたしと彼の戦い。誰も手を出さないで欲しい」

 同じ融合適応者なのに、とハルノとジャーバンは思った。

 二の腕からしびれが次第に広がり、体も熱さを持ち、思考回路もままにならず、視界もクラクラするも、ジュナは何とか持ちこたえようとした。

「うう......」

 何とか起き上がろうとするが、痺れのため膝と肘からの下が上手く動かないのだ。

「俺が爪先に仕込んだ毒はヘレディスト。ほんの〇、〇一ジルク(一ミリ)の傷でも三〇ノルクロ後には死に至る毒だ。お前だけでなく融合獣も流石に逝くだろうな。

 死ぬ前に言いたいことはないか?」

 ボーガがジュナに尋ねてくると、ジュナはフゥフゥと息を吐きながら、起き上がろうとする。空はいつの間にか灰色の雲に覆われて、ポツポツと雨が降り、やがて小雨から雨に変わる。

「わた......しは......、死なな......い......」

「あ!?」

 ジュナは壁に手と脚をつけながらも起き上がってふらつきながらも二本の腕で立ち上がった。

「お前......、まだ全身に毒が回っていないとはいえ、立てるなんて......」

 ボーガは立ち上がったジュナを見て仰天するも、ジュナは言い続ける。

「わたしは......、四年前までは死と隣り合わせの戦いをしてきた......。何度も命を狙われた......。戦い終わった後は格闘大会だけにすると決めた......。

 でも......、あなたが従兄弟の無念を晴らすために死ぬのは......惜しい、いえ下らないと思った......。だから......わたしはここで終わる訳にはいかないのぉ!!」

「ジュナ......」

 毒で苦しみながらも、それでも動こうとするジュナの様子を見てラグドラグがうたれる。

「生意気な女め......。だったら、もっと苦しい毒で苦しめさせてやるよ!!」

 ボーガは自身の体からありとあらゆる毒を口や指先や爪先から出し、紫色の粘り気のある毒の矢をいくつもかたどってジュナに向けて放つ。

猛毒矢速(ヴェノムアラッシュ)!!」

 軽くても五〇はありそうな毒の矢がジュナに向けて飛ばされる。

「いかん! 流石にあんな数の毒では適応者だけでなく融合獣も危うい!」

 ロイシュマスが窓から中庭の様を見て叫ぶも、自分には何ができるか思いつかないまま踏みとどまってしまう。

 しかしジュナは右手を胸の契合石に当てて銀色の刃の剣を出して、剣から光を発して白い斬撃が毒の矢をかき消した。

創生竜斬刃(ティアマート・インパルス)!!」

 毒の矢は一瞬で蒸発し、またあまりの眩しさにボーガとヴァイペノの目もくらんだ。

「うおっ!!」

 ジュナの出した技でボーガは瞼を閉ざし腕で視界を防いだ。しかしジュナがこれまでの仕返しかのように星のエナジー波動を両手に込めて上空にかざして、ジュナの放った星のエネルギー弾は五方に散り更に流星となってボーがに向けられた。

流星群拡散輝(メテオルガナイブライド)!!」

 流星型のエネルギー弾がボーガにぶつけられ、ボーガは後方に飛ばされて壁に叩きつけられて倒れた。

 ザー......と雨の降る中、ジュナは次第に意識を保てなくなり、熱も上がりそのまま倒れ込んでしまった。

「ジュナ......。ジュナ......」

 誰かの呼ぶ声でジュナは暗闇の眠りから目覚めて、ハッとなった。自分の目の前には、母、更に苔緑(モスグリーン)の短髪に銀色の双眸の青年である兄レシルがいたのだ。

「お母さん、お兄ちゃん......」

 母は目をうるわせて嗚咽を上げた。

「良かった、良かった......。助かって......」

「ジュナ、お前は三日間も眠っていたんだ」

 レシルが言ってきたので、ジュナはここが首都会館ではなく、病院の治療室のベッドの上だということに気づいた。壁も床も白く、床は黒いタイル状で

ジュナは水色の検査服を着ており、口元には呼吸器のマスク、腕には四本の点滴のチューブが刺さっていた。ボーガによって毒のついた腕はついており、包帯が巻かれていた。

「おお、起きたか」

 治療室に中老の医者と看護師の女性が二人入ってきた。この医者がジュナを治療してくれたらしい。

「心音も脈拍も正常です」

 看護師がジュナの近くの機器のモニターを見て伝え、呼吸マスクを外してくれた。

「融合獣と融合していたためか、君の毒の回りは遅い方だった。左腕も切らなくても大丈夫だった」

 医師はジュナに伝えた。

「あの、先生。ラグドラグは......?」

 ジュナは自分のパートナーのことを尋ねてくる。

「ああ、彼なら融合獣用の治療ポッドの中にいる。今日は君も目覚めたばかりだし、明日なら......」

 次の日、ジュナは看護師によって車椅子に乗せてもらい、ラグドラグのいる部屋に案内してもらった。融合獣は人工生命体のため医者いらずといわれているが、流石に体内に毒などがあると特殊治療も受ける場合もあった。

 ラグドラグは透明な筒の中にいて、薄青い液体の中に入っており、体中をパルスコードによって繋げられていた。今までに見たことのない融合獣の姿を見てジュナは呆然となる。

「あと三ノルクロもすれば治って目覚めるだろう。君たちは毒を受けたからあと五日は検査してから退院だがな」

 医師がジュナに伝える。

 ジュナが目覚めてから兄レシルから聞いた話によると、ジュナがボーガを倒した後、ロイシュマスたち警官が素早くボーガとヴァイペノを逮捕し、ジュナとラグドラグを病院に搬送し、ジュナは毒の入った腕を切られずに済んだ。

 その後はボーガによって毒を盛られたケティたちも回復し、ケティたちはジュナよりも早く退院が決まった。尚、ファロを昏睡状態にしたのはやはり一日目の夜に仮病を使い、ケティたちに毒入り茶を飲ませたのは、メイドの気をそらせた隙にポットの注ぎ口に毒を塗り、ラーズは自分と部屋が遠かったために自分の疑いを低くするためであったと供述された。

 そしてラグドラグが治療ポッドから出られるようになると、ジュナはラグドラグを抱きしめた。二人の中の契合石がお互いの精神を通じ合っていたためか、ようやくパートナーと再会することが出来た嬉しさのあまり、ジュナは涙した。

 退院の日、ジュナは迎えに来た母と兄と共に病院を去ることになった。

「どうもお世話になりました」

 ジュナは自分を治してくれた医者と看護師に礼を言う。

「お母さん、家に着いたら炒めご飯とメヒーブのソテーを作って」

「はいはい」

 ジュナは母に帰宅したら真っ先に食べたいおかずのリクエストをする。病院の出入り口は衛生上のため二重構造になっていた。一つ目の扉を出て、二つ目の外と通じる自動ドアが左右に開くと、何とキュイン宰相と数人の大臣が立っていたのだ。ジュナ一家は当然驚いた。

「な、何です? どうしてここに......」

 ジュナの母は皇室仕えの大臣たちが何故病院を出ようとした自分たちの前に現れたのか尋ねる。

「はい。昨日皇国議会が終わりまして、議会の結果、エリヌセウスの新大皇が決定いたしましたので、お迎えに上がりました」

 それを聞いてレシルと母は耳を尖らせる。

「ジュナ=メイヨー様。あなたがエリヌセウスの新大皇でございます」

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