一次創作小説メイン、SF大好きな人には必見!

フューザー後日談・第2話


 ジュナ女皇の物語


 ジュナがフレデリック=ヘッセボーグと結婚してから蜜月が続いた。朝食も政務も昼食も昼の自由時間も夜の晩餐も二人一緒だった。

 フレデリックと婚約公表してからフレデリックは皇宮での暮らしや習慣に慣れるために皇族一族と一ヶ月過ごし、マナーや礼儀作法や式会合によって異なる衣服の着用、政治を学んで行き、ジュナと結婚した暁には女皇夫に相応しい男性になっていた。

 大勢の客の前でがついたり音を立てずに食事をし、人種や国籍によって異なる会話や礼儀をこなし、政治や法律の意味内容を理解する――国民の誰もが羨む存在になっていた。

 ジュナとフレデリックの新婚旅行はアルイヴィーナ星と自然月の星間旅行で、白に虹色の光沢の三角錐型の宇宙艇によって六日間、星の海を泳いでいた。

 アルイヴィーナ星では新暦二〇五年頃にアルイヴィーナ初の宇宙艇の短距離飛行に成功し、以後一万光年以内の長距離移動が可能になり、アルイヴィーナ星も宇宙拡大移動に励んでいた。

 宇宙艇は主に宇宙艇操縦資格者が操縦し、内部は大気圏でも宇宙空間内でも飛べる特殊燃料のエンジン、地上と同じように動ける重力制御装置が内蔵され、トイレやシャワーも完備されている。

 星間旅行は最初の三日間は自然月へ向かっていって、残りの三日間は惑星に折り返す経路であった。

 ジュナとフレデリックが宇宙空間から見えるアルイヴィーナ星を目にした時、海の青さと七つの大陸の広大さ、陸と海を覆うようにして浮かぶ雲、白と青と緑の美しさに目を奪われたのだった。

 ジュナとフレデリックの女皇夫妻生活は皇宮で政務を行ったり他国の王族や国内の貴族資産家との会合の宴を行う他、女皇夫妻自らが皇宮の外に出て、辺境の地での生活改善、病院や老人ホームや孤児院へ訪問して患者や子供たちを元気づけさせたりと活動していた。

 先代までのエリヌセウス大皇女皇は辺境の地への出張や入居施設の訪問は主にそこの地の領主や大臣に赴かせており、大皇は皇宮内で政務に取り組んでいることが多かったからだ。

 フレデリックがジュナに女皇自らが辺境の地への視察や入居施設の訪問を行っているか尋ねてみると、ジュナは十三歳の時に今はカルツェン公爵の娘であるケティ=ホーマーが孤児院『つどいの家』暮らしで、実父が亡くなって公爵と再婚した実母が迎えに来るまでそこで暮らしていたことを知ってから、女皇になっても老人ホームや孤児院の入居者の様子を見に行っているという。

 そのためジュナは多くのエリヌセウス国民から慕われており、病気や障害のため収入を得られない人達のために救民法を設けて救貧院に入れて院内で裁縫や家具の組立などの仕事を居住を与えたり、親兄弟との不仲や恋人の男から暴力を振るわれている女性だけが暮らせる集落に入れてあげたり、親から虐待を受けている子供や孤児には無償入寮の学校に入れてあげたりとしていたのだった。無償入寮学校の子に至っては養子になることもあった。

 身寄りのない女子供や老人、病人障害者の生活保全のためにもジュナは適応者のいない融合獣のためにと彼らの役割を与えていた。

 例えば氷属性の融合獣には冷凍倉庫での作業や雪国での遭難救助、空を飛べる飛翔族や蟲翅族の融合獣には高所での運搬や清掃、体力や防御のある融合獣には鉱山での作業や廃ビルの解体といった本人の能力に合わせての仕事を与えていた。

 ジュナ女皇のおかげでエリヌセウス皇国は貧しい者も富める者も先住民も移民も融合獣にとって住みやすい国になっていった。

 ジュナとフレデリックが結婚してから七年目、ジュナは大臣たちとの会議中に突然吐き気を催して倒れたと聞いて、執務室で改訂法律の清書を行っていたフレデリックはジュナのいる医務室へ駆け込んだ。

「ジュナが吐き気を催して倒れた、って!?」

 フレデリックだけでなくジュナの母のセイジャやラグドラグも来ていた。

「準皇陛下、聞いてください。女皇陛下は......」

 三十代の頃から二十年間皇室仕えの医師はフレデリックに伝えた。

「胎内にお子が出来たため、つわりを起こした模様です」

「と、いうことが......!?」

 フレデリックはそれを聞いて深刻な表情から明るい顔に変わっていく。

「はい。妊娠二ヶ月でございます」

 ジュナが最初の子を身ごもったことを知ってフレデリックは喜んだ。

 夏の終わりにジュナ第一子の妊娠が判明されると、ジュナのお腹の子は次第に大きくなり、難産防止のために皇宮内を歩いたり、胎児のために必要な食材を使った料理を食べたり体を冷やさないようにしたりと出産に控えて活動した。

 ジュナが妊娠判明してから年明けの三月半ば頃、ジュナは最初の女の子を産み落とした。国中に祝砲が鳴り、人々は歓声にわき上がった。

 ジュナは最初の娘に自分の母からあやかってセイジャと名付けた。セイジャはジュナと同じ明褐色の髪にフレデリックと同じ水色の眼の女の子であった。

 歴代の女皇は自分の子を育てるのは最初の三、四ヶ月だけで後は乳母や自分の両親が面倒を見ることが多かったがジュナは「一年間は自分の手で育てたい」と大臣たちに申しだてしたのだった。

 ジュナは授乳やおむつ交換、沐浴の仕方を乳母と母から教わって娘セイジャを育てている間、フレデリックが摂政となり政務に取り組んでいた。

 ジュナが女皇として政務に復帰した時には娘セイジャは一歳三ヶ月で皇母セイジャが娘の面倒を見ることになった。

 ジュナとフレデリックの娘セイジャが四歳の時には長男が誕生し、ジュナの亡き父にあやかってゼマンと名付けられた。

 ゼマンは灰茶の髪に金色の眼で顔立ちがフレデリックに似ていた。

「ゼマン、おばあちゃんよ。......夫と同じ名前の孫ってなんか微妙だわ」

 皇母セイジャはジュナの息子の名を呼んでそう呟いた。皇母セイジャにはジュナの兄レシルとジュナの友人ラヴィエとの間に生まれた息子がいて、最初の孫息子はその子であった。

 更にジュナが三十五歳の時に、末子となる次女が誕生し、その子は皇母セイジャと同じ千歳緑の髪に金の双眸の女の子で、ラグドラグが人間だった時の彼の妹にあやかって、ドミーナと名付けた。

 ジュナは一男二女の母となり、子が一歳になるまで皇母セイジャと共に育児をし、子が一歳と過ぎると、公務と政治に尽くした。

 ジュナとフレデリックの子供たちは皇宮内にある大臣や皇室仕えの子女が通う学校へ行き、他の子供達と一緒に国民教育を受けて民の気持ちが理解できる皇子や皇女として育っていった。

 他者から推薦で女皇となり、自分と相性の良い男と結婚し、公務と政治に励み、三人の子の母となったジュナだが、結婚二十五年目にして悲劇が起こった。

 ジュナが皇宮で執務に励み、娘たちは皇宮学校に通っていた頃、執務に多忙なジュナに代わって、ランドン地方の南部ミザール村へ視察に行っていた夫フレデリックが村人と共に近隣の市町村との開通工事の現場監督を務めていた時、雨による洪水と土砂で数人の村人と共に生き埋めになったと聞いた。

 それを聞いてジュナは執務を信用のできる大臣に代わってもらい、機動船でランドン地方へと向かい、変わり果てた夫の姿を見て号泣した。

「うそよーっ!! あなたが死ぬなんて、フレデリック~!!」

 大人しく優しい夫で準皇の死はジュナと娘たちの平穏と日常を奪ったのだった。

 更に夫の死から約一年余、ジュナの母セイジャが肺炎にかかってこの世を去った。

 夫だけでなく母も喪ったジュナには政治も執務にも励む意欲はなかった。

 ジュナは女皇に就任してから二十七年目で女皇の役目を辞任し、娘達とラグドラグと共にエルネシア地方の西南にある元大皇の住まい"影宮"に移り住むことになった。

 ジュナの後継となる大皇は皇室のマザーコンピューターの算出により、ジュナの長男ゼマンが受け継ぐことになった。ゼマンはこの時十五歳。肉体的にも経験的にも大皇としては若かったが、母に代わってエリヌセウス国民のために働くことにした。

 女皇を降りたジュナと娘たちとラグドラグが余生を過ごすことになった"影宮"はエルネシア地方西南にある建物で、森の中に建てられた白い石の建物であった。

 それでも電気や水道や火力といった生活に必要なエネルギーや家具や衣類、使用人もそろっており、娘たちは影宮から近い町の学校へ通い、ジュナは影宮で子供の頃から影宮に移り住むまでの記録を書物にして他にも多くの古典や故事記を現代文に訳して、老若男女問わずが読めるように刊行したのだった。

 

 ジュナが女皇を辞任してから十年後、長男ゼマンがカルツェン公爵子女で元同級生ケティ=ホーマーの姪と結婚し、ジュナは娘たちとラグドラグと共にエリヌセウス皇宮に戻り、息子夫婦の結婚を祝福した。

 娘たちもやがて長女セイジャはエルネシア西南を治める伯爵の息子と結婚し、娘婿と一緒に影宮で暮らした。末娘ドミーナは遠縁にあたるエルサワ諸島子爵の息子と結婚し、更にジュナには男三人女四人の孫娘が生まれた。

 そしてアルイヴィーナ新暦二六四年九月一日――。ジュナ=メイヨーは急性心不全でこの世を去った。ジュナが亡くなる前にも融合適応者仲間のエルニオ=バディスも七五歳で逝去しており、トリスティス=プレジットも七七歳でこの世を去っていた。

 宗樹院羅夢は暁次国で娘夫婦と孫娘と共に存命していた。

 ジュナと共に六四年間家族として過ごしてきた融合獣ラグドラグはジュナの孫娘の一人を新たな融合適応者として、次の生涯を得ることになった。

 ジュナ=メイヨーの亡骸はエリヌセウス皇宮近くの皇族墓地に埋葬され、また女皇を辞任してからも国民からしたわれてきた彼女の墓に新鮮な花が置かれることには絶えなかった。

 そして不思議なことにアルイヴィーナ星ではジュナが女皇になってから一〇〇年の間、長い平和が保たれていったのだった。

「母さん、フレデリック。わたしもここに来ちゃったわ」

「ジュナは年寄りになっても私やフレデリックに甘えているのね」

「まぁ、いいじゃないですか。これからはジュナも含めて、僕たちが星の外からこの世の未来を見守っていくんですから......」

「そうよ。わたしの子供や孫がこの星や融合獣たちのこれからを見守るのよ――......」

〈フューザーソルジャーズ・完〉

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