ワンダリングス5-1

 ドリッドに届いた依頼


 瑠璃色の空間に金粉や銀粉のような星々に赤や青や白の惑星や暗い色の衛星が浮かぶ宇宙空間――。薄青い魚のような機体に後部から青白い放物線を放つ一機の中型宇宙艇、ウィッシューター号。その中の一室である戦闘訓練室。訓練室の内部は腹筋台にルームランナー、パンチングマシーン、硬い衝撃材の入ったマット闘技場がある。

 そのマット闘技場には長い黄色の触角と赤と黒の三白眼、体が赤茶色で筋肉質、背には黒地に赤斑の上翅と下翅の昆虫型星人(エイリアン)の男ドリッド、糖蜜色のハネのあるセミロングに深緑の大きな目に黄色がかった肌にやや細身の人間(ヒューマン)星人(エイリアン)の少女リブサーナが組手をしていた。

 ドリッドは動きやすいように伸縮性のある上下のトレーニングウェアを着ており、リブサーナも黒いTシャツとスパッツ、足元は足首を覆うサポーターとバッシュシューズである。ドリッドが右手でパンチを繰り出せばリブサーナは当美を左に避けるか両手首をクロスさせて防御し、ドリッドは左足で蹴りを繰り出せばリブサーナは大きく脇に避けるか小ジャンプのちの斜め下蹴りで返すという具合に。

「おーし、今日の体術訓練はここまで。リブサーナは、だいぶ腕を上げたな。ウェルズ星の坊ちゃんの件以来じゃねぇか」

「それ程でも......」

 二人共汗だくになっており、口から白い息が三秒おきに吐かれる。

 ドリッドはジーザス星の元軍人であるが、リブサーナは農業惑星補助の小作農の生まれで戦闘とはからっきしの無縁だった。しかし、リブサーナの村が宇宙盗賊のせいで滅ぼされてからリブサーナは宇宙盗賊を退治しに来た流浪の兵団ワンダリングスに助けられ、親兄弟も家も失ってからはワンダリングスに加入し、腹筋などの基礎体力はドリッドによって鍛えられ、武器の扱いはアンズィット星人の女武人アジェンナから教わり、病気やケガの応急処置は人造人間(レプリカント)ブリック、異星人との交流はグランタス艦長から学んだ。

 リブサーナとドリッドは体術訓練を終えたあとは汗と体の疲れを流すためにシャワーを浴び、服を着替えて司令室へと向かった。

 ウィッシューター号の中は廊下も個室も上半分の壁と天井が象牙色(アイボリー)、下半分の壁と床は暗銅色(ダークブロンズ)で装飾されている。

「失礼します」

 リブサーナとドリッドは左右に開く自動ドアをくぐって他の艦員(クルー)がいる司令室に入る。司令室は二段式で上段が艦長の椅子と盤状モニターとコントロールパネル、下段は四つの操縦席とコックピット窓のモニターになっている。

 操縦席にはアンズィット星人の女戦士アジェンナ、人造人間(レプリカント)の男ブリックが座っており、ウィッシューター号の操縦を担っていた。

 司令官席には頭部に黄褐色の複眼と触角と双眸を持ち、背には黒い前翅と黒透明の下翅、両肩に「<」状の突起を持ち、灰色の軍用ガウンをまとった老兵、インデス星の元王族のグランタス艦長が座り、司令官席の左右にある補助席には若葉色の巻き毛に尖った耳、銀色の目に細長の四枚翅、白いフワフワのドレスの幼女、フェリアス星人のピリンが座っている。

「どーですか、艦長。お変わりないですか?」

 ドリッドが艦長に尋ねてくると、グランタス艦長が返事をする。

「ああ、さっきドリッド宛にオミクロン星域の連合軍からの依頼が来ていたぞ」

「俺にですか?」

「ああ、ちょっと見てみろ」

 艦長に促されてドリッドは司令官席の盤状モニターのコンソールを動かし、ドリッドに宛てられたオミクロン星域の連合軍からの依頼メールをチェックする。

 すると盤状モニターから細面の顔に白い肌、真ん中で分けた金褐色の髪に青い目、紺色の軍服を着た人間(ヒューマン)星人(エイリアン)の青年の立体映像が映し出される。

「ん? 見慣れねぇ顔だな。誰なんだ?」

 ドリッドが首をかしげる。すると映像の青年はワンダリングスの面々でもわかる宇宙言語を発して喋りだしてきたのだ。

『あ、どーも。ワンダリングスの皆さん、初めまして~。わたくしオミクロン星域連合軍、ポーツマ星出身の広報部部長、ガイディ=リダスと申します。

 連合軍広報部とは毎週指定曜日の全宇宙の一般民や流浪者、王族や富裕層に連合軍や連合軍従事の戦士たちの活躍を伝えることをお仕事としております。

 テレビ、スペースネット、ラジオ、マガジン......。あらゆる媒体でお届けします。

 あ、わたくしがワンダリングスの皆さんにお伝えしたいこととは、No.2のドリッドさんに是非、参加してもらいたいイベントがあるのです!』

 映像の中のガイディ=リダスはキビキビと動きながらメッセージを語る。

「ドリッドにしゃんかしてほしいイベントって、なんなりょ?」

 ピリンが立体映像を見て疑問に思う。

『ハイ、それはズバリ、今度のオミクロン星域の宇宙座標三一五にある惑星バトナーチェで行われる〈宇宙戦士武闘会(スペースウォーリアバトル)〉です!!

 グランタス殿の右腕として活躍してきたドリッドさんにはお相応しいイベントでございます! 今回の開催日はバトナーチェ星時間の四月十三日午後一時からスタートです!! 

 参加するかしないかドリッドさんのご自由ですが、わたくし共としては参加することをお勧めします。

 それでは、ごきげんよう』

 ここでメッセージ映像が消え、リブサーナ・ピリン・グランタス艦長はドリッドを見る。

「バトナーチェ星での武闘大会かぁ......」

 リブサーナがつぶやくと、ドリッドは三つの視線で見つめられて表情をきつくさせる。

「何言ってんだよ、こんなのどうせ連合軍広報部による連合軍の新加入者の勧誘の広報の依頼だろ? 俺たちゃ、戦いの専門なんだぜ? 戦争弱者の助っ人とか宇宙旅客船のハイジャックやテロリストといった悪党退治とか、時々惑星や宇宙廃城の探索......。武闘大会なんて......」

 ドリッドが面倒くさそうに一同に言った。しかしリブサーナは宇宙戦士武闘会(スペースウォーリアバトル)の情報探索機能でバトナーチェ星の武闘大会の情報を調べる。

「ええと、大会は半年に一度、毎回大会出場者一三二名、優勝者にはトロフィーと賞金五〇万コズム......」

「おい、何勝手に調べてんだよ」

 盤状モニターのコンピューターで調べるリブサーナにドリッドが突っ込んできた。

「ん? 何々......。十大会連続優勝者ケストリーノ? 十三歳でデビューし、現在に至る無敗の男......」

 リブサーナはバトナーチェ星の武闘会の優勝者の情報を見て興味をそそられる。大会レギュラー陣には顔写真と全体写真、身長・体重・出身惑星などのプロフィールが掲載されており、人間(ヒューマン)星人(エイリアン)の好青年でありながら大会の優勝を保っているというケストリーノにリブサーナはひかれた。

「艦長、どうせならわたしが出場します。まぁ、わたしの今の実力がどれくらいなのか、っていう力試しですけど......。わたしもワンダリングスに加入してから五ヶ月も経ちますし......」

 リブサーナはグランタス艦長に懇願する。

「ふぅむ、そうだな......」

「リブサーナが出るんなら、あたしも出る」

 操縦席に居るアジェンナが叫んだのだった。

「なんなら私も......」

 同じく操縦席にいるブリックが言った。リブサーナだけなら兎も角、アジェンナやブリックがドリッドに勧められた武闘大会に出場すると聞いて、ドリッドの中に武闘大会に対する気持ちが芽生えてきた。

「......何だよ、何だよ。お前ら出るってんなら、俺も参加するわ。だって俺に宛てられた依頼なんだぜ? これは」

「おおっ、ドリッドやりゅきをだしたぉ」

 こうしてドリッド・リブサーナ・アジェンナ・ブリックはオミクロン星域にあるバトナーチェ星の武闘大会に出場することになった。


 ワンダリングスは連合軍広報部担当ガイディのメッセージを受け取ってから四〇時間後、〈宇宙戦士武闘会(スペースウォーリアバトル)〉が開催される惑星バトナーチェにやって来た。

  バトナーチェ星は星の表面は深緑の地表に茶色い模様が斑点のように浮かび上がっていた。更にバトナーチェ星の中は深緑の地表は大きいものや手の形をした葉が生い茂る木々の密林であり、密林の中にはイズミヤ川があり、泉や川には赤や青や白のウロコの魚や赤茶色や紫色の毒々しいカエルが棲み、木の枝には黄色や緑などの鮮やかな羽毛に三日月状や楔状の嘴を持つ鳥も棲んでいた。他にも縞模様やぶち模様の猛獣も徘徊しており、牙のある鹿や大猪などの草食獣おり、また口吻の長い翅虫や両目の突き出た虫も棲んでいた。ワンダリングスを驚かせたのはバトナーチェ星の生物の生態系よりも密林の真上に浮かぶ岩がいくつも浮いていたことである。下は密林の深緑、上は空の青、その中間が浮遊岩の茶色と区切られ、星の地表の茶色い斑は浮遊岩だったということがわかった。

 バトナーチェ星人は浮遊岩の上に都市を造り、虫の奇病や猛獣の奇襲からも逃れて暮らしているということである。ウィッシューター号をある浮遊岩都市の公共の宇宙艇停泊場に泊め、リブサーナたちは浮遊岩から見える光景を目の当たりにする。

 空は澄み切った青で白い雲がいくつも浮かび、深緑の密林には国境や県境となる山の稜線、空を飛ぶ色艶やかな鳥たち、密林は湿度があって熱いが、浮遊岩都市は二〇~二五度と過ごしやすく、また浮遊岩によって一区二区と異なっていた。公共の宇宙艇停泊場はウィッシューター号の他、他の組織や惑星の宇宙艇が四、五〇台も停泊しており、鋭角な機体や丸みを帯びた機体、鮮やかな色もあれば淡い色も渋い色もあった。そして宇宙艇からはや虫型星人、鳥型星人や獣型星人、魚型星人、爬虫類型星人が出てくる。

「しゅご~い、このひとたち、しゅぺーすうぉーりあばとりゅにしゃんかしゅるの?」

 ピリンが次々に宇宙艇から出てくる星人(エイリアン)を見て、艦長に尋ねる。

「だとうなぁ。富や名誉、己の誇り、力試しで〈宇宙戦士武闘会(スペースウォーリアバトル)〉に参加する者は尋常ではないんじゃよ」

「でも艦長、ここに来れば連合軍広報部のガイディ隊員が迎えに来てくれる、って情報が入りましたけどねぇ......」

 ドリッドが自分たちをバトナーチェ星の舞踏会に勧誘してきたガイディの姿を探す。

「あっ、アレじゃないのか?」

 長い銀髪に白い肌に青い目の人造人間(レプリカント)の男ブリックが指をさす。ブリックが指さしした方向にはグランタス艦長の故郷の言語であるインデス語で、『ようこそ、ワンダリングスの皆様!!』と書かれたパネルを持った人間(ヒューマン)星人(エイリアン)の男を発見したのだった。

 ワンダリングスはそこへ向かうと、連合軍のガイディ隊員と接触する。ガイディは連合軍の制服ではなく、カーキのシャツとベージュのスラックスの姿であった。

「おおお、来てくれましたか。ワンダリングスの皆様。わたくしオミクロン星域連合軍広報部部長、ポーツマ星人のガイディ=リダスです! この度はよくバトナーチェ星の武闘会開催地に来てくださって、ありがとうございます。ささ、宇宙停泊場ではなんですから、一先ず町へ行きましょう」

 ガイディが流暢なインデス語でワンダリングスを促し、浮遊岩の上に造られた都市に案内する。

「うわぁ......」

 リブサーナとピリンは浮遊岩の上に造られたバトナーチェ星人の町を見て声を上げる。

 どの建物も浮遊岩を削って中を空洞にして家や店にしたり、家のテラスに当たる部分には地上の密林から採ってきた木や花が植えられて赤茶けた地に緑の葉や色とりどりの花で艶やかにさせていた。大きな木は街路樹として植えられ、幹には蝶やカミキリムシを思わせる昆虫、枝には鳥が泊まってさせずり、バトナーチェ星人は赤褐色や黄褐色の肌が多い人間(ヒューマン)星人(エイリアン)で、男も女も背が一九〇センチ前後と高いのが特徴的で、主にチュニック型の服と足を連なった輪状で覆うサンダルが主な服装であった。

 家では女が洗濯物を干したり家の前を箒ではく姿が見られ、市場にあたる岩壁では赤や青や黄色の果物が並び、鳥や獣の肉が軒先に吊るされていたり、ダイダイ染めと呼ばれる染物の布や花柄などの模様の布が窓から見えたりする様子が見られた。

「あれ、バトナーチェ星の人たちって、浮遊岩に町を造って住んでいるのに、どうやって肉や果物を集めているの?」

 リブサーナが町の様子に気づくと、ガイディが返答した。

「ああ、岩が浮いているようにバトナーチェ星の住民も浮遊能力を持っているんですよ。

 岩の上を行ったり来たりすることで地上の水や食糧になる魚や果物、あと布の材料や薪、細工物になりそうな石や金属を採りに行くことが出来るんですよ」

「それはすごいぉ!!」

 ピリンがバトナーチェ星人の能力と暮らしぶりをみて感心する。

「あと、ワンダリングスの皆さんを武闘大会に勧めた理由は食堂でお話しましょう」


 浮遊岩都市の中にある食堂は岩の中を丁寧にくり抜き、床の岩はテーブルや椅子の形に削られ、厨房も竈や流し台や調理台の形に削られ、白い前掛け型エプロンと三角巾を身につけた調理係の男や女が甲斐甲斐しく魚をさばいたり、脂ののった首長鳥の羽をむしったり、果物や食べられる草葉を刻んだりと働いていた。

 食堂のホールも一度に七、八〇人が座れるほどの広さで、給仕係の若い娘が水やスープ入りの器や食事済みの皿を運んでいる。皿も器も白磁器で、コップは厚めのガラスや素焼きのマグカップであった。

 ワンダリングスとガイディは円状に削られた岩に椅子が八脚ある席に着き、テーブルの上にはごちそうがどんと乗っかっている。

 鳥のゆで卵と丸焼きの甘辛ソースがけ、平べったい麺はペタンといってバトナーチェ星人の主食で大きな山盛りのペタンの周りには赤い辛口や緑の塩味や真っ白なソースをかけて食べるという。他にも銀色の楕円状の魚の煮付けは甘酸っぱい黄色いスープと魚のくさみを消してくれる緑の細長い香草が入っている。果物も籠に赤い球体や青いハート型、緑の三日月型や黄色い三角形の果物が山積みに盛られていた。飲み物も厚めのガラスの水差しには白い蹄獣の乳、緑透明の物、黄色い透明の物のドリンクが入っていた。

「いただきまーす」

 リブサーナとピリンは鳥肉の切れ端にかぶりつき、その旨さに感激する。

「お、おいし~」

「やみつきになるぉ!」

 ドリッドも魚の煮付けに手を伸ばし、アジェンナもペタンに緑色のソースをかけて食し、艦長もペタンと細かくした肉を一緒に食べ、ブリックは水差しの一つのドリンクを飲む。苦さと甘さの混じったお茶であった。

「オッホン。皆様、食べながらでいいですからお聞きくださいね。実は我がオミクロン星域連合軍がワンダリングスの皆様をこのバトナーチェ星で開かれる〈宇宙戦士武闘会(スペースウォーリアバトル)〉の参加の勧めのことですが......」

 ガイディが食事中のワンダリングスに説明しだした処、ブリックが尋ねてくる。

「武闘大会を通じて、連合軍加入者募集のアピールで......?」

 それを聞いてガイディは片眉を動かし、人差し指を振る。「ちちち、そんなことならとうの昔にやっていますよ。大会を通じで連合軍加入者募集はバトナーチェ星以外でもできますからね。

 私がワンダリングスのドリッド氏にお願いしたいのは、大会に宇宙犯罪者が潜り込んだという情報を確かめてもらいたいのです!」

「えっ」

 それを聞いてリブサーナたちは食事をする手を止めてしまう。

「は......はんじゃいしゃがいりゅ!?」

「それが俺たちを呼んだ理由か」

 ピリンとドリッドが尋ねてくる。

「ええ、ですがどこの誰かまではわかりませぬ。但し、バトナーチェ星に潜り込んだっていうのが、元プロの格闘家でして、ある宇宙武闘大会で相手を過失とはいえ相手を死なせてしまったために格闘世界を追放され、そのためか軍人・武闘家・女子供老人を含めた無差別障害殺人犯となって転々としてきたようなんです。

 と、いうのも今からバトナーチェ星でいう半年前にオミクロン星域の連合軍退院が家族を連れてバトナーチェ星を旅行していた頃の大会で無差別障害殺人犯らしき人物を目撃したっていうんですから。ここはドリッド殿に一つお願いを」

 ガイディはどリッドを武闘大会参加の勧めを伝える。

「連合軍の腕っ節の強い奴を派遣させりゃあいいじゃないか」

 ドリッドが言い返すと、ガイディは強く首を横に振る。

「連合軍が公の武闘大会に出たら、副業違反に引っかかるので、出したくても出せないんですよ。ですから、ドリッド殿に是非......」

 ガイディはドリッドに視線を向ける。するとどリッドが言ってきた。

「でも俺だけじゃなく、他の艦員(クルー)も参加かせてくれ。頼むよ」

 ドリッドはアジェンナ・ブリック・リブサーナの参加権をガイディに要求する。ガイディはドリッド以外の三人を見て呟く。

「わかりました。では四名様、ご案内ということで......」

 こうしてドリッドの他、リブサーナ・アジェンナ・ブリックは〈宇宙戦士武闘会(スペースウォーリアバトル)〉に参加することになった。


宇宙戦士武闘会(スペースウォーリアバトル)〉はバトナーチェ星時間の六日後の午後一時に行われることになったため、ワンダリングスはそれまでにウィッシューター号で特訓及び寝食、休憩時間にはバトナーチェ星の町を見学することになった。

 

 バトナーチェ星の浮遊岩都市はどこもかしこも岩の中をくり抜いて居住区や市役所・学校のような公共施設にし、内側の岩を机や椅子、棚やベッドにして削り、窓枠や玄関の戸は密林の木を板状にしてはめ込み、窓ガラスは透明な石を削ったもので家によっては半透明やピンク、黄色い窓の家といったカラフルさだった。都市は宇宙艇や人や物や生物が落ちないように周囲の岩を山脈のように工夫して削られ、バトナーチェ星の人々が地上で食糧となる鳥や魚や獣や草や果物、生活用具にする木材や石や鉱物を採りに行く時は必ず建物の地下に造られた上蓋を通じていくのだ。バトナーチェ星人は落下するというよりは水中に投げ入れた石のようにゆっくり下降し、都市に戻る時は勢いをつけて跳躍してから上昇して浮くという感じであった。

 リブサーナとピリンは町の見学へ行き、バトナーチェ星人の生活を目にした。

 子供たちは広場でボール遊びや鬼ごっこして遊び、機織り屋では女たちが密林で手に入れた植物の葉や茎の繊維で糸を紡いで布を織って花びらや草で作った染め粉で色をつけたり、毛皮屋では職人の男が密林の動物の毛皮をなめしたりして外套や帽子や長靴にしたり、酒屋では果物や野麦や野生のキビで作った酒を樽に詰めて売っており、浮遊都市でくらしている以外は他の星の民族と変わらないようだった。

「けっこーしゅてきだね、バトナーチェしぇいは」

「うん......。でもみんな似たような服を着ているしなぁ......」

 リブサーナは自身とピリンの服装、バトナーチェ星人の服を見て呟く。バトナーチェ星人は胴体を覆うチュニック、下に中シャツやレギンスを着ている者のいて足元は脚全体を覆おうサンダルで時々ブーティ靴や短靴を履いている者もいた。一方リブサーナはおしゃれなボタン付きのチュニックとキャミソールと裾レース付きのスパッツと編み上げブーツで、ピリンは白地に赤い縁どりのワンピースと赤いベルト付きの短靴である。バトナーチェ星人から見れば、よその惑星の人間(ヒューマン)星人(エイリアン)である。

「サァーナ、ピリン、しょこのおかしがたべたい」

 ピリンに言われてリブサーナは頷く。

「そうだね、次の特訓まで時間あるし......。いくつでも買ってあげるよ」

 リブサーナとピリンはバトナーチェ星の菓子をいくつか買って満喫した。真っ白な種子を粉にして油で揚げ粉砂糖や胡麻に似た種子類をまぶした揚げ菓子、中に赤や黄色のフルーツソースが入った蒸しパンはもっちりしており、変わり味アメは虹色の球体で一回舐めると甘く二回舐めるとしょっぱく三回舐めるとすっぱくなる。舐めることで味が変わる菓子であった。

 リブサーナとピリンがあちこちで食べ歩きを楽しんでいるとリブサーナはアクセサリーショップに目をやる。店の中は岩を削った棚に色つきのガラス玉のネックレスや三角形や楕円形の花に削ったパステルカラーの石の髪留めに銀製や真鍮の指輪に赤や緑の色石がついた指輪、イヤリングやらブローチなどが飾られており、若い娘や年頃の女性が集まっていた。

「あ、コレいーな」

 リブサーナは棚に置かれていたトンボ玉と呼ばれるガラスに碧玉のビーズと革紐のネックレスを目にする。トンボ玉は白と青で碧玉とマッチしており、緑の眼のリブサーナに合いそうな一品であった。

「価格......、四〇〇バトゥ。コズムに換算すると、五五〇〇コズム!?」

 リブサーナはネックレスの値段を見て驚く。バトゥはバトナーチェ星の貨幣単位で一バトゥは宇宙全域で通じるコズムに置き換えると一三・七コズムに値する。リブサーナの持っている所持金は八一コズム。最初に持っていた時は五〇〇コズムだった。リブサーナは肩を落とし、ネックレスを棚に戻す。

「やめるの?」

「うん......、今日は見るだけにするよ......」

 リブサーナはすごすごと店を出て、ピリンと共にウィッシューター号へ戻っていった。

 リブサーナとピリンは気づいていなかったが、一人の青年がリブサーナとピリンの様子を伺っていたのだ。

 その青年は一七〇センチ半ばの背丈に緑がかった茶色の髪、灰色がかった緑の眼に面長顔、体つきは細身だがしなやかでベージュのチュニックと黒いレギンスと茶色のサンダルを身につけていた。何よりバトナーチェ星人とはいえ、白磁器のように白い肌が特徴的であった。

「あの糖蜜色の髪の子、ホジョ星人だな......」

 青年はリブサーナを見て呟いた。リブサーナをホジョ星人と見極めたこの青年は何者なのか!?