ワンダリングス5-8

 ベラサピアとの再会


 ラムダ星域最東端にある水と緑に覆われた惑星ホジョ――。陸地の多くは森林と草原、革や泉が豊富で、白や黄色や褐色の肌の人間型異星人が主要種族で、ホジョ星人は長いこと土を耕し種を蒔き水をかけて肥料を合わせて米や豆などの穀物、多くの野菜や果物を育てて暮らしてきた農耕民族である。

 三~四階建ての長屋が多くホジョ星人や異星からの客人や商人の賑やかな王都から少し離れた谷を越えた先に岩場の中に一つ所巨大な城砦があった。城砦はホジョ星王の住まいで現在のホジョ星王ゴラスベーノが玉座に鎮座していた。ゴラスベーノ王はホジョ星の暦で二十五歳。緑がかった金髪に金色の眼に赤みがかった黄色い肌、そしてこの時は黒地に金縁の上衣と赤いマントを身につけていた。

 ゴラスベーノ王は刈り入れの時期に宇宙盗賊がエヴィニー村を襲撃し、家も家畜も住民も滅ぼされた件でようやくエヴィニー村を滅ぼした張本人が差し出されたことを聞くと安堵していた。エヴィニー村の小作農のペトラスとグランナニエーラ夫妻の長女ゼラフィーヌの婚約者でラドヴィー村の村長子息のパルプリコであることを。パルプリコは滅ぼされたエヴィニー村の調査に来ていた大臣が去った後、両親と新しい婚約者の娘を連れて宇宙豪華客船ドーンヴィーナス号で結婚式兼新婚旅行をしていたが、エヴィニー村を滅ぼした宇宙盗賊がクシー星域の監獄ステーションから逃走してドーンヴィーナス号に転がり込んでいた。脱獄犯の逮捕を宇宙連合軍に依頼されていた流浪の兵団が宇宙盗賊は自主的にエヴィニー村を襲ったのではなく、他者からの依頼であったこと、依頼したのはラドヴィー村のパルプリコだったと判明した。

 そのパルプリコは小作農の娘では自分に不釣り合いと悟って手切れ金を出したくないがために宇宙盗賊を雇って村人を殺させたのだ。しかし流浪の兵団の一人がパルプリコの白状を携帯端末で記録したために、パルプリコは自身の両親と共に王城に出頭し、大臣たちの尋問でエヴィニー村を滅ぼさせたと語った。パルプリコは現在王城の地下牢に閉じ込められており、パルプリコの両親も村長を辞任して行方不明になっていた。

「それで陛下、連合軍によって宇宙盗賊を捕らえにきた流浪の兵団の中にエヴィニー村の生き残りがいたのです」

 パルプリコを尋問にかけていた大臣がゴラスベーノ王に報告する。

「なんと、エヴィニー村に生存者が......!?」

「ペトラスとグランナニエーラ夫妻の次女で末子のリブサーナといいます。リブサーナは宇宙盗賊襲撃の時に村から離れて負傷していた処、流浪の兵団に救出され、身寄りもないためにその兵団の一員になったとのことです」

 大臣の報告を聞いてゴラスベーノ王は右掌を顔に当てて全身の力が抜けた後、喉を鳴らした。

「は......ははは......。そうかエヴィニー村に生存者がいたとは......。すなわちエヴィニー村の苗は全て焼かれた訳ではなかったのだな!? 今日までゼロだと思っていたが今やっと一つ残っていたは......。

 それで大臣、リブサーナという娘は今どこにいる?」

「その......ワンダリングスと呼ばれる兵団は星から星へと廻っているので連絡が掴めません。何しろどこにも所属していなくて依頼があれば現場へ向かうようでして......」

 大臣は出来るだけゴラスベーノ王にわかるように説明すると、ゴラスベーノ王は姿勢を直すと大臣に告げた。

「大臣、よく聞け。私はエヴィニー村に生き残りがいたのならば、その者に新しい村を授けようと考えている。エヴィニー村は穀倉に相応しい土地だ。私はその者に村人全員を救えなかった償いとして、リブサーナに新しいエヴィニー村の村長としての役職を与えようと」

 大臣はその考えを聞いて感心するも、問い直した。

「ですがリブサーナという娘は宇宙のどこにいるか......」

「今すぐでなくても良い。どんな生き物でも、いつかは自分の生まれた場所に戻って帰ってくる。私はそう信じている......」

 ゴラスベーノ王は大臣に言った。以前生えていた樹が枯れてしまえば新しい苗を植えればいい。さすれば新しいエヴィニー村を活き返るだろう。

 

 紫紺に白や青や赤の星々が銀粉を散りばめたように輝き、灰色や茶色の岩石のような衛生が浮かび、大小の緑や赤の球体のような惑星が点在する宇宙空間――。その背景に後部から青白い放物線を放出し、魚のような薄青い機体の宇宙艇が飛んでいた。流浪の兵団、ワンダリングスの宇宙艇である。

 豪華宇宙客船ドーンヴィーナス号に逃げ込んだクシー星域監獄ステーションの脱獄犯を逮捕するためにワンダリングスはオミクロン星域を離れ、事件が解決したために舞い戻っていた。ドーンヴィーナス号の出来事が終わってから二二一時間、ワンダリングスの艇員(クルー)は途中で寄った惑星や宇宙市場(コスモマーケット)で食糧や燃料を仕入れ、移動時は基礎鍛錬や宇宙情報網(スペースネット)による情報収集、睡眠や音楽などの娯楽で過ごしていた。

 ウィッシューター号の司令室にある盤状モニターに連合軍からの依頼の呼出音(コール)が鳴り、艇員は司令室に集まる。グランタス艦長が盤状モニターのコンソールを操作すると、モニター画面に文字が浮かび上がる。グランタス艦長の出身惑星であるインデス語で表示されていた。

人造人間(レプリカント)のブリックが依頼内容を読み上げる。

「オミクロン星域、座標六一七にある惑星ブラッドに向かっている宇宙奴隷商人の逮捕を依頼する......と書いてあります」

 ブリックが艦長に言った。館長は頷き、コンソールのキーを叩くと、詳しい内容がモニターに映し出される。奴隷商人の顔写真やプロフィールである。奴隷商人は硬い甲殻に長い二本の触角、両手首にハサミがあり大きな黒い目、赤い体に黒い襟なしジャケットと白いストールと黄土色のシャツの甲殻類型異星人(エイリアン)であった。

「ピー星域ジャーリ星出身、キャプトー。これまでに四十三ヵ所の惑星の住民を捕らえて氏名手配される。

 それできゃつが行ったという惑星ブラッドは人間型異星人(エイリアン)で星民の七割が超能力者......」

 ブリックが奴隷商人とブラッド星の詳しい情報を読み上げる。

「でもしゃー、ちょーのーりょくしゃのほしなりゃ、どれーしょーにんなんてなんともないんじゃないの?」

 ピリンがブラッド星の住民なら奴隷商人をやっつけることが出来るのだから問題ないのでは? という風に言った。

「でも超能力封じの対策があったらどーすんだよ? 赤子の手を捻るのも同然だぞ?」

「あ、しょっか......」

 ドリッドに言われてピリンが思い出す。実際、超能力を使う異星人(エイリアン)と戦うには超能力封じの対策が連合軍や超能力者を敵対する種族には設けられている。それらは薬品だったり呪術だったり機器だったり様々であるが。

「それでは行ってみるか、ブラッド星へ」

 ワンダリングスは航路をブラッド星に設定して、ブラッド星に着くまでの時間や経路を計算し、ウィッシューター号は奴隷商人キャプトーを探しに出発していった。

 

 依頼を受けてから九十七時間後、ワンダリングスはブラッド星に着いた。

 ブラッド星は緑と銀灰色と青の三色で表されている惑星で緑が森や草原、銀灰色が街、青が海や水辺という色合いであった。

 グランタス艦長はブラッド星の最高役職者に連絡を取り、返信を待った。

「こちらワンダリングス艦長、グランタス=ド=インデス。ブラッド星最高役職者、応答願う」

 すると盤状モニターに一人の人間型(ヒューマンがた)異星人(エイリアン)の顔が映し出される。

『こちらブラッド星ブレドリー帝国総司令官、フェルプだ。応答承る』

 フェルプ総司令官は褐色の肌にスキンヘッドに額と口元にシワ、白い大きな眉毛に白い髭をたくわえ、眼は濃紺、カーキ色の軍服には金色の肩章と胸にいくつもの勲章を持つ老兵のようだった。

『我々ブラッド星人はもう三日も前からあなた方が来るのを予知していましたよ。

 地上座標四一五に着陸してください』

 フェルプ総司令官はグランタス艦長に告げる。フェルプ総司令官の台詞はモニターでインデス語に翻訳されており、リブサーナたちにもわかるので一先ず安心した。それから画面にブラッド星の地上座標が映し出される。

「よし、これよりブラッド星に入る」

 リブサーナたちは操縦席に座り、操縦桿を握る。

「システムオールグリーン、ブラッド星に入ります」

 ウィっシューター号は大気圏に入り、機体から冷却機が発せられて大気圏熱を通過し、白い雲の中に入っていく。

 ブラッド星の地上は幾多の高層ビルと低層家宅、白い道路が四方八方に広がり、街の周囲は緑の森と草原、湖や川も点在し、空を飛ぶ様々な外観の車体や運搬車、中にはバイクに似た乗り物に乗る者もいたが、車輪がなかった。

 フェルプ総司令官に指示された座標四一五はだたっ広い荒地を埋め立てた灰色の瀝青に白い白線がいくつも刻まれた宇宙・航空港であった。

 ウィッシューター号が静かに着陸すると、フェルプ総司令官を筆頭に五〇人ものの兵士が出迎える。兵士は男もいれば女もいて老いも若きもカーキ色の質素な軍服と軍用ズボンと黒い軍靴を身につけており、目や肌や髪の色は個人によって異なっていた。

 ウィッシューター号からタラップが降り、出口が開くとグランタス艦長、ドリッド、アジェンナ、ブリック、ピリン、リブサーナが出てくる。

「ようこそブラッド星主要国家・ブレドリー帝国へ」

 フェルプ総司令官と兵士たちがグランタス艦長たちに敬礼を取る。

「初めまして、フェルプ総司令官殿。ワンダリングス艦長、グランタス=ド=インデスです」

 グランタス艦長が訛りがありながらも丁寧なブレドリー語で挨拶する。

「インデス......といいますと、ゼータ星域で一、二を争う軍事国家インデス星の生まれですか? 姓名がインデスということは王族で!?」

 フェルプ総司令官がグランタス艦長の自己紹介を聞いてピクリとなる。

「あ、いえ、その......私は確かに王家の者ですが、継承権の低い三男で、軍事以外に向いていることがなかったので今こうして艇員(クルー)たちと共に戦争援助や指名手配犯の逮捕、宇宙船のハイジャックを取り締まっているしがない流浪の兵団部隊なのでございます」

 グランタス艦長は苦笑しながらワンダリングスでの活動内容を話す。

「お話を変えまして......。このブラッド星に宇宙奴隷商人が足を踏み入れたという情報を手に入れまして、ご存知ありませんか?」

 グランタス艦長はフェルプ総司令官に尋ねてみる。

「宇宙奴隷商人......ですか? 我々ブレドリー人をはじめとするブラッド星人は超能力種族が多く占めているのですよ。超能力といっても一口にたくさんありまして、宙に浮く浮遊、相手の心を読む精神読術、生物無機物問わず念波で動かすサイコキネシス、五感のうちどれかを増させる感覚強化、数秒から数年先の未来を先読む予知能力......。

 ブレドリー人は予知能力が主要でして、古代から農業ならば豊作か飢饉か、軍事なら敵の戦略を知ることが出来るわけでして......。

 ブラッド星に都が多いのは住民が超能力を使いこなしてこうして衣食住・軍事・政治・学問・多くの文明や文化が進歩していったわけです」

フェルプ総司令官は現在のブラッド星の成り立ちをグランタス艦長に伝える。宇宙の多くの言語を知っている人造人間(レプリカント)のブリックはみんなにわかる言葉で伝える。

「このブラッド星は多くが超能力者でブレドリー人は予知能力がメインで他にもサイコキネシスや浮遊など力で生活している。

 空を飛ぶ車やバイクは燃料やエンジンを使わず、自分たちの力で動かしているそうだ」

「へーっ、すごいぉ」

 ピリンがブラッド星人の超能力とその生活様式を聞いて感心する。

「でもピリンちゃんだって妖獣の召喚が出来るし......」

 リブサーナがピリンの能力もブラッド星人と変わらないという風に言った。

「ですが辺境の地......。ブレドリー帝国や他の先進国なら奴隷商人は手を出しませんが、非超能力者のいる発展途上国ならば住民を捕らえるでしょう。奴隷商人から見た超能力者は猛獣も同然ですから」

 フェルプ総司令官がグランタス艦長に言う。

「成程......。ですがブレドリー人の中で宇宙奴隷商人がブラッド星に侵入したという予知をした者はおりますか?」

 グランタス艦長が尋ねてきたのでフェルプ総司令官は思い出したように右拳を左手で叩く。

「ええ、おります。一般人のピュルイ=フレスキーという八歳の男の子が軍に連絡してきたのです。確かこの惑星での四月二三日、一〇日前のことで、『赤くて丸みを帯びた宇宙船がカジミナ半島の中心部に降り立った』と。カジミナ半島はブレドリー帝国の真北より一二五〇ファール......六二キロ半先のカミガン人は超能力のない民族である」

「カミガンか......。そこに宇宙奴隷商人がいる可能性は高いな......。

 フェルペ総司令官閣下、ご協力ありがとうございます」

 グランタス艦長はフェルプ総司令官に礼を言うと、「お待ちを」とフェルプが手を出してきた。

「カミガン人が非ブラッド星人が来たら怪しまれて追い出されます。案内人をお付けします」

 そう言ってフェルプ総司令官は一人の女性兵をグランタス艦長たちに紹介する。女性兵は若く短い黒髪に浅黒い肌、黒くて大きい目、背丈は一七〇センチくらいあってスレンダーな体格、カーキ色の軍服と軍靴、カーキ色のベレー帽をかぶっていた。

「私の部下、異地交渉員のグリジアです。彼女をお付けさせれば大丈夫でしょう」

「グリジア=カーミロです。よろしく」

 グリジアはインデス語に近い言語でワンダリングスに挨拶して敬礼を取る。

 

 ワンダリングスはグリジアを連れてカミガン人の住むカジミナ半島へ向かっていった。

 ブラッド星の空は白に近い灰色であるがこれでも晴天である。上空から見た地上はビルや建物が駒のようで川は血管のように分かれていたり湖や沼は斑点のようで、森や草原は緑の濃淡がはっきりしていた。地形の上には乗り物に乗るブラッド星人の姿やブラッド星人の操る車体が小虫のようだった。他にも白と茶色の羽毛の首長鳥の群れやワシに似た青い鳥が空を飛んでいた。

 地形がだんだんと細長くなっていき、北東西が海に囲まれている半島が見えてきた。

「あれがカジミナ半島でカミガン人の国です。カミガン人は超能力はないけれど自分たちの力で畑を耕す機械や電気を通す技術を手に入れていきました」

 グリジアがモニター窓に映るカジミナ半島の住民の生活や文明をワンダリングスに教える。

「サァーナのほしのひとたちとおなじだね。ホジョせいのひともじぶんたちのちからでのーぎょーやってっから」

 ピリンがグリジアに言った。

「ホジョ星ですか......。ホジョ星人って七〇〇年前までは戦いに加わっていた、と云われてませんでしたか?」

「えっ......!?」

 グリジアに言われてリブサーナは初めて知ったという顔をした。ホジョ星人は連合軍に加入しておらず、盗みや詐欺などの犯罪はあっても内戦やテロリズムのない平和な惑星だ。なくなった父も母も兄も姉も村人たちも畑を耕したり鋤などの道具を作ったり魚を採ってきたりしてきた。なのに七〇〇年前までは戦っていたというのは初めて知った。家族も村の人も、物知りの老人ですらそんな話をすることはなかった。

「あ、リブサーナは盗賊によって村も家族もなくして、盗賊を捕らえに来た私たちワンダリングスによって助けられて身寄りもないから、自分の意志でここにいる訳。リブサーナはホジョ星人だけど戦士なのよ」

 リブサーナの隣のコクピット席に座るアジェンナがグリジアに言った。ウィッシューター号はカミガン人の国の町外れの森の円く空いた場所に泊めて、カミガン共和国に足を踏み入れる。森の中は大小の小鳥や巻き毛の猿、縞模様の鹿や尻尾の長い兎などの生き物が棲み、暖かったブレドリー帝国と違ってカミガン国は少し肌寒かった。

 色も形も花も異なる木や草のある森を抜けると、灰色の空の下の農耕地が目に入った。

 カミガン人は段層地帯になっている土地に木や粘土を固めて焼いた家を建てて、地面を耕して田畑を作り、また畑や家の近くに井戸を作って雨水を溜めて飲み水や畑にまく水にして、ヒヅメのある六本脚の生き物に刈り入れた作物や薪を乗せて坂道を上ったり下ったりしていて、畑には穂や葉などの穀物の一部が見え、住民はこの気候のためか白土のような肌をしていて、髪の毛の金髪や薄茶色といった薄い色素で服装は厚手のシャツやズボン、靴を身につけていて、女は刺繍入りのスカートやスカーフを身につけていた。

「ここがカミガン人の住む土地? 随分とまぁ、質素というか慎ましいというか......」

 アジェンナがカミガン人の村を見て呟く。

「カミガン人は超能力こそありませんが、世代を越えて厳しい環境に生き抜くために生活の知恵と強靭な体力を手に入れてきました。二〇年くらい前には電気の流通用いれてきて、暮らしはそれなりに進歩しているんですよ」

 グリジアがワンダリングスにカミガン人の暮らしを教える。カミガン人の村は段層地帯は農業者の土地で坂道を下っていくと、平原には木やレンガで造られた家々が並び、通り行く人々は先ほどの六本脚の獣を荷車に引かせて移動している運び屋、軒先で糸車を回して糸を紡ぐ女たちが何人か喋りながら糸紡ぎしている様子が見られ、簡素な天幕の下で大小形の異なる魚や金銀細工の指輪などのアクセサリーを売るお店、背中や肩にカバンを提げて家へ帰ろうとする子供たち、店舗らしき家屋にはハサミで布を裁ち針を動かす仕立て屋、かぐわしい花や甘酸っぱい果実を香水にして作る店、他にも段層地帯の農家から買った麦や豆などの穀物でパンを作る店が見られた。カミガン人の住む処は慎ましいながらも活気的だった。しかしカミガン人は自分とは全く違う容姿や服装のグリジアやワンダリングスの面々に目を向けていた。

 グリジアはカミガン人の村の長の屋敷に向かってワンダリングスの奴隷商人逮捕の協力を得ようとしていたが、グリジアは途中で足を止めた。

「ど、どうしたんだよ、急に止まって......」

 ドリッドがグリジアに尋ねてくると、グリジアは振り向いてグランタス艦長たちに言った。

「今から三タク後に西の町に赤い体に突き出た目の異星人(エイリアン)の姿が脳内に浮かび上がりました!」

「ええっ、てことは予知!?」

 リブサーナがグリジアに尋ねる。

「はい。しかも大型の乗り物によってカミガン人を捕らえる様子を......」

「三タクってどれくらいだ?」

 ブリックが聞いてきたのでグリジアは答える。

「時分単位でいうと、一タクが七分、三タクというのは二〇分後です」

「よし、西町へ急ぐぞ。まだ間に合う」

 グランタス艦長が皆に言い、彼らは現在地の南町から西町へ向かっていった。

 カミガン人の平原地帯は東西南北中央の五つに分けられており、南町から西町へ行くのに二タク半もかかったのだ。

「うわーっ、助けてくれー!」

「きゃーっ!!」

 老若男女の住民が逃げ惑っていたのだ。十数体の黒い角ばったロボットたちが胸から黒い金属製の網を出してカミガン人を次々に捕らえていった。そのロボットたちの中心に赤い甲殻に黒い突き出た目、黒い襟なしジャケットと白いストールと黄土色のシャツと灰茶のズボンの甲殻類型異星人(エイリアン)の立っていたのだ。

「ええぞ、ハントロイド! カミガン族は超能力のない連中やからバンバン捕まえるんや! 若い女は高く売れるし、男は肉体労働の働き手になるからな!」

 甲殻類型異星人(エイリアン)はロボットたちに命じる。

「やっぱり予知通りだったか......。ジャーリ星人キャプトー、貴様を異星人捕獲罪及び人身売買法違反で逮捕する!」

 グランタス艦長たちワンダリングスがキャプトーの前に現れる。

「げっ。連合軍の使いっぱないけ! 折角厄介な超能力者はゴメンやからって凡人であるカミガン族を狙っておったのに!」

 キャプトーはワンダリングスを見て後ずさりする、

「今なら捕まえたカミガン人を解放して大人しく捕まるのなら刑期は短くなるぞ」

 ドリッドがキャプトーに言った。

「こりゃあ厄介やわ。だけどな、こっちには心強い味方がおるんやで! 来ぃや」

 キャプトーが叫ぶとある家屋の屋根の上から一人の人間型(ヒューマンがた)異星人(エイリアン)の女が飛び降りて石畳の地面に着地する。

「あなたは......」

 リブサーナは女を見て呟いた。

 長いストレートの赤紫の髪に黒いエナメル生地の服とブーツ、白い肌に褐色の瞳――。

 以前ワンダリングスがバトナーチェ星で捕らえようとした犯罪者と共に逃走したベラサピアであった。