ワンダリングス7-10


 第五の創造神の復活


「今のうちに宇宙艇の中に入ってください!」

 連合軍兵によって”あのお方”の一味に連れ去られたメスィメルト星の住人たちは指示に従って、連合軍の宇宙艇の中へと入っていった。

「押すな! こっちは足を痛めてるんだぞ!」

「お年寄りから入れるほうが先だよ!」

 みんな我よ我よと宇宙艇に乗り込んでいく。グランタス艦長たちとモーカンティ夫妻は連合軍兵の一人と対面する。

「グランタス殿!」

 その連合軍兵は白銀の毛の獣型異星人で牙を生やし、グランタス艦長に敬礼のポーズを取る。

「仲間殿の連絡を受けてまいりました」

「おお、そうでしたか。これで一安心……と言いたいところですが、モーカンティ夫妻を連れて出て行ってから、わしらはこの基地を破壊してからウィッシューター号に戻ります」

 グランタス艦長が連合軍兵に告げたその時だった。彼らは基地の中にいたとはいえ、何者かに遮られてしまった。

「そうはいかないわ。ワンダリングス」

 高めの女の声がして後方の階段エントランスに顔を向けると、そこには一人の人間型異星人の若い女が数十体の白い体の虫型異星人たちを率いていたのだ。


 岩場の高台で待機していたリブサーナは、背中を刺すような悪寒が体に走り、斜めになっている坂を下って駆け出して行った。

「ちょっと、サァーナ。どしたのー! きゅーにはしりだしゅなんて!」

 ピリンが下り坂は危険だと感じて、フェリアス星から妖獣、ヨツデスネルを召喚して背中に乗ってリブサーナの後を追いかける。

「嫌な予感がしたの! あの子がいるのを……!」

 リブサーナは下り坂を終えると、連合軍兵と捕らわれた人々の中を抜け出していって、基地へと向かっていった。


「あなたは、ベラサピア!!」

 アジェンナは長いストレートの赤紫の髪に白い肌に切れ長の褐色の瞳に長身、エナメル素材のタイトスーツの人間型異星人の女性を目にして言った。

「ベラサピア、って?」

 ヒートリーグがドリッドに尋ねる。

「ああ、お前は知らないから当然だろうけど、以前俺たちがバトナーチェ星に逃げ込んだお尋ね者を探しに来た時、そのお尋ね者を手助けしていたのが、ベラサピアだ。リブサーナはこの女に敗れたことを大変悔しがっていた」

 ドリッドがヒートリーグに教えると、ヒートリーグはこんな美人がリブサーナを敗北させたことや悪者の手助けをしていることを知ると、信じられないと固まる。

「あら、いつの間にかワンダリングスに新しいメンバーが入ってたのね。初めまして、私はベラサピアよ」

 ベラサピアはヒートリーグに向かって冷たい笑みを浮かべた挨拶をする。

「ぼ、僕はメタリウム星出身のヒートリーグだ。君がグランタス艦長が探していたお尋ね者の仲間? そういう風には見えないよ」

 ヒートリーグはベラサピアに向かって言った。ベラサピアはクスクスと笑って、ヒートリーグを小ばかにするように言葉を発する。

「うふふ。機械生命体がこんな甘ちゃんなことを言うなんて。有機生命体より出来がいいと思いきや、意外とお人よしなのね」

 そして白い虫型異星人の雑兵ーー宇宙虱を改造したライゾルダーに命令を下した。

「ワンダリングスは全員倒して。そして、あの二人が持っている創造神の魂の結晶を奪うのよ」

「シ~ラ~、シ~ラ~」

 ライゾルダーの群れが一同に襲い掛かってくる。ドリッドとアジェンナは創造神の魂の結晶に呼びかける。

「ソルトゥー!」

「ウィーネラ!」

 ワンダリングスは建設基地の捕虜にされた時に武器を取り上げられてしまったため、創造神の力を借りてライゾルダーを倒そうとした。すると二人の持っている魂の結晶が仄かに輝いて、それぞれ紫と赤の光に包まれて、モーカンティ夫妻とグランタス艦長、ヒートリーグ、ベラサピアはその眩しさに目をつぶってしまうが、光がおさまるとアジェンナとドリッドが装甲に覆われた神々しい姿に変化する。

「こっ、これは……!」

「あら、ペンダントがかすかに光っているわ」

 モーカンティは創造神の依代となって姿を変えたドリッドとアジェンナを目にして驚き、ソガルサが自分の持っているペンダントが反応していることに気づく。

「これは近くに創造神がいるという証ですじゃ。ドリッドとアジェンナは創造神の依代に選ばれたのです」

 グランタス艦長はソガルサに教えると、困ったような表情をする。

「え? ということは……」


 創造神と融合したアジェンナとドリッドは次々に襲い掛かってくるライゾルダーを手から出す火炎弾や強風で、焼き払ったり吹き飛ばしていく。その様子を目にしてベラサピアは怯むも、創造神の戦闘パターンを自身が所有しているタブレット端末のカメラ機能を使って、データ収集をする。

「ほぉ……、これが創造神としての力ね」

 アジェンナとドリッドを依代にして、ライゾルダーの群れを打ち倒していったソルトゥーとウィーネラであるが、ソガルサの持っている魂の結晶を目にして、近づいてくる。

「あ、あの……」

 ソガルサは二人の創造神を目にしておびえるも、ウィーネラが彼女の持っている魂の結晶を目にして呟く。

「あなたは月生(げっせい)のセーンムルゥですね。依代はまだいないようですが……」

 それを聞いてソガルサは「?」となる。

「わ、私がこの魂の結晶の依代となって、創造神に姿を変えるのではないのですか?」

 ソガルサの質問にソルトゥーが答える。

「創造神の依代となる者は……、善徳の高さと意志の強さに共鳴し、その者が依代となる。あなたは善徳は高いが、意志は弱い。あなたは依代ではない」

 それを聞いてソガルサは安堵する。もし自分がセーンムルゥの依代になったら、ワンダリングスに入って夫と子供らと別れなくてはならないと思っていたからだ。

「そう……ですか……」

 その時、ソガルサとソルトゥーの間に赤紫色のエネルギー弾が割って入ってきて、エネルギー弾は壁に当たり、煙を上げて当たった場所に放射状の亀裂が入っていた。

「悪いけど、その魂の結晶は私がいただくわ」

 エネルギー弾を発射したのは、赤紫色のヘッドギアやアーマーを装ったベラサピアであった。いつの間にか武装していたらしい。

「き、君も戦い向けなのか?」

 モーカンティがベラサピアを目にして尋ねると、ベラサピアは答える。

「ふふ、このパワードスーツは以前と違って改良改造済みで、長時間でも活動できるのよ。まぁ、これは創造神の人工版ってとこかしら」

 ベラサピアは説明を終えると、右腕の中に装備されている武器ーー閃光剣(スパークルブレード)を出す。スパークルブレードは伸縮式の刃に特殊な人工光波を出す武器である。

「行くわよ、創造神!!」

 ベラサピアは右腕の剣を振り、赤紫色の斬撃を二本出して、斬撃は地面を走ってソルトゥーとウィーネラに向けて放たれる。だが二柱の創造神は掌から波動を出して、ベラサピアの斬撃を防ぐ。

「やはり一筋ではいかないか。ならば、こうした方が早いか!」

 そう言ってベラサピアは斬撃を放ち、斬撃はモーカンティ夫妻の方へ向けられた。

「ひぃぃぃっ」

 二人が恐怖のあまり目を閉ざしてしまうと、目の前にヒートリーグが立って、ベラサピアの攻撃を防いだが、自身の左脛に傷が入ってしまう。

「創造神が強いからって、一般人を相なんて卑劣だ!」

 ヒートリーグは傷つきながらも、夫婦と魂の結晶を守れたことを実感する。

「ふん、でくの坊が。じゃあ、次は両腕を千切ってやるわ!」

 ベラサピアは再び斬撃を振るおうとした時、割って入ってきた者の声を聞いて静止する。

「ちょっと待ったぁーっ!!」

 ベラサピアとヒートリーグ、グランタス艦長たちが振り向くと、リブサーナ現れたのだった。リブサーナは場の状況を確かめると、ベラサピアに視線を向ける。

「ベラサピア! そんな予感がしたから、ここに来てみたら、あなたが携わっていたのね!」

「リブサーナ!」

 グランタス艦長、ヒートリーグは現れたリブサーナを目にするも、ベラサピアはリブサーナを目にして、軽くあしらった。

「あら、誰かと思えば、ホジョ星の田舎娘じゃないの。二度ならず、三度目となると負けるわけにもいかなくなるしね」

 しかし今のリブサーナは丈長のチュニックとハーフパンツとアーミーブーツという服装であることから、空手で来たのかとベラサピアは判断する。

「ベラサピア、わたしがあなたに戦いを挑むのは、過去の屈辱からじゃなくって、あなたがわたしの仲間を傷つけて、創造神の魂の結晶を破壊しようとしたことよ!!」

 リブサーナの言葉に応えるかのように、リブサーナの後ろ髪を留めているバレッタの創造神フリーネスの魂の結晶がエメラルド色に輝き、リブサーナはその光に包まれ、頭からつま先まで緑色の装甲に覆われたリブサーナを依代にした創造神、フリーネスが姿を現す。

「これは……。面白い。まさかあなたが創造神に選ばれた依代だったとはね! その力、見せてもらうわ!」

 そう言ってベラサピアはフリーネスに向かってダッシュキックをぶつけてきた。フリーネスは両腕を交差させて防御し、その震動がリブサーナの体に伝わる。

(この娘、強化装甲をまとっているとはいえ、強い!?)

 フリーネスはパワードスーツをまとったベラサピアの攻撃を受けて察する。フリーネスがリブサーナの体を依代にして現れる時は、リブサーナの意識は眠らせているのだが、体はリブサーナのものなので、創造神も長く借りている訳にもいかなかった。その間にベラサピアは蹴りや殴打を繰り返していき、フリーネスはリブサーナの体に骨折を入れたり内臓破裂をさせないように用心するも、強化装甲に覆われているベラサピアは容赦せず攻撃を入れまくる。フリーネスは一瞬片足がぐらつき姿勢を崩したところ、ベラサピアがスパークルブレードを振るってきた。

「しまった……!」

 ベラサピアに斬られるとフリーネスが思ったその時だった。ベラサピアの周囲につむじ風が起き、更に炎の渦が発生してベラサピアは火の壁に包まれる。

「これは!?」

 それはウィーネラとソルトゥーが自身の能力で風を起こし、火を出したことによる技であった。

「フリーネス、もう大丈夫ですよ」

「これで攻撃できまい」

 その様子を目にしてグランタス艦長とヒートリーグとモーカンティ夫妻は派手な光景に驚くも、ベラサピアの攻撃を封じ込められたことに安心する。

「ちっ、余計なことをして……」

 ベラサピアは身動きができなくなると、グランタス艦長が彼女に向かって尋ねてくる。

「このまま降参するか? それとも援助を呼ぶか? このままではお前さんはバーベキューだぞ!」

 それを言われたベラサピアであるが、彼女は単純ではなかった。ベラサピアは左拳を上げると、床を思いっきり叩きつけ、固い床が勢い良く砕けて、その灰塵で炎の渦がかき消され、更に床の下は空洞になっており、ベラサピアはその中に落下していって別れを告げていった。

「今回は私の負けよ。だけど、次こそは必ず……!」

 その様子を目にして、一同は立ち止まるも、敵を退けたことを確認したのだった。創造神は戦いが終わると、依代になった者から離れて、リブサーナ、アジェンナ、ドリッドに戻る。リブサーナより遅れて、ピリンが建物の中に入ってくる。

「みんなぁ、おしょくなってごめん!」

 現場は床が砕けて孔が空いたり、壁や床が煤だらけになっていたり、リブサーナが瞼を閉ざして仰向けに倒れていたり、ヒートリーグの片脚が傷ついてたりと、荒んだ状況になっていた。

「あ、あれ? てきは?」

 ピリンが尋ねてくると、グランタス艦長はピリンに言った。

「ピリンか、捕らえられた人々は助かった。ウィッシューター号に連絡して、ここに来るようにブリックに伝えておくれ」

「わかった」

 ピリンは自分の携帯端末を使って、ウィッシューター号を呼び寄せて、リブサーナは戦いの疲れで気を失っており、ヒートリーグは負傷のためバイクにもなれない状態であるし、また険しい山道を進められる場合ではなかった。

「みんな、きじゅかなかったぉ。ピリンはよーじゅーたちをよんでたたかってたかりゃ、おとなのみんなこんなにきじゅついていりゅなんて、しりゃなかった……」

 ピリンは目の当たりの一同を見て、妖獣を召喚している自分が情けなく感じた。

「でも、あなたは小さいでしょう」

 ソガルサがピリンに声をかけてきたその時だった。ソガルサのロケットペンダントがまばゆい光を放ち、ロケットに収められていた魂の結晶がピリンの方に向かっていき、ピリンは純白の光に包まれて、光が治まるとピリンの姿が変わり、三日月を思わせる金の装飾が頭部・肩・胸・腕・腰・脚に施され、白い装甲に二連の銀色のマントを背に垂らし、緑がかった金の巻き毛を持つ創造神が姿を現した。幼いピリンの面影はあるものの、八頭身の成人美女のようであった。

「あ、あなたは……!」

 アジェンナが創造神を目にして尋ねてくると、創造神が返答する。

「私は月生のセーンムルゥです。闇を照らす月光の恵みと生命を司る創造神です」

「生命を司る創造神……」

 ソガルサがセーンムルゥの神々しさのあまり呟く。セーンムルゥはアジェンナ、ドリッド、リブサーナを目にして言った。

「あなたたちも創造神の依代になった者ですね。尋ねなくてもわかります」

「あの、だけどよ。何でピリンを依代に……」

 ドリッドがセーンムルゥに訊くと、セーンムルゥは答える。

「この子の、みんなを助けたい、役に立ちたいという意志が私と共鳴したのです。あと、それと……」

 セーンムルゥはソガルサを目にして言う。

「あなたの一族が代々を私を守り続けてくれたおかげで、私は復活することが出来ました。ありがとう」

「いいえ、とんでもないです……」

 ソガルサはセーンムルゥに控えめな返事をすると、セーンムルゥは自身の武器である三日月を二つにつなげた弓を出し、更に一本の矢を出して、天井に向けて撃ち放った。

「月療法(げつりょうほう)、リュンヌルミエル」

 すると天井に白い満月状の光が出てきて、気を失っているリブサーナとヒートリーグに降り注がれる。光を浴びたヒートリーグは足の傷が巻き戻されるようにふさがり、リブサーナは体が軽く痙攣すると、次第に意識を取り戻して目覚める。

「な、治った」

 ヒートリーグはセーンムルゥによる回復で仰天し、リブサーナも起き上がった。すると、セーンムルゥはピリンの体から離れて、魂の結晶に戻り、後にハピリンが残った。

「ぴ、ピリン!」

 リブサーナとヒートリーグが瞼を閉ざしたピリンを目にするも、グランタス艦長がピリンの様子を見て、みんなに伝える。

「気を失っているだけだ。後で気づくだろう」


 この後、ウィッシューター号が来て、基地に残っている者たちは宇宙艇に乗り込み、町の方へ向かって飛んで行った。基地は爆破され、ピリンも気づいてソガルサが自身のロケットペンダントをピリンに委ねた。

「これを、あなたたちに託します。ワンダリングスのみなさん、救ってくれてありがとうございます……」

 ソガルサはワンダリングスに礼を述べ、町に着くと親や兄姉と引き離された子供たちが自身の家族と再会を喜び合っている光景が見られ、モーカンティ夫妻も息子と娘と再会することが出来たのだった。

 メスィメルト星は数ヶ月には以前と同じような暮らしに戻るだろう。ワンダリングスは使命を終えると、メスィメルト星を出発していって宇宙空間に入っていった。

「これで創造神が五人集まった。残るはあと一人だね」

 司令室のワンダリングスが創造神の魂の結晶が五つ揃ったのを確かめて、ヒートリーグが言った。

「最後の創造神、この一人が甦れば、テーラ星の魔神と立ち向かえることが出来るんだね……」

 リブサーナが呟くと、他の面々もうなずいた。グランタス艦長も険しい表情をして、みんなに伝える。

「最後の創造神、この一体の復活の時が、テーラ星の魔神との最後の時になるだろう……」

 創造神の依代に選ばれたワンダリングスの艇員(クルー)たちは油断してはならないと、心に刻んだのだった。


                                                       〈第七弾・終〉