ワンダリングス8-5


リブサーナ対ベラサピア第三戦、それから各々の戦場


 ベラサピアはリブサーナにダッシュパンチを仕掛けてくると、リブサーナはひらりと交わしてベラサピアは攻撃が外れると、今度はスライディングをリブサーナに向けてきた。リブサーナは今度もベラサピアの攻撃をかわして跳躍する。

「陛下、リブサーナにあんなバトルセンスがあったなんて思ってもいませんでした」

「ワンダリングスや連合軍で鍛えた成果ですかね?」

 ゴラスベーノ王の護衛兵が王に尋ねてくる。王はこう答えてくる。

「それもそうだろうな。だが、それだけでなくリブサーナの意思......。自分の故郷のホジョ星を守ろうとする意気込みがリブサーナの力を増幅させているのだろう」

 リブサーナもよけてばかりじゃいけないと思って、反撃を企てようとした。

(どうやって反撃しようか? ベラサピアは装甲に覆われているし、あの装甲の中に敵の動きをつかむ機械が入っているだろうし)

 テーラ星魔神軍の選抜戦士は侵略した惑星の文明や技術や秘巧などを入手しており、ベラサピアのように武装したり、自らを機甲化やバイオ改造化する者もいる。

携帯銃(ハンドライフル)で相手を傷つけないようにすべきか? それとも接近戦でいくか?)

 リブサーナは二択一選の考えをもたらし、ベラサピアは立ち止まったリブサーナを目にして、余裕の笑みを浮かべる。

(リブサーナ、何て愚図なの。だけど来ないのなら、こっちから行くわよ)

 ベラサピアは右腕に武装された伸縮の腕剣(アームブレード)を伸ばしてくる。リブサーナはベラサピアが剣を出してくると、リブサーナは気づいて両の脛あてに仕舞われている短剣二刀を取り出して両手に持つ。

(このまま接近戦を仕掛けるというのか?)

 ゴラスベーノ王もケストリーノも二人の向かい合わせを目にして唾を呑む。ベラサピアはリブサーナに剣の先を向けてきてリブサーナは左手の剣で刃先を受けとめてきて鋭い金属音が鳴る。リブサーナが右手の剣をベラサピアに向けられてくると、ベラサピアは危険を察して顎を上に反らす。

「くっ‼」

 だがそれはリブサーナの狙いであった。リブサーナは自分の短剣をベラサピアに向けてくると、ベラサピアがよけるのを察して天井に投げつけたのだった。その時天井の金属とべっ甲細工のシャンデリアの付け根に短剣が刺さり、シャンデリアがベラサピアの真上に落下してくる。

「しまっ......!」

 一八〇キロのシャンデリアの急速な落下は三倍の重さの力がかかってくる。リブサーナはそこを狙ったのだった。

 ガシャーン、と盛大な音が王室内に響き渡り、その様子を目にしていたゴラスベーノ王やケストリーノたちも思わず目を閉ざしてしまった。だがベラサピアは落下してきたシャンデリアをアームブレードで真っ二つにし、危険を回避したのだった。ベラサピアの左右には真っ二つに分かれたシャンデリアの残骸が散らばっていた。

「やるわね、さっきのでやる気が増してきたわ」

 そう言ってベラサピアはリブサーナに攻撃を仕掛けてきた。

『リブサーナ、やはり私が出た方が......』

 フリーネスの意識がリブサーナに声をかけてくるも、リブサーナは断った。

「わたしは、そんなつもりはない。あなたの力を借りなくても......」

 リブサーナはとベラサピア女同士の戦いを目にし、決して口や手を出さないようにしているとはいえ、ケストリーノはどうしても助けてあげたかった。

(俺をここまで導いてくれた同族の助太刀も出来ないなんて......。俺は、どうしたらいいんだ?)

 リブサーナもベラサピアも剣術で戦っており、ゴラスベーノ王も兵士もリブサーナが刺されまいかハラハラしていた。

(ホジョ星の実神(みのりがみ)、ディムターラよ、どうかリブサーナを守りたまえ......)

 ゴラスベーノ王は自身の惑星の神に祈りをささげた。だが、その祈りが外れたかのようにリブサーナの持っていた二双の短剣がベラサピアのアームブレードから出た熱変化で、リブサーナの持っていた剣の刃先が折れた。

「何てことだ! 武器が壊れてしまったら勝ち目が......!」

 兵士の一人が叫んだが、ゴラスベーノ王が制した。

「待て。まだ終わっては終らん」

 リブサーナは短剣を折られるものの、ベラサピアの装甲の隙間に、左手の折れた短剣の先を素早く差し込んだのだ。丁度アームブレードの刃と出し口の隙間で、リブサーナは戦いのさなかに気づいて、一か八かの賭けで折れた短剣の先を突っ込んだのだ。

 するとベラサピアの右腕の装甲にバチっと火花が出て、ベラサピアはその痛みと驚きで体が横倒れた。

 リブサーナの機転を目にして、ケストリーノは胸をなでおろす。しかし、ベラサピアは左手首から光線を出してきて、リブサーナは短剣の表面で防いで反射させ、跳ね返ってきたレーザーは壁の一ヶ所に当たって焦げる。

「まだ銃撃が残っていてよ」

ベラサピアはメットのむき出しの口をにやけつかせてリブサーナに言った。

「陛下、レーザーに当たってはあなたの命が危うい。ここから出た方が......」

 兵士がゴラスベーノ王に言ってくるが、王は首を横に振る。

「だが、あの二人の戦いを見届けないと私の王としての立場が......」

 ゴラスベーノ王が呟くと、ケストリーノが王に告げてくる。

「王よ、ここは私が残ります。王には安全確保の義務が。私には両者の戦いを見守る義務があります」

 それを聞いてゴラスベーノ王は思った。ここはケストリーノの言っていることが一理あると。

「わかった、ケストリーノよ。必ずや、リブサーナを」

 ゴラスベーノ王はケストリーノに両者の戦いを見守ることを委ねると、護衛の兵士たちと共に王間を出ていった。

 リブサーナはベラサピアのレーザーをよけたり防いでいくうちに次第に体力が消耗していき、動きも遅くなっていく。

(まずいな、リブサーナの息が荒くなっている。もし疲労困憊や転倒で当たってしまったら......)

 ケストリーノはリブサーナの様子を目にして、これから起こるであろう展開が浮かび上がる。ベラサピアのレーザーがリブサーナの頭部に向けられてきた。

(頼む! ここで逆転してくれー‼)

 ケストリーノがそう願った時だった。リブサーナの額にレーザーが当たりそうになった時、リブサーナの体が前のめりに倒れ、ベラサピアのレーザーがそれた。更にレーザーはリブサーナの後ろにあった壁の金属枠に当たり、ベラサピアの方に返ってきたのだった。

「しまった......!」

 ベラサピアは偶然とはいえ、自分の攻撃を受けそうになった。だが、ケストリーノが飛び出してきて、ベラサピアを抱えてレーザーから避けたのだった。レーザーは壁に当たって焦げて、ケストリーノは床に滑り込む。

「だ、大丈夫⁉」

 リブサーナは床に転がったケストリーノとベラサピアを目にして尋ねてくる。

「ああ、まぁ......」

 ケストリーノは起き上がろうとした時、ベラサピアはケストリーノから離れて退く。

「この件は貸しにしておくわよ。あなたたちは私を生かしておいたことを、いずれ後悔するはずよ。覚えておきなさい!」

 そう言ってベラサピアは左腕の装甲の内側に内蔵されたワープ装置を起動させて、二人の目の前から消えていった。

「やれやれ......。艇に助けられるのは屈辱だと思ったんだろうな。素直じゃないとはいえ」

 ケストリーノはベラサピアの様子を目にして呟いた。

「王を避難させたとはいえ、まだわたしたちの任務が残っている。急いで戦地に行かないと」

 リブサーナはケストリーノにそう言うと、ケストリーノはうなずき二人は戦場へ向かった。


 一方で他の星域ではシグマ星域の主要惑星であるボルン星ではドリッドとテーラ星魔神軍シグマ星域司令官ガイゼルと戦っていた。ガイゼルはシグマ星域にある多足虫型異星人センティー星人で、長い触角と脚が四九対あり、下半身が上半身の二倍あった。ガイゼルは鋼合金の鎧兜に長い二又槍を持った武人であった。

 ボルン星の岩地で二人は戦っていた。両方の軍の兵士はテーラ星魔神はライゾルダーばかりで全滅、連合軍兵は負傷者は三分の二、軽傷者は三分の一いて、生き残った連合軍兵はドリッドとガイゼルの戦いを見守る立場にあった。

 ガイゼルは二又槍を構え、ドリッドはトンファーを構える。

「なぁ......。あんたもかつては自分の星や同族を為に戦ってきた一介の宇宙兵だろ? テーラ星を混沌に陥れた魔神につくなんて、強気を助け弱気をくじくには、外道の証だぜ?」

 全身のほとんどが細かい傷や打撲だらけのドリッドがガイゼルに訊いた。

「若僧よ、わしもかつては自分の星を守る戦士だった。しかし、我が故郷がテーラ星魔神の"あのお方"に支配されてしまっては、反するか従うかの二つに一つしかなかった」

「......そうか。反したら同族や故郷を失うから従う方を選んだのか」

 ガイゼルの理由を聞いてドリッドはテーラ星魔神軍についた異星人たちは、テーラ星魔神の力に恐れて従う者もいることには知っていた。

 ドリッドも故郷がテーラ星魔神の手に落ちていたら、誰かと敵対していたのは必ずあったと理解していた。別の運命や宿命があったのなら、今の自分はなかった、と。

「では、行くぞ......」

 ガイゼルがドリッドに告げ、ドリッドもガイザルに立ち向かう。


 アジェンナのいる部隊はカッパ星域主要惑星デイル星で、最後のテーラ星魔神軍の部隊に立ち向かっていた。デイル星は淡水と湿原と森に満ちた惑星で、兵士たちの飲み水と非常用の食糧である山菜や木の実やキノコといった食物に困らなかったが、湿地帯や水辺では虫が多く生息しており、それ故に虫によるネルで発病する兵士が出てきた。

 虫熱に侵された兵士はオールセイヴァー号の一室に入れられ、死者はまだいなかったものの、戦力の問題に悩まされていた。

「ちゃんと消毒しておかなかったから、虫熱に侵されたんでしょうね」

 獣型異星人の医師がアジェンナたちに告げると、アジェンナは医療にたけたブリックならどうしていたかと思い出す。

(ブリックなら到着先の惑星の自然資源を研究して治療薬を作っていた。もしかすると、虫熱に効く自然資源だってある筈よ......)

 ふとアジェンナは水辺にあった植物で、唯一毒虫が近づくことのなかった草花があったのを思い出す。

「もしかして、河原に咲くオレンジ色の花が虫熱に効くんじゃない? あの花は草食性の昆虫しか来ていなかったわ」

 それを聞いて医師はアジェンナの意見を聞いて気づく。

「オレンジ色の花? アミソルの花か! では早速、レプリカントの医療アシスタントに回収に行かせて成分を調べます!」

 アジェンナはなるべく自分や自分たちで出来ることを考えて行動していた。

「アジェンナ殿、ポイントM506に敵が出現しました!」

 連合軍兵の一人がアジェンナに敵軍の出現を伝えて、他の連合軍兵に指示を出す。

「接近戦に自信のある人は私と。他は援護射撃と伏撃をお願い!」

「了解!」


 ベータからエプシロン星域に派遣されたブリックは、連合軍兵と共にベータからデルタ星域までの主要惑星の解放に勤しみ、また恋人のセルヴァも兵士や星民の手当てに専念していた。連合軍兵にも敵兵にもレプリカントがいたが、宇宙全体の危機の今はやむを得なかった。

 エプシロン星域主要惑星ディッカーでレプリカント工房はテーラ星魔神軍に占領され、日に五十人のレプリカント兵が投入されるという現実に陥っていた。

「敵の奴らめ! レプリカント工房を手に入れるなんて、ふてぇ奴らだ!」

 連合軍のレプリカント兵は、敵にレプリカント工房を奪われたことに怒りを募らせていた。いや、正しくはレプリカント兵は敵のテーラ星魔神軍に同族を量産兵として使われていることに腹を立てていたのだ。

「だけども、テーラ星魔神軍のレプリカント兵は一人一人の決まった人格や個性や外見がない。つまり、あいつらは上の命令しか聞くことの出来ない不完全体だ。あいつらには〈恐怖〉や〈死〉の概念がない。そこは気にする必要ないんじゃないか?」

 連合軍の魚型異星人の兵士がレプリカントたちに言う。ブリックもそれを聞いて、敵側のレプリカント兵は確かに同じ顔や背格好で、無表情で攻撃していたことに気づく。レプリカントは一般的な個体なら三〇〇年の不老の体に髪も眼も肌も異なっていて、センターで完成された時に適性検査を受けて検査の結果に合わせた作業場へ派遣させられるのだが......。

(テーラ星魔神軍の奴らはレプリカント工房を手に入れる時、戦闘データと攻撃命令しか入れてないレプリカントの雑兵を生み出したということか。よくわかったよ)

 ブリックは他のレプリカント兵に言い聞かせるように解いて言った。

「同法よ。レプリカント工房を完全破壊させる。テーラ星魔神軍はレプリカントを使い捨ての道具として扱っている。これ以上、レプリカントの犠牲を出さないように、敵のレプリカント工房を壊滅させるのが一番ではないか」

「ブリック殿‼」

 エプシロン星域指揮官の軟体型異星人将校がブリックがこんな発言をしてきたら、かえってレプリカント兵たちを逆上させるのではないか、と思って止めてきた。

「レプリカントの犠牲を止めるために、敵地を壊滅させる......。そうだよな、それなら俺たちは同族と戦い合いしなくて済むんだよな」

「俺だってレプリカントの敵とやり合いたくない、ブリックに賛成する」

「敵のレプリカント工房を落とすぞ‼」

 おおーっ、とレプリカント兵たちは威勢を上げた。ブリックの言葉に共感したレプリカントたちを見て、連合軍将校は安心した。

(ブリック殿のカリスマ性か,レプリカント同士の悲劇に関する意見の一致なのかはわからんが、みんなやる気を出している......)


 キー星域からプシー星域に派遣されたヒートリーグと連合軍兵は、ヒートリーグの故郷のメタリウム星のテクロイドたちの増援が来てくれたこともあって、他の部隊よりも早い速度で星域の解放をクリアしていった。

「くそっ、テクロイドという助っ人がいるんじゃ歯が立てねぇぜ!」

 テーラ星魔神軍の灰色の鳥型異星人の兵士が指揮官の人型異星人の青年に声をかけてきた。

「だけどよ、こっちには人質がいるんだぜ。創造神は六体揃わない限り、"あのお方"には勝てない」

「ど、どういうことっスか?」

 両棲類型異星人の兵士が装甲をまとった青年――エルダーンに訊いてくる。エルダーンの懐には銀色の金属製の心臓大の箱が隠されていたのだ。そして、その箱の中には金色の稲光の紋章が入った円い結晶が入っていたのだ。

「雷心のブリツァールはちゃんとここにいるんだからな」

 エルダーンは呟いた。